第十二話 冒険者になる
はい、再び王都に来ました。ほんとに転移魔法は楽に移動できていいです、作った甲斐がありました。いつかレインたちにも教えられたらいいですね。
街の中を回っていたりしていたので冒険者ギルドの場所は既にわかっています。ガルレール学園からそれほど距離がなく意外にも近くにあり、学園の生徒たちも中等部の上の子たちや高等部の子はギルドに登録をするらしいです。
しばらく歩くと盾の上から剣が二本クロスしているエンブレムが目立つそこそこ大きい建物に着きました。建物も綺麗で中からさまざまな人の声がします。
冒険者と聞くと少し粗暴なイメージを持つ人がいるかも知れませんが、この世界の冒険者はそんなことはなくジルさんのような誠実な人もいます。ランクがA以上になると国からも一目置かれる存在となり皆んなの憧れになるなど立派な職業です。ですが、その分若い子たちが無理をして命を落とすということもありますが....
「ひとまず冒険者登録をして軽く受けられる依頼があったら受けましょうか」
扉を開けてギルドの中へ入ります。中も割と綺麗で毎日こまめに清掃していることが分かります。建物は三階建てで一階に受付や酒場などがあり、二階と三階は職員や冒険者が寝泊まり出来るように部屋があります。宿が取れなかったりした時にギルドに行きお金を払えば泊まることができます。
中に入ると案の定注目されてしまいました。最初はここでは見ない顔が来たのだと思って見たのだと思いますが、その後フードを被っていた私を見て視線が下に行きそこで止まります。やっぱり胸ですか、ほんとにいつの時代も変わりませんね。
「なぁ、あんなやつ見たことあるか?」「いや、ないが....すごいな」「うっひょぉ、あの人顔見えないけどすげぇおっぱい!」「おいバカやめろ!聞こえるだろ!」
全部聞こえてます...男性からだけではなく女性からも視線があります。やはり冒険者だけあって遠慮がないですね、街の人たちはそこまでではないのですが。
そんな視線を受けながら私は受付へ向かいます。特に並んでもいなかったので正面の受付に行くとそこにいた受付嬢さんも私を見ていたのか笑顔を向けて挨拶をしてきました。
「こんにちは!ようこそ冒険者ギルドへ、受付嬢のソフィと申します。本日はどのようなご用件ですか?」
そう言ったソフィーさんは黒髪ショートの随分と綺麗な方で美人と言うよりは可愛い系ですね。というよりもギルドの受付嬢はみんな美女、美少女揃いです。採用する時になにか基準でもあるのでしょうか。
「こんにちは、今日は冒険者登録をしに来ました。お願いできますか?」
「はい、畏まりました。うん?冒険者登録....白いフード....もしかしてあなたがシェリアさんですか?」
「えぇ、そうです。ジルさんから何か聞いてますか?」
「はい、聞いていますよ。Cランク冒険者を軽く倒す実力者だから悪いようにはしないで欲しいと言われています」
どうやら本当にジルさんはギルドに話したらしいですね。何か待遇がよくなったりするのでしょうか。周りでも『あれがジルさんが言っていた』とか言っていますし。
「そうですか、それで何かが変わったりするのですか?」
「はい、今から説明しますね。シェリアさんは冒険者のランクについては知っていますか?」
「知ってます」
冒険者のランクは全部で七つあり、一番高いランクがSで一番下はFになります。Eランクまでが新人冒険者と呼ばれそこから依頼をこなしていくとDランクになれ、中級者レベルになります。このランクから少し上がりにくくなりCランクまでいくと冒険者としては成功と言われます。
それより上、Bランクは才能がないと難しいとされ、A ランクにもなると天才の中でもさらに努力を続けたものがなれるレベルで皆んなの憧れになれます。Sランクはもはや天災級と言われ街一つを一人で壊滅できる戦力を持ち、世界でも珍しくほとんど数はいません。ここまでくると国から注意人物となり名が世界に知られます。ちなみに数千年前の私はSランクでした。今は何人いるのでしょうね。
