第二十六話 入学準備 前編
二つに分けます。
合格通知書が届いた翌日、私たちは早速学園で必要なものを買うために王都へと来ました。
「さて、まずは教科書の方を買いに行きましょうか」
「ん〜?なんで制服じゃなくて教科書なの?」
「それはですね、制服は採寸をしてからサイズを決めなければならないので時間がかかるのです。ですから先に買うだけで済む教科書にするのです」
「なるほど〜」
「場所はどこだっけ?もらった紙に書いてあったよね?」
「はい、書いてありましたよ。どちらも学園に行く際の通り道にあるようです」
「あ!そういえば服とか置いてあるお店あったかも!きっとそこだよ!」
「近くに本屋なんかあったのか、面白い本ないかな....」
三人でお喋りしながら王都の中を歩いて行くと、人が多く賑わっている場所につき、紙に書いてある案内を見ながら進んでいくと周りに比べてさほど大きくない建物に着きました。
窓ガラスから中を見ると大量の本が所狭しと置いてあったためここで間違いないと判断し中に入りました。
カランカラン
「あれ、誰もいない?」
「静か.....」
「すいません、誰かいませんか?教科書を買いに来たんですけども.....」
「あぁ、すいません。少々お待ちください」
中に入っても人の気配がしなかったため少し声を大きくして出すと、お店の奥の方から声がし、白い髭を生やした温厚そうなお爺さんが本を両手に抱えながら出てきました。
「よっこいせ、ふぅ、お待たせいたしました。本日はどうされたんですか?」
持っていた本を近くの机に置きながら私の方を向き、対応をしてきました。
「えっと、今日はこの子たちの教科書を買いに来たのですが、ありますでしょうか?」
「教科書?あぁ!ガルレール学園のですかな、お二人とも合格なさったので?」
「えぇ、とても頑張っていたものですから、無事合格することが出来ました」
「しかも、私が次席でこっちのレインが首席なんだよ!」
「おい、アリア、あんまり言わないでよ恥ずかしい...」
「主席と次席!?それは誠ですか.....?」
アリアの発言に目の玉が飛び出るほど驚いたお爺さんは、さすがに嘘の可能性もあると判断したのか、二人の保護者である私に確認の意味を込めて目を向けてきました。
その目線に私はフードの中で苦笑しながらも頷き、嘘ではないことを伝えました。お爺さんは心底驚いたという顔をしながら言葉を発しました。
「これは驚きましたな、首席と次席の方が私の店に来るとは.....しかも兄妹で.....すぐに準備させていただきます、お掛けになってお待ちください」
そう言ってまたお店の奥へ消えていき、私たちは近くにあった椅子に座り戻ってくるまで待つことにしました。
「アリア、あんまり首席とか次席とか言わないでよ、なんか嫌だし言いふらしたくないし....」
「えぇ~、でもやっぱり言いたいじゃん、せっかくなれたんだし」
「気持ちはわかるけど.....でもさ~」
「自慢することも別に悪いことではありませんが、ずっと言い続けることはあまりよろしくはありませんよ。いつか足元を掬われてしまいますからね」
「うぅ、そっか、あんまりよくないことなんだね、気を付ける....」
「!で、でも、そうやって自分の気持ちを素直に言えることはアリアの良いところでお母さん好きですよ!」
「そ、そうだよ、全くしちゃダメってことじゃなくて、し過ぎなければいいんだよ!」
私が少し注意すると悲しそうに顔を俯かせてアリアが声を出したので、慌ててレインと一緒に声を掛けフォローをしました。
(うっ、やっぱりアリアのこの表情には弱いです.....)
「お待たせいたしました、こちらがガルレール魔法学園で使用する教科書になります」
そんなやり取りをしているとお爺さんが戻ってきて教科書を机の上に置きました。
「あ、ありがとうございます。全部でいくらになるのですか?」
「いえ、お代はいりませんよ。ガルレール学園に受かった人は教科書と制服は無償なんですよ」
「え!そうなのですか、知りませんでした。では、これはそのままいただいても....」
「はい、問題ありません。お二人も、これからのご活躍を期待していますよ」
「ありがとうございます。では、これで失礼します。行きますよ、レイン、アリア」
「は〜い」
「.........」
「レイン?」
用が済んだため、お店を出ようとするとレインの反応が無かったため、どうしたのかと思い見てみると、レインは一冊の本を手に取って止まっていました。
「そちらの本が気になるのですかな?その本は大昔に存在したと言われている女性剣士の話が書かれているものなんですよ」
「女性剣士?」
「そうです、絹のように綺麗な銀髪を持ち、とても美しい女性でありながら、数々の強大な魔物を倒していったとされる英雄の一人ですよ」
「その人って.....」
レインが呟き私を期待するような目で見てきました。おそらくというか絶対だと思いますが、私のことですね。
「気に入ったのならそれも持っていっても構いませんよ」
「え!?いいんですか!」
「あの、本当にいいのですか?お金ならきちんと払えますが」
私がそういうと、お爺さんはにっこりと笑い自身の髭をいじりながら言いました。
「いいんですよ、私もその本が好きでしてね、だから是非とも読んでもらいたいんですよ」
「そうなのですか、なら有り難くいただきます。ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございました!」
私とレインはお爺さんに頭を下げ、何故かアリアも一緒に頭を下げてお礼を言い、それからお店を出ました。
「教科書と本が買えた......いえ、もらえたことですし次は制服の方へ行きましょうか」
「制服着るの楽しみだな〜、早く行こう!」
「この本、帰ったらじっくり読もう。ここに書いてある人ってきっと母さんのことだよね?」
「あ、それ私も思った!特徴がすごく似てるもん!」
「あはは、多分そうでしょうね、なんだか気恥ずかしいです」
教科書と本をアイテム袋にしまってから今度は制服を売っているお店に向かいました。




