№29 ― わかってる
申し訳ございません。『前編』からのつづきとなっております。
ザックたち警備官がバーノルド事件を『ほりあて』てゆくと、被害にあうまえからの森とのつながりがあらわれ、レオン事件のジェニファーまでもつながってしまった。それとともに『おかしな』停電や劇場内での芝居のような出来事があり、事件も『おかしな』ほうこうへとむかってゆく。
後半残虐表現多し。ご注意を
№29
「おまえは、何をしたのかわかってるのか?」
「もちろん、わかってる」
レオンのおそれもない返事に、わかっていない!と怒鳴った男は、机を叩いた。
「ノース卿の城を包囲だと?そのうえ『緊急配備』で完全封鎖?なにを血迷ってる?わたしは許可していないぞ! おまえら《森の番》がなにをしようとも、警備官がどうしくじっても知ったこっちゃない!だが、警察官を巻き込むな!」
おまえらとはわけがちがうんだ、と思わずこぼれた言葉に、横並びに座った男が体をひねって「どうちがうんだ」とのぞきこむ。
「 ―― おれたち『森の番』とは、なにがどう違う?守る場所が異なるだけで、警察官としての職務は同じはずだろう?」
低く落ち着いた声を持つブルーナは、わめいて顔を赤くした隣の男に指先をむけた。
「・・・同じ、ではない。きみたち保安官は、そもそも警察官の機構からははずれているだろう」
ぼそぼそと返すシェパードは、指をむけたまま視線をそらそうともしない『保安官統括指揮官』であるブルーナの顔を見ない。
赤い髪のほとんどが色が抜け、陽に焼けた顔にたくさんのそばかすとしわを刻むブルーナは、退官年齢も間近で本部に専用の部屋を持っているが、いまだにバーノルドの監視所の山小屋に寝泊りに来る、森を愛する男だ。
付け加えると、警察官組織の上にいるギャラが―とは個人的に親しいことでも有名。
「あのさあ、」と、シェパードとレオンを左右にみるむかいがわで、だらしなくのばした足を組んで椅子に座る男が声をはさんだ。
「レオンは『緊急』だって判断したからすぐに命令したんだ。何をしたのかなんて、じゅうぶんにわかってるよ」
「黙れ、ウィル。だいたいノース卿なんて、おまえの親戚みたいなものだろう?それなのになぜ、止めないどころか包囲するほうにまわってる?」
シェパードの問いに金髪を払った男は、親戚じゃないけどね、と肩をすくめて足を組み替える。
ブルーナがおもしろそうに、サウス一族とノース一族は昔から仲が悪いので有名なんだろう?と指先をウィルにむけ、二人で笑い合う。