線路におりた
ケンが嬉しそうにザックの頭をたたき、部屋をとびでる。
「どこだ?」
「三十四番と二十五番の間のカメラです。二十一時十三分の映像です」
ジャンの質問に『見つけた』と叫んだ警備官がこたえ、PCの画面がきりかわり、一つの映像が流れ始める。
暗い画面の上からゆっくりと現れた白い影。
ちょっとまて、とマイクが二コルを見た。
「・・・ここって、まさか・・・」
顔をむけられた男も丸い目をしばたき、「この長いのって、線路か?地下鉄の?ってことは・・・」と仲間と顔をみあわせる。
「なんだよ。消えたんじゃなくて、線路におりたのかよ・・・」とザックが気の抜けた声をだす。
とにかくよかった、とマークがため息のような声で言った。
「今度は見失うわけにいかねえぞ。白い影がジェニファーだ。彼女をよくみろ」
ジャンの声にみんなが映像に目をこらす。
画面の中はぼんやりとしたオレンジと黒だった。
それでもうすい明かりを反射させる線路がみてとれ、画面の中央では、三方向からのそれが、ゆったりとした曲線でまじりあっているのがみえる。
「ここで3つの線路が切り替わる。大事なポイントだ。この先でまた、3つにわかれるんだ」
誰にともなくルイが説明し、13番駅方面で間違いないな、とジェニファーが出てきた小さなトンネルを確認した。
三本の線がひとつになる『ポイント』の空間はひどく大きく、画面手前ぎりぎりで映る壁に、大きな黒い『扉』がついているのが見える。
この『扉』の中には、このあたりの電気系統を調整するための大切な設備があるんだ、とジャンがマイクに説明したとき、白い影がその扉の前をすぎ、カメラの範囲ギリギリの右下にきた。
「きりかえます」
誰かの声で、画面の角度がきりかわる。