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第二十一話 魔法学園試験日

第二章です。これからもよろしくお願いします!

「はぁぁ!」


「そこっ!」


「うっ、そう来ますか。ですが、そのくらいなら全然対処できますよっ!」


「くぅっ、やっぱダメか....」


「結構考えてやったのに、さすがお母さん」


「相手が私ではなかったら、決まっていたかもしれませんね」


 私は今、レインとアリアの二人と模擬戦を行っています。二人と出会って母となることを決めた日からもうすでに四年の時が経ち、二人は今年で九歳になります。

 魔法や戦闘方法を教え始めたときとは比べ物にならないほど強く、賢くなり、身体もずいぶんと大きくなりました。


「さて、二人とも今日はここまでにして後は身体を休めましょう。疲れを取らないで、明日の試験で実力を発揮出来ないとなっては、目も当てられませんよ」


 私がそう言うと、悔しそうに眉を顰めながらレインが言いました。


「負けたまま終わるのは悔しいけど、母さんの言う通りだし、今日はもうゆっくりするよ」


「明日がついに試験か〜、うぅ、緊張してきた....」


「大丈夫ですよ、魔法は私がとことん教えましたし、座学だってそうです。おまけに神気まで使えるようになった二人なら絶対に受かります。自信を持って下さい」


 明日は以前から言っていたガルレール魔法学園の入試日であり、レインとアリアがその試験を受けに行きます。入試日の数か月前に王都のある学園へ受験志願をしに行き、一週間ほど前に二人分の受験票と、持ち物や注意事項が書かれた紙が届きました。

 届けてくれたのは、学園の先生が出した使い魔で、志願をしに行ったとき一緒に私の魔力を覚えさせ、受験票の届け先に登録しました。


 現在の二人は元々の才能もあったため、あれからぐんぐんと魔法の扱いや戦闘の動き方が良くなっていき、神気についてもほとんど自分自身でコントロール出来るようになったりと成長速度が凄まじいです。座学に関しても同じで、常に真面目に勉強していたため九歳にしては知識があると思っています。


「そうだよね!よ~し、明日頑張るぞ!ね、レイン?」


「俺はアリアほど緊張も心配もしてないよ、受かるなら首席で受かりたいし」


「あら、レインは大きく出ましたね、いいですよその気持ちです」


「えぇ~、レインが目指すなら私も目指す!」


「でしたら、二人で主席と次席を取っちゃいましょう。楽しみにしてますよ」


 それから、二人とも今日の練習を終わらせ、家に戻ってゆっくりしてから明日の試験の勉強と持ち物や日程の確認など、試験に対して万全な対策をしました。途中アリアやレインから質問をされ、それに答えながら時間は過ぎて行きました。



