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ミッドナイトラジオ

作者: 三前セトラ

「ミスター・クリムのミッドナイトラジオ!」


「みなさん、こんばんは。お元気でしたか? パーソナリティのミスター・クリムです」


「この番組は毎月第三土曜日、深夜零時より生放送でお送りしています。さて、連日寒暖差が激しいですが体調など崩されていませんか? 僕は三日前に見事に夏風邪をひきました。ですが、この放送を休みたくなかったので、気合で治しました。今日の新曲発表も反応が楽しみです。あ、今回のゲストは可愛らしいお嬢さんですよ。みなさん、期待していてくださいね。それでは、そろそろ番組を始めましょう。最後までお付き合いいただければ幸いです」


「改めまして、ミスター・クリムです。さて、みなさんから頂いたメールを読んでいこうと思います。いつもたくさんのメール、本当にありがとうございます」


「信者ネーム:レサカさん」


「“クリム様、こんばんは”」


「はい、こんばんは」


「“私はクリム様の作られる作品が大好きです。一度聴いたら忘れられない芸術品の数々、本当に素晴らしいです。その中でも私は「ホットサンド」が好きなんですが、あの曲作りのきっかけなどありましたら教えてほしいです”」


「メール、ありがとうございます。なるほど。「ホットサンド」のきっかけですか……。ええっと、あれは確か出張先で入った喫茶店でしたね。チーズとハムのホットサンドがとても美味しくて。表面がカリっとしていて開くと中がトロッとしていて。食べながら、「これで曲を作りたいな」と思ったのが最初ですね。レサカさんが気に入ってくれて嬉しいです。では、ここで一曲。「ホットサンド」、聴いてください」




「はい、お聴きいただいたのはミスター・クリム作、「ホットサンド」でした。それでは次のメールに参りましょう」


「信者ネーム:ヴィヴィさん」


「“こんばんは、ミスター・クリム様。私は最近この番組を知った新参者です”」


「おや、ありがとうございます」


「“貴方の曲は全てすごいです。何度も聴いています。質問なのですが、お休みの日は何をしていますか? あと、ミスター・クリム様は芸能人でいうと、自分は誰に似ていると思いますか? よかったら教えてください”」


「嬉しいですね、新しく聞いてくださる方がいて。誰に似ているか……うーん、そうですね……難しいです。似ている人が思いつきませんね。僕は本当に平々凡々な顔なんです。顔を合わせてもすぐに忘れられるような。もしかしたら、みなさんと今日、すれ違った人の中にいたかもしれませんよ? 休みの日は……先週はホームセンターに買い物に行きました。工具などはやはり実際に手にとってみないとですからね。ああ、そうそう。使いやすいネイルガンを見つけたんです。いつか曲作りに使えたらいいな、と思っていますので楽しみにしていただけると嬉しいです」


「さて次は、信者ネーム:日影ひかげさん。いつもありがとうございます」


「“神様、こんばんは”」


「はい、こんばんは」


「“神様の創られる素晴らしき世界に触れたくて、僕も創作活動をしてみたく思っております。でもまだ自信が持てずにいます。もしよろしければ、神様から何か一言いただけないでしょうか?”」


「メール、ありがとうございます。仲間が増えるのはとても嬉しいです。何かを始める時は不安がつきものですが、一歩踏み出してみてください。案外簡単だったりしますから。あとは自分らしさを忘れずに。そんな日影さんに、この曲を聴いていただきたいです。僕が初めて作った曲です。「レンガ」」




「はい、今の曲はミスター・クリムで「レンガ」でした。今、自分で聞くとまだ慣れていない部分やアラが気になりますね。それでもその時の自分の精一杯をぶつけることができたと思っています。日影さんも頑張ってくださいね」


「さて、いよいよゲストの登場です。大学生の前嶋萌香まえしまもえかさんです」


『……』


「緊張してますね。リラックスしてください?」


『……ぁっ』


「はい?」


『たす、助けてくださいっ……! お願いです、家に帰してください!』


「ごめんなさい。今すぐには無理です。時間をかけて録音しますから」


『嫌、嫌です! 殺さないで! 助けて! これ解いてください!』


「ああ、いい声ですね。どうぞ心のままに叫んでください。貴方が死んだ後も、その嘆き、絶望、痛みが僕の作品として永遠に残るのです」


『お願い助けて! 死にたくない!』


「この家は防音ですけど、貴方の声を聴いている人はラジオの前に大勢いますよ」


『誰か、たす、助けて!』


「まあ、誰も助けようとは思わないでしょう。みなさん新曲を待ちわびてくださっていますので。さあ、早速始めていきましょうか」


『嫌、嫌っ!』


「さて、みなさん。お待たせしました。聴いていただきましょう、ミスター・クリムで「H2SO4」」

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