№41 ― 『過保護』なマイク
№41
「ダメだ。でない」
マイクは録音メッセージの応答を聞く間もなく通話を切った。
不機嫌な顔で部屋を出た相棒が、駐車場から急発進して去ったとゲートから連絡をうけたので、何度も携帯電話にかけているのだが、ジャスティンはでない。
「通信基地の割り出しも頼んでるし、街中にいる警察官たちにはジャスティンをみつけたらすぐ捕獲するように伝えてあるんだ。あいつのことだから、自分の気の済むように動きたいと思っただけだろ。 急発進したのは車の運転がヘタだからさ。 マイク、あんたらしくもない、すこし落ち着いた方がいい」
ニコルが携帯を両手でにぎりこんだ警察官に笑いかけ、新しいコーヒーを差し出す。
「・・・ああ、でも、なんだかこんな時に電話に出ないってのが・・・」
「なんだよ。やっぱりジャスティン・ホースは、そんなにまぬけで頼りないってか?」
テーブルに両足をのせ、にやけた顔をむけてくるケンに、何かを言い返そうとしたマイクの口はすぐにとじ、ようやく携帯電話をテーブルに置き、カップに手をのばした。
「いや。信頼してるし、それほど間抜けな男じゃない。・・・ただ、―― まだ若い」
「パパ、そういう『過保護』ってヘドがでるって、まえ言っただろ?」
「・・・わかったよ、あいつはお前よりも年上だし、それなりに経験もつんでる。むこうから連絡がくるのを待とう」
自分にいいきかせるように口にして、コーヒーを飲んだ。
むこうで若い警備官と話しをしていたジャンが、ウィルとバートはもうすぐ着くだろう、と腕時計をみた。
さきほど帰ろうとしたマイクが呼びとめられたのは、ジャンが携帯で話をしていたウィルが、報告の場には警察官にもいてほしいと希望したからだった。
「ケイト・モンデルの母親から大事なことが聞けたって言ってたよな? なんだか、ながい話しになるって?」
「ああ。おれもくわしくはきいてないけど、バーノルド事件が起こり始めたのは四十年近く前の話しで、ケイトの母親のマデリン・モンデルが深く関わってるって」
「なに?どういうことだ?」
マイクが勢いよく立ち上がりコーヒーをこぼしたとき、「ジェニファーをみつけました!」と声があがった。