「なら話は早いです。シェリアさんはDランクから始めていただきます。初心者では受けられない討伐依頼も受けていただいて構いません」
「いきなりDですか、大丈夫なんですか?そんな私だけ待遇を良くして」
「普通はこういったことは少ないのですが、推薦したのがジルさんですから問題もないと判断しました」
どうやらジルさんはさっきの周りの冒険者の反応も見た感じ私が思っていた以上に冒険者ギルドに対して発言力があり信頼もされているようです。この出会いは大事にしないといけませんね。
「そこまでジルさんはすごい方なんですか?」
「はいそれはもちろん、王都が誇るAランクパーティ紅蓮のリーダーであり、本人も誠実な方ですからここの冒険者の憧れ筆頭ですね」
「そんな方に推薦されていたとは....今度またお礼を言わなくてはいけませんね」
「冒険者登録には名前とこの魔力量を測る水晶に触れていただきます」
「魔力量を測る?そんなものがあるのですか?」
魔力量を測る水晶なんて私は知りません、ということは私が籠っている間に新しくできたマジックアイテムなんでしょう。
「はい、魔法を使う人使わない人限らず登録の際には必ず測らせてもらっています。もし魔力量が高かった場合は魔法職を勧めたりするためですね」
なるほどちゃんと理由があって測っているのですね。ですが魔力量が高いから魔法職になるというのはどうなんでしょうか。剣などを使って近距離で戦う人も、魔力がいくらあってもいいような気がしますが.....
「なるほど、そんな理由が。これは触れればいいんですね?では、いきます」
私はそう言って水晶に触れ魔力を込めました。しっかりとやったら水晶が壊れてしまいそうになったのでかなり抑えて魔力を込めます。途中水晶がカタカタと震えて思わず冷や汗をかいてしまいましたが....
「はい、もう大丈夫ですよ.....わぁ!すごい魔力量ですよシェリアさん!ジルさんが推薦するだけありますね!」
「そ、そうでしょうか?それならよかったです。あはは」
ちゃんと抑えることが出来たようです。何気にコントロールが難しく精神力を使ってしまいました。これで特訓したらかなり魔力の扱いが上達してしまいそうです。
「これで登録は以上です。こちらが冒険者カードになります。なくしてしまうと再発行になってしまうので気を付けてください」
そう言って名前やランクが書かれているカードを渡されました。微弱ながら私の魔力が流れていてこれで情報を管理してるらしいですね。前はもっと質素なものでしたが、これも進化ですか。
「はい、分かりました。ありがとうございます。早速依頼を受けようと思うのですが、どうすればいいですか?」
「それでしたら、あちらにある依頼掲示板にあるものから受けたい依頼のものを取ってきて受付に出してくだされば依頼を受けることが出来ます」
ソフィさんが示した方を向くと、壁に依頼者が沢山貼ってありその周りに多くの冒険者がいます。こういうところはあまり変わってないのですね。
「わかりました。依頼を見てきますので私はこれで」
「はい、シェリアさんの活躍を楽しみにしています」
そのまま依頼掲示板を見に行きました。採取がメインのものや魔物の討伐だったりと多種多様な依頼がありますね。家にレインとアリアがいるのであまり時間が掛からなそうなものを選びましょうか。しばらく依頼を眺めているとちょうど良さそうな依頼がありました。
「これなんかいいんじゃないでしょうか?フォレストウルフの討伐」
内容は森に増えてしまったフォレストウルフを討伐すると言うもので報酬は討伐した数によって決まるらしいです。ちなみに魔物ランクはDですね。魔物のランクも冒険者同様S〜Fまであり、それぞれ脅威度がちがいます。受ける依頼も決まりましたし早速受付へ持っていきましょうか。
「ソフィさん依頼の受注お願いします」
「はい、分かりました。フォレストウルフの討伐ですね。フォレストウルフは群れで行動することが多いので十分気をつけてください」
ソフィさんの忠告を聞き私は依頼を達成するため冒険者ギルドを出ました。




