第十八話 正直に話す
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今私たちは椅子に座って真面目に向かい合っています。私の対面にレインが座り、その隣にアリアがいます。まずは私から話さないといけないと思い口を開きます。
「まず、あなたたちが先程使用した力、あれは神気と呼ばれるものです」
「神気?」
「なにそれ?」
「神気とは、文字にすると神の気と書きます。分かりやすく言うと神の力です」
二人に自分たちが使った力がどのようなものなのか知ってもらう為に神気の概要について話します。それでも完璧には理解できないようで頭に?をあげています。
「魔力とは違い何かに変換することなく直接力を使い攻撃や防御をする事ができます。威力も当然違い、魔力を使うよりも強力なものになります。二人も神気を使った時、魔力とは違った力を感じませんでしたか?」
「たしかにあの時、剣を持ってた手から今まで感じた事もないほどの力を感じたよ」
「私もレインを助けたいって思った時、身体から今までなかったものが溢れ出るように感じたよ、お母さん」
「やはり、そうですか。先程言いましたがその力は神の力本来であればあなたたちのような人が使えるようなものではありません。それに、それは人に全能感を与え最悪の場合力に溺れて暴走してしまう可能性もある、危険な力でもあります」
二人はまだ初めて神気を使ったため強い力を感じただけで済んでいますが、このまま放置していればそうはいかなくなります。リュクシール様に聞いた話によると別の世界で人が神気を宿し暴走したところ、その世界の半分以上の生物が絶滅したそうです。
私の話を聞いたアリアは先程の真剣な表情の中に不安げな気持ちを混ぜたような顔で私を見おり、レインも大体アリアと同じような顔なのですが、どこか引っ掛かりを覚えてるような表情をしてます。そして、アリアが絞り出すように声を出します。
「そんな力が.....ねぇ、私たちどうしたらいいの?お母さん」
「大丈夫です、安心して下さい。私が神気の使い方を一から教えます。二人を暴走させたりなんかしません、約束します」
「ちょ、ちょっと待って!なんで母さんがその神気の使い方を知ってるの!それにさっき『あなたたちのような』って、まるで母さんは違うような.....母さんは俺たちに何を隠しているの....?」
「え....?お母...さん?」
レインは私が言ったことの違和感を感じ取り私に向かって悲しそうに、そしてどこか泣きそうな顔で質問をしてきます。アリアもレインに言われたことでその違和感に気付き目を見開いて私を呼びます。
ここから先を話すためには私の今まで隠してきたことを話さなければなりません。いずれ話すのだろうと思ってはいましたが、まさかこんなに早く話すことになるとは思ってもいませんでしたね。
「それはですね、レイン、アリア、私が二人とは違い人ではないからですよ」
「「え......」」
私の言ったことに対して二人は呆然としたまま固まってしまいました。人間本当に驚くと何もリアクションがなくなるようです。
「ですが、人ではないと言っても化け物や幽霊なんかではありません」
「え、じゃあ...なんなの?」
「ヒントは先程言いましたよ。私は本来は神しか使えない神気が使えると」
「それってもしかして.....母さんは神様ってこと?」
「神様!?」
やっと答えに辿り着きました。ですが、神様と聞いてレインとアリアはますます混乱してしまったのかなんだかあたふたしていたので、私はもっと具体的になんなのか説明しました。
「神様と言うよりも女神が正しいですね。私はこの世界にずっと前から存在している女神です」
「母さんが、女神....」
「えっと、お母さんが実は人じゃなくて女神でそれで....」
「あの、大丈夫ですか?」
二人が落ち着くまで数分待ち、話が出来る状態になった後もう一度話始めます。私が女神と言ったせいなのか、さっきとは違った意味で固くなっています。
「どうですか、落ち着きましたか?」
「う、うん大丈夫」
「私もとりあえず大丈夫...」
「なら続きを、先程言った通り私は女神です。ですから勿論神気を使うことも出来ますし、その使い方を二人に教える事もできます」
「そっか、今は神気の話をしてたんだよね。お母さんのことで驚いて忘れてた」
「大丈夫、俺もだから...」
私のカミングアウトが衝撃的すぎて、話していた事を忘れていたようです。なんか申し訳ないことをしてしまった気分になります。もっと早く言えていれば....
