クソ警察官
駆け寄ったジャスティンに、立ちつくした少年はうらめしげな眼をむけ、手にした金を突き出した。
「 ―― ほらよ。自分に会いたきゃここに来いってよ」
高額な紙幣の一枚に何やら字が書いてある。
子どもは手にあった札をすべて渡してきた。
「どうした?お前の取り分だろ?」
「・・・いらねえよ。あんな気味の悪いやつの金・・・」
このあたりでスリを働くグループの中では、一番頭の回転が速く一番口が達者な子どものひとことが、ひどくおかしかった。
「そうか・・。とにかくもうかかわるな。今日はきりあげてはやく帰れよ」
普段はしないが、小さな頭を叩いてすれ違うと、ジャスティン、と名を呼ばれた。
「なんだ?どうした?」
いつもは『クソ警官』などと呼ばれている。
「・・・すった財布の中身は、ほかのやつらで分けても・・・平気かな?」
この子どもと出会ってはじめての、不安げな声だった。
「―― 心配なら両替してもらえよ。警察官のマイク・ベネットっていう親切なおっさんがいるからさ」
どうにかいつもの顔をつくって子どもに片手をあげてみせると、男を探すように足早に人込みへとまぎれた。
その背を見送る子どもが、ゆっくりと息を吐く。
「――― ・・おひとよしクソ警官なんだよ・・・」
子どもの手には、ジャスティンの身分証と携帯電話が握られていた。