 夜になり、三人で夜ご飯を食べ始めました。今日の夜ご飯は、明日が試験ということもありオーク肉の生姜焼きです。

 豚肉は疲労回復や免疫力アップといった働きがあり、翌日のコンディションを整える効果が期待できるためこの料理を選びました。


「ご飯を食べたら、お風呂に入ってすぐに寝ちゃって下さい。明日は朝早いですからね」


「分かったよ、母さん」


「は〜い!あ、今日もお母さんと一緒に寝たい!」


「ふふっ、大きくなってもアリアは変わりませんね」


「ほんとに、アリアはずっと甘えん坊かもね」


「それでもいいもんね〜、私はお母さん大好きだから!」


 そんな事を話したあと、風呂に入ってから(アリアと一緒に入った)三人並んでベッドで寝ました。




―――――――――――――――――――――――――――




 朝起きてから外を見ると、空は雲一つない快晴でとてもいい天気でした。

 私は先に一階に降りて、朝ごはんとレインとアリアに渡すためのお弁当を作り始めました。お弁当は食べやすいようにおにぎりにして、具もそれぞれ変えました。


 一通り作業が終わった後、もう一度二階へ行き二人を起こします。


「レイン、アリア、朝ですよ。起きてください」


「んっ、母さん、おはよう...」


「ん〜、ふぁ〜あ、おはよう、お母さん」


「はい、おはようございます。もうすぐ朝ごはんが出来るので、顔を洗ってから来てくださいね」


 二人にそう言い、一階に戻って料理を続けます。程なくしてレインとアリアがリビングに来たため、料理をお皿に分けてテーブルに置き、三人で挨拶をしてから食べ始めます。


「二人とも、よく眠れましたか?体調は大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫だよ、母さん」


「私ももう眠くないし、体調も大丈夫だよ」


「それならよかったです。学園までは私も付いて行きますが、そこから先はあなたたちだけで行かなければなりませんからね?」


「いつまでも母さんと一緒じゃなきゃダメな俺じゃないから心配ないよ」


「ほんとだよ、お母さん心配し過ぎ〜」


 二人から、そんなことを言われてしまいました。どうやら緊張していたのは私もだったようですね。自分が試験を受ける訳ではないのに、なんだかドキドキしてきます。


 朝ご飯を食べ終わり、少し早いですが早く行って損はないので転移魔法を使って移動します。


「忘れ物はないですか?受験票と筆記用具は持ちましたか?」


「うん、持ったよ」


「忘れてないよ」



 いつものように街の近くへ転移して歩いていると、いつもより人が多く感じ、門の近くに行けば行くほどそれを大きく感じました。

 それから王都の中へ入り、学園へ移動を開始したのですが、レインやアリアくらいの子どもを連れた集団と一緒に行くことになってしまいました。


「もしかして、この人たち俺たちと同じなのかな?」


「おそらくそうでしょう。あなたたちのライバルになる子たちですよ」


「そっか、一緒に試験を受けるからライバルなのか....」


「そんなに思い詰めなくてもいいですよ、いつも通りにすればいいんです」


 学園の前に着くと、そこにはまだ時間にかなりの余裕があるのに大勢の人がそこにはいました。平民の方が多いように感じますが、中には貴族だと思われる人もおり、入試受付も左側が平民、右側が貴族と明確に分かれていました。


(学園内は平民貴族関係ないようですが、ここではそうもいかないようですね)


「こんなに受けるひとがいるのか、さすがに予想外だった...」


「この人たちもライバル.....」


「この中から合格するのはたったの百五十人、とても狭き門ですが、二人なら受かると信じています」


 あまりの人の多さに呆然としてしまった私たちですが、気を取り直して平民が並ぶ列である左側へ並びます。

 相も変わらずフードを被っている私は、並んでいる間色んな意味で注目されていました。


『あの人なんで、フードなんて被ってるんだろう?』

『なんか立ち振る舞いが、俺たちと全然違う気がするんだが....』

『両隣にいる子たちが受けるのかしら、というかかなり美形の子どもね、こっちに並んでるけど本当は貴族なのかしら?』


 ここ数年で、美形に育ってきた二人も周りの人たちに目立っていました。二人にもそんな声が聞こえているのかと思い見てみると、レインは真っ直ぐ前を見据えて、アリアは落ち着かないのか辺りをキョロキョロと見ていました。どうやら周りの声は聞こえていないようです。


「次にお待ちの方、こちらへどうぞ」


 呼ばれた方へ行くと、そこには眼鏡をかけた男性が人懐っこい笑顔を向けながら挨拶をしてきました。


「おはようございます。確認をいたしますので、受験票を出していただけますか?」


「おはようございます。受験票ならこの二人が持っています」


「これが受験票です。お願いします」


「私のはこれです。よろしくお願いします」


「はい、ありがとうございます。礼儀正しいいい子たちですね」

 

「ふふっ、そうですか?礼儀だけではなく魔法の腕も素晴らしい子たちですから期待していて下さい」


「えぇ、母さん?」


「ちょっとお母さん!」


「それはそれは、ここまで言う人も中々いませんよ。では、楽しみにさせていただきます。ここから先は保護者の方は行く事ができないので、お母様は帰宅してもらっても問題はないです。お二人は、この先を行って試験会場に向かって下さい」


「分かりました、ありがとうございます。それと、よろしくお願いします」


「「ありがとうございます」」


 受付が終わり、列から離れました。職員の方から指示があった通り、私はここからは一緒に行く事が出来ないので、ここで最後に二人と話します。


「では、私は一度戻ります。試験が終わる頃にまた戻ってきますね。二人とも、頑張ってください。お母さん、応援してますからね!」


「うん!絶対首席で合格してくるよ!」


「私も私も!」


 力強くそう言ってくるレインとアリアを見て、地面に膝をつき二人を抱きしめます。


「いつも通り全力で取り組んでください。それだったら大丈夫です。なんたって、あなたたちは私の自慢の息子と娘なのですから」


 それだけ言うと私は二人から離れて目を真っ直ぐ見て言います。


「行ってらっしゃい、二人とも!」


「「....!行ってきます!!」」


 レインとアリアは学園の奥へと向かっていきました。ある意味戦場へと向かっていく二人の後ろ姿を見ていて、私はとても誇らしく感じました。


「さて、私はどうしましょうか?待っていても落ち着かないのでギルドで依頼でも受けましょうか、最近顔も出していないですしね」


 なぜか試験を受ける張本人ではないのに緊張してきてしまった私は、気を紛らせるために最近あまり行ってない冒険者ギルドへと向かいました。












読んでいただきありがとうございます。

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