第二十八話 入学式
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暖かい春の日差しの中、私はガルレール学園の入学式に行く前に最終確認を行っていました。
「二人とも準備は出来ましたか?もうそろそろ出発しますよ」
レインとアリアがいる二階に声を掛けると返事が返ってきましたが、降りてきたのはレインだけでした。
「は~い、ちょっと待っててっ」
「俺は大丈夫だけど、アリアがちょっと準備にとまどってる」
「あはは、そうですか、なら待ちましょうか。代表挨拶で話す内容はどうですか?覚えましたか?」
「え?あぁ、うん、完璧に覚えたわけじゃないけどある程度は暗記したよ」
「ふふっ、それなら安心ですね。楽しみにしていますよ」
レインは今日首席合格者ということで、入学式で新入生代表挨拶をすることになります。学園側が準備したものを読むという選択肢もありましたが、レインはそれを断り自分で一から書きあげて完成させました。
私も一度聞きましたが、中々によく書けているものだったと思います。
それから少し待つとアリアもこちらにやって来ました。二人とも先日買った制服を着こなし、ピシッと立っており、制服を着ている二人はとてもかっこよくて綺麗で、どこからどう見ても美少年、美少女です。
「二人ともよく似合っていますよ、立派なガルレール学園生です」
「えへへ、ありがとう。お母さんもすごく似合ってる!なんかお姫様みたい!」
「たしかにそうだね、母さん、すごい綺麗だよ」
レインとアリアがとても褒めてくれました。今の私は二人の制服を買いに行ったときに一緒に買ったワンピースを着ており、軽く化粧もしています。せっかくの子どもたちの晴れ舞台なので、少し気合を入れてしまいました。
「ありがとうございます、そう言っていただけると買ったかいがありました。それと....レイン、アリア二人にこれを」
私はアイテムボックスから二つのペンダントを取り出して、二人の首にそれをつけました。
シルバーの鎖に二人の瞳と同じ、緑色の石が付いておりこれには私の魔力が込められています。
「わぁ!とっても綺麗!それにお母さんの魔力を感じる!」
「ほんとだ....なんだかずっとそばにいるような、そんな感じがする」
二人とも喜んでくれたようで、しばらくそのペンダントを眺めていました。
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王都に着き学園へ向かうと、学園は大勢の人で溢れていました。学園の生徒に新入生、そしてその保護者などがいました。
私はここから会場となる講堂へと行き、レインとアリアは教室の方へ向かいます。つまり、ここで別れると二人とはもう気軽に会えなくなってしまいます。
今日から二人は寮で同級生たちと生活をしだし、さらに成長していきます。少し寂しい気がしますが、二度と会えないわけではないので耐えられます。
「さぁ、ここで一度お別れですね。大丈夫ですか、二人とも?」
レインとアリアもそのことをしっかりと分かっているのか、顔を少し俯かせています。入学式で、しかも首席と次席がこんな顔ではいけないと思い、私はしゃがんで二人を抱き寄せます。
「もう、そんな顔しないで下さい。あなたたちは今日からこの学園の生徒なんですよ?ここで多くのことを学び成長していくはずです。それに、これが今生の別れではありません。私は成長した二人の姿を楽しみにしています」
「母さん......」
「お母さん.....」
二人が顔を上げたので、私も二人を離し目を合わせて笑って言います。親が子どもを送るときの言葉を.....
「ですから、行ってらっしゃい、レイン、アリア」
「っ!うん、行ってくるよ母さん!」
「私も!行ってきますお母さん!」
レインとアリアは私に向かって笑ってそうはっきりと言ってくれました。
それから二人と別れ、私は講堂の方へ、レインとアリアは教室の方へと向かいました。
「すいません、今日入学するレインとアリアの母ですが、入っても大丈夫でしょうか?」
「レイン、アリア....あなたがあの首席と次席の....はい、問題ありません、お入り下さい」
「ありがとうございます」
「あ、申し訳ないのですが、中ではそのフードを取っていただけると助かります」
講堂の前へと着き、受付をしてから中に入ろうとしましたが、入る前に受付の人に顔を隠すために被っていたフードを取るように言われました。たしかに入学式でそれはまずいと思うので、了承します。
「分かりました、席に着いたら取らせていただきます」
そのまま中を進んで行き講堂の二階の席に座ります。それから受付の人に言われた通りフードを取ります。今から二人の入場が待ちきれませんでした。
しばらく式の時間が来るまであたりを見ながら待っているとあることに気が付きました。
「あら、私の周りに誰もいません。他の席は埋まっているのに.....はぁ、フードを取ったからでしょうか?」
私の席の周りだけ、まるでごっそりと刈り取ったかのように空席が残り、それ以外の場所では、他の人たちが続々と座っています。さすがにまずいのではないかと思い、席を立って今いる位置とは違う上の端っこのところにちょこんと座り直しました。
すると先程いたところが新しく来た人で埋まっていったのですが、依然として私の左側は席が空いており、心の中で頭を抱えていると凛とした綺麗な耳に心地いい声がしました。
「失礼します、お隣よろしいかしら?」
「あ、はい、大丈夫ですよどうぞ」
「ありがとうございます」