「あはは、それは申し訳ありません。少し言うのが怖かったもので...」
「怖かった?どうしてお母さんが?」
「私が人じゃないと分かったら、あなたたちが私から離れて行ってしまいそうな母親でいられなくなさそうな気がしたんです」
そうです、私はそれが一番怖かったのです。私の本当のことを知ったレインやアリアから拒絶されるんじゃないか、母親と思ってくれなくなるのではないかと思ってしまっていたのです。そんな事ある訳ないのに....
「そんなこと絶対にしない!母さんが何者でも関係ない!俺たちは母さんに救われたんだ!あの時、あの場所で」
「そうだよ!お母さんはお母さんだよ!私はどんなお母さんも大好きだよ、それにお母さんが女神って聞いてもなんか納得しちゃったし!」
「レイン....アリア、そうですよねそんなことも分からないなんて私は大馬鹿者ですね」
私が思っていた事を二人に伝えると、二人は間髪入れずにそれを否定してきました。レインは思わずテーブルを叩いてしまうほど、アリアは私に近づくようにかなり前のめりになりながら伝えてくれました。
こんないい子たちのことを信じきれていないなんて、ずっと母親になると言ってきたのにこれでは本当に母親失格ですね。ずっと前に信じると決めていたのに、恥ずかしい限りです。
「母さん、俺らはずっと一緒に居たいって思ってる。だからこれからもずっと俺らの母さんでいてよ」
「うん!お母さんがお母さんじゃないなんで私絶対いや!」
「こちらこそ、ずっとあなたたちの母親でいさせて下さい」
それから一度お茶を入れて休憩を挟み、今度そこ神気を教えることについて話します。
「レインとアリアに神気がある原因は私が近くにいたからでもあります」
「母さんが原因なんだ...」
「お母さんが私たちを育ててくれてるからなの?」
「詳しくは分かりませんが、二人には私と同じ神気が宿っています。ですが、やはり人ですので私のような本物の神ほどの量はないので使うとしてもここぞと言う時の切り札として使うのが良いでしょう」
神気の容量は決して無限という訳ではありません。当然私やリュクシール様も使うにも限界があり、そこまで大量に神気を宿しているわけではないレインとアリアでは一撃に込めたりする程度しか出来ないでしょう。それでもかなりの攻撃手段になると思いますが。
「その力の使い方を母さんが俺たちに教えてくれるって事なの?」
「使えないと暴走しちゃうかもなんだよね...」
「えぇ、だからこそしっかりと私が教えます。しかし結局のところ最後は本人の意思によって決まってしまうので、そこは二人に頑張ってもらわなければなりません」
力の出し方や扱い方は私が全て教えることが出来ますが、力に溺れてしまうかどうかは本人次第です。
「神気を使えるようになったら今よりも強くなれる?」
「神気はとても強力な力です。使えれば逆境を覆すことも可能です。しかし無闇矢鱈に使うことはオススメしません」
「なんでなの?お母さん」
「そんな力を使えたら周りの人達が黙っていません。どうにかしてその力を手にしようとしたりと、余計な火種を増やすだけになってしまいます。ですので、二人には本当に必要な時のみ使用を許可します」
これは今のうちにしっかりと言っておかないといけません。神気のことが伝わったら確実によからぬ輩が近づいてくるはずです。それを避けるためにも使用を控え、目立たないようにするのが得策です。
「そっか、そういったこともあるのか。うん、気を付けるよ母さん」
「約束は守る!」
「それなら安心ですね。では、早速明日から神気については教えてあげます。今日はもう寝ましょうか、二人も色々あって疲れているでしょう?」
「そうだね、知る事が多すぎてもう無理」
「私もお母さんの正体を知ったりで疲れちゃった」
二人に声を掛けると、どちらも少し眠そうに返事をしました。私のことを話しましたが、別になにが変わる訳でもなくいつも通りでしたね。
「二階に行きましょうか」
「あ!今日はお母さんと一緒に寝たい!いい?」
「それなら俺もいい?俺も母さんたちと寝たい」
「私とですか?ふふっ良いですよ。今日は家族三人で寝ましょうか」
アリアが提案し、レインもそれに賛同したので今日は私の部屋のベッドで三人仲良く寝ました。
「お母さんいい匂い〜」
「なんか落ち着く....」
「大好きですよ、二人とも」
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