そして また
「・・・あの『扉』付近にはうちの防犯設備が備わってるし、常に監視できるようにこのポイント近くは防犯カメラも多い。だけど・・・」
ジャンが言葉を切ったとき、またカメラが切り替わる。
ジェニファーはそこから続く明るいトンネルはめざさずに、映像の隅になる暗い方をめざし移動する。
「・・・ルイ、あっちはたしか、線路はないよな?」
ジャンの質問に顔をしかめた男は地図を投げだした。
「そう。この地下鉄をつくってる最中に事故が起こったとかで、方向を変えてるね。だけど途中までの『地下道』はある。 ―― 残念ながら、あっちにはカメラはないよ」
そのとき、先ほどジェニファーが横切ったトンネルの奥に、白いものがゆれた。
「電車がくる」
ルイの緊張した声とともに輝いた白い光があっというまにせまってくると、そのまま電車は走り去る。
残った闇にはもう彼女の白い影はなかった。
「なんてこった!また彼女を見失った!」
叫んだマイクの声にジャンの声がかぶさる。
「ケン!聞こえるか?現二番線廃線のトンネルだ!」
がたん、と音がしたのにザックが振り返ると、マーク・リーが椅子とともに床に倒れている。
駆け寄れば苦しげで小さな声をこぼしていた。
「・・っくしょお・・おれが・・おれが・・」
真っ白な顔にくやしげに涙が伝うのを、ザックは見ないふりで脈をとった。