そう言って隣に座ったのは薄い紫色の髪が艶やかな綺麗な女性の方でした。装いや立ち振る舞いもとても洗練されたもので一目で上流階級に位置する方なのだと分かりました。
「まずは自己紹介を、私の名前は....テレサとお呼び下さい。あなたは?」
「私はシェリアと言います。初めましてテレサさん」
『ね、ねぇあれってもしかして』『おそらく...そうですわね』『隣にいる方は誰なんでしょう?』
隣に座った女性はテレサさんと言い、自己紹介をしてきたので私も自分の名前を名乗りました。なんか他の人がコソコソと話していましたが、距離があるため聞こえることはありませんでした。
「では、シェリアと。シェリアの周りには見事に人がいないのね」
「え、えぇそうなんですよ、なんでこうなってしまったのか.....」
「あなたがとても綺麗だからよ、どこかの王族と言われても信じてしまうわ」
なんだか急にテレサさんの口調が砕けましたが、特に言うことでもないので会話を続けます。
「王族だなんて....私はただの平民ですよ。それよりテレサさんの方が王族に見えますよ、私は」
「え?ふふっ、そうかしら、それは嬉しいわね」
何か含んだように笑ったテレサさんでしたが、それ以上何も言うことはなく、今度は話を変えてこれから来る子どもたちについて話しました。
「シェリアの子どもたちは確か首席と次席なのでしょう?凄いわね、私も娘が入るのだけれどそこまでの成績は取れなかったわ」
「ど、どうして私の子どもたちの結果を知っているのですか?」
「私の娘がどうしても気になるって言うものだから調べてもらったのよ。それであなたたちのことを知ったわ」
試験の結果を知ろうと思えば知る事ができる....テレサさんは私が思っていた以上に権力のある方だったようです。少しテレサさんに対して意識を変えようと思いました。
「そ、そうですか。それは、なんというかとても....」
「そんなに固くならないで?私も純粋に気になって調べただけなのだから。あら、そろそろ式が始まるそうね、静かにしていましょうか」
テレサさんと会話を続けていると、講堂全体が暗くなり他の保護者の方もシンと静かになりました。
それからファンファーレが響き渡り、今年の新入生たちが続々と講堂に入ってきました。
すぐさまレインたちの姿を探すと先頭にレインが、そして真ん中の方にアリアがいました。二人とも緊張して周りを見る余裕がないのか私には気付きませんでした。隣のテレサさんは笑って手を振っていました。
「気付いてくれたのですか?」
「えぇ、私の方を見て笑ってくれたわ、シェリアは?」
「二人ともこういう事が初めてで緊張しているようで、私には気付きませんでした」
それから全員が席に着きついに入学式が始まりました。式は着々と進んでいき、学園長である老齢の男の人が新入生にこの学園について話し、在校生代表による歓迎の言葉が終わった後レインの番が来ました。
「続きまして、新入生代表挨拶、首席入学者。レイン」
「はいっ!」
レインが返事をしてから、席を立ち壇上に上がりました。
「中々にカッコいい子だけど、あなたにはあまり似てないわね」
「あぁ、それは二人が私の実の子どもではなく、拾い子だからですね」
「あら、そうだったの。それはごめんなさいね」
「いえ、大丈夫ですよ。私にはそんなこと関係ありませんから」
「ふふっ、シェリアはいい母親ね....」
壇上ではレインが懐に入れていた紙を取り出し、広げてから話し始めました。
「暖かな春の訪れと共に、私たちはガルレール学園の新入生として入学式を迎える事ができました。私はこの学園で沢山の仲間たちと共に切磋琢磨し成長していきたいと思っています。
これからの生活が楽しみで仕方ありません。私にはいつか追いつきたいと思っている人がいます。それは、母です。母は優しく、強く、私の永遠の目標です。この学園で生活を送っていき、尊敬する母に少しでも追いつき、母に誇れる自分でありたいと思っています。
ガルレール学園の生徒という自覚を持ち、これからの規律、マナ ーを守り、勉学に励むことをお約束し、新入生の言葉とさせていただきます」
聞いていて思わず泣いてしまいそうになってしまいました。あのレインがここまで立派になったと思うと感動してしまい、涙が溢れてしまいます。
それから講堂に惜しみなく拍手が送られ、レインは壇上を降りて元の席に座りました。新入生代表挨拶最後に入学式が終わり、生徒たちが講堂を退場し始めました。
私も拍手をして送っているとレインとアリアが私に気付いて、二人とも笑顔で手を振ってくれたので、私も心からの笑顔で手を振りました。
「シェリア、気持ちは分かるけどその表情はやめた方がいいわ、何人か倒れているわ」
「え、えぇ?わ、分かりました」
テレサさんが何を言っているのか分かりませんが、言われた通りにします。
新入生が退場した事で、私たち保護者も続々と退場し始めました。私は端っこの方にいたので前の方が出るまで待ちます。
人が減ってそろそろ出ようとするとテレサさんから話しかけられました。
「シェリア、今日はありがとう。私はここでやらなくてはいけない事があるから、また今度ゆっくり話しましょう」
「はい、私もありがとうございました。その時は是非ともよろしくお願いします」
テレサさんはそのまま別の場所へと歩いて行ったので、私もフードを被って講堂の外へと出ます。
これからレインとアリアには会えなくなってしまいますが、それ以上に再び会った時二人がこの学園でどのように成長していったのかを見ることが楽しみになりました。
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