浮浪児たち
人込みをかきわけて目的の人物の後ろ姿を見つけ、きつく唇をむすぶ。
息をととのえ、歩調をもどしてついてゆく。
観光客でにぎわう店になどまったく興味がないように、その人物はまっすぐに進んでゆく。
ふいにむこうから、ばらばらと数人の子どもがかけてきて、中のひとりがノース卿にあたり転ぶ。
腰をかがめて子どもを起き上がらせる男の周りに仲間の子どもが集まる。
このあたりで稼ぐ浮浪児たちの、典型的なスリの手口だ。
本来ならば黙っていないところだが、ジャスティンは近くの店をのぞくふりで顔を隠した。
――― ちくしょう、ガキども、今度会ったら厳重注意だ
《追跡中》に、顔を知っている浮浪児たちに会うのはさけたい。
様子をうかがうと、どうやら成功したらしく、財布を運ぶ係が先に走り街中に消えた。
ぶつかり役の子どもも早くそこを離れたいようだが、ノース卿は子どもの二の腕をつかみ、なにやら話しかけている。
びくりと体をゆらした子どもが顔を赤くし、口をあけ、眉をよせた。
――― ばれたか・・・
あの子どもだけ捕まることになるかもしれないな、と辺りを見回す。
巡回中の警察官はみあたらない。
子どもはすでにおびえた顔をしている。
舌を打って子どもを助けることにして、数歩いったところで、ノース卿が数枚の札を懐からとりだし、子どもの肩をなで、それをさしだすのが見えた。
うつむいた子どもはそれを受け取り、男はまた歩き出す。