第四話 初めての朝
私がレインとアリアのお母さんになると決めてから一日が経ち、今は朝です。昨日はあの後二人と話すことはあまりなくお風呂を沸かす時に魔法を使っていたのを見て少し驚いていたくらいです。
お風呂は入り方を教えた後別々で入りました。いきなり一緒では気まずいでしょうからね。ちなみに二人は五歳でもうすぐ六歳を迎えるそうです。それにしては随分と大人びてる感じはしましたが、生まれた環境と途中までお世話してくれたお爺さんの影響ですかね。
ですが、もっと距離を縮めるにはどうすればいいのでしょうか。孤児院で子どもたちの面倒を見たことはありますが、子育ての経験はないので難しいですね。
私は朝食を作りながらそんな事を考えていました。今日の朝食はパンに目玉焼き、サラダ、ベーコン、スープです。かなりシンプルな物なのであの子たちも美味しくいただけるでしょう。
今日も部屋に持っていった方がいいのかなと思っていると、階段から誰かが降りて来ました。
「あの、おはようございます」
「...おはようございます」
階段の方に目を向けるとレインとアリアがいましたが、どちらもまだ少し緊張しているようでした。私はそんな二人の緊張をほぐすために、笑って優しく挨拶を返しました。
「はい、おはようございますレイン、アリア。もう朝食の準備は出来ているので三人で食べましょう」
私がそう言うと二人は椅子に座ってテーブルにある料理を見ました。
「すごい.....」
「わぁっ美味しそう!」
料理を見てレインとアリアはそう言ってくれました。なんだか嬉しくなってしまいますね。それから私も椅子に座り(レインとアリアが隣同士で私がその対面)手を合わせて食事前の挨拶をしました。
「では、いただきます」
「「いただきます?」」
「あ、そうでした知らないですよね。これは今目の前にある
料理に携わってくれた方々への感謝、そして食材への感謝を込めて食べる前に言う言葉です。一緒にしますか?」
「料理に感謝.....はい!やります!」
「私も!」
「じゃあ、三人で改めてやりましょうか。手を合わせて.....」
「「「いただきます!」」」
なんかいいですね、こういう普通の家族のようなやりとりは。これからもこのやり取りは大事にしていきたいですね。改めて挨拶をしてから私たちは朝食を食べ始めました。二人は私の作った料理をほんとに美味しそうに食べてくれます。こんなに美味しそうに食べてくれるともっと作ってあげたくなってしまいます。好き嫌いもあまりないのか野菜も全部なくなり皿だけが残りました。
「こんなに美味しいの久しぶりに食べた!」
「ふふっありがとうございます。美味しそうに食べてくれてこちらも嬉しいですよ」
「え!あ、その....ご飯ありがとう....ございます」
私がアリアに話しかけると少し俯きモジモジしながら私にお礼を言ってきました。
うん!なんて可愛いのでしょう!なんだか心が穏やかになりました。レインもそんなアリアを微笑ましそうな顔で見ていました。
「いえいえ、いいんですよお礼なんて。これから毎日食べることになるんですから毎回言うことになりますよ。ですが感謝の気持ちを忘ないことはいい事ですよ」
「毎日.....」
「えぇ、ですからレインもアリアも遠慮はしなくていいですよ」
「「.........」」
それから食器を運ぼうとするとレインが私を止めて来ました。
「あ、待ってください!食器洗いなら俺がやります!」
「え?いえ、食器は魔法で綺麗にするので洗う必要はありませんよ。お気持ちだけ受け取りますね」
「なら台所まで食器を運びます!」
そう言ってレインはテーブルの上にある食器をまとめて洗い場の方へ持って行きました。
「何かすごい気迫を感じましたね。いきなりどうしたんでしょうか」
「あの、私もなにかすることはないですか?」
「えぇ!アリアもですか!ほんとにどうしたんですか!」
「私たち昨日からシェリアさんに助けてもらってばっかりだから、少しでも力になりたくて.....レインも同じ気持ちだと思います」
レインに続いてアリアまでそう言ってくるので驚きました。二人があまりにもいい子過ぎて感心までしてしまいました。
「まだそんな事を考えなくてもいいと言いたいところですが、二人の気持ちを無碍にも出来ませんね。わかりました、じゃあアリアはテーブルをきれいにしてくれますか?」
「はい!」
それからアリアはテーブルフキンを使ってテーブルを拭き始めました。
こういうのも家族と言うのでしょうか。ただ、なんとなく悪い気はしませんね。お皿などは今までアイテムボックスに入れてましたが今度から食器棚にしまいましょうか。
「レイン、アリア!今から服を買いに行きますよ!」
片付けが終わりひと段落したところで私は二人に向かってそう言いました。それを聞いた二人は首を傾げて私を見てきました。
「服.....ですか?」
「そうです。今二人が着ている服は私が準備したものですがやはりお店に買いに行きましょう。そちらの方が多く買えますしデザインもいいです」
今二人が着ている服はどちらも無地のシャツとズボンです。正直自分のデザインのなさに悲しくなりますが、それを差し置いても服は必要です。なので近くの街に買いに行こうと思いました。
「でも、お金は.....」
「安心してください。こう見えて私お金いっぱい持っているので」
アリアがお金のことについて言って来ますが、世界中を旅していた時にお金は沢山手に入ったので問題ないです。数千年経ってるから物価とか色々変わってそうですが、まぁ大丈夫でしょう。
「さぁ、今から行きますから私の近くに寄って下さい」
「えっと.....」
「行こうアリア、シェリアさんもああ言ってるし」
「うん...」
少し遠慮していたアリアですが、レインに言われた事でこちらに来ました。やはりアリアは少し遠慮がちな子ですね。アリアに限らずレインも、もっと甘えてくれていいんですけど。
「私から離れないでくださいね。じゃあ行きますよ」
そういって私は転移魔法を使いレインたちと一緒に街へ移動しました。
読んでいただきありがとうございます!
レインとアリアはまだシェリアのことをお母さんとは呼びません。早く呼ばせたい。