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第十話 お母さんキレる

「いいじゃねぇかよぉ、ちょっと楽しむだけだからさぁ」


「いやぁ!誰か助けて!」


 探査魔法で見た感じどうやら冒険者の男性が女性の手を掴んで引き摺り込もうとしているようです。


「まずいですね」


「どうしたの、お母さん?」


「レイン、アリア!私は路地裏で襲われている女性を助けて来ます!なのでそこから動かないでくださいね!」


「えっ!ちょっ!母さん!?」「どういうこと!?」


 困惑している二人を置いて私は駆けます。少し進むと魔法で見たように女性と男性がいました。


「なにをしているんですか?」


 私が後ろからそう問うと男は後ろを振り向き下卑た笑みを向けてきました。


「なんだぁ、お前....ってすげぇ身体してんなぁ!ひょっとしてお前もまざりたいのか?いいぜ、こっちに来いよ」


 なんというか、ほんとに不愉快な人ですね。嫌悪感しかありません。


「あなたのような下衆のところに行くほど私は安くはありません」


 そう言って私は魔法でまず男の足を凍らせます。


「うわっなんだこりゃ!?」


 そして懐まで一瞬で移動し鳩尾に魔力を纏わせた拳を撃ち込みます。本来ならそのまま吹き飛びますが足を凍らせているのでその場に止まります。そこから身体をくの字に曲げている男の顎をサマーソルトで蹴り上げます。この際足にかけていた魔法を解いて上に吹っ飛ぶようにします。

 

 男はそのまま地面にぶつかり動かなくなりました。さすがに死なないように威力は調整したので気を失ってるだけですね。


「さて、大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」


「は、はい!大丈夫です!助けていただき本当にありがとうございます!」


 私が女性に問題はないかどうか聞くと、彼女は腰を九十度に曲げ私に頭を下げてお礼を言ってきました。よっぽど怖かったのでしょう、目が涙目になっていました。気にしなくてもいいと彼女に声をかけようとすると、私が来た方向とは別の場所から声が聞こえました。


「すまない、私はギルドに所属しているAランク冒険者のジルという者だ。ここで女性が襲われていると聞いて来たのだがこれはどういう状況だ?」


 来たのは紅蓮の髪を後ろに一本結びにしている若い女性の方でした。どうやらAランクの冒険者のようで誰かが通報してくれたのでしょうか、それを聞いてここまで来てくれたそうです。


「はい、そこにいる男がこの方を襲おうとしていたので僭越ながらも助けさせていただきました」


「なに、そうなのかそれは助かった、礼を言わせてもらう。あなたも含めどこか怪我などはないか?」


「はい、大丈夫です。無傷です」「私もこの方のお陰で」


「そうかならよかった、向こうに私の仲間がいるからそこまで行くといい。私はこの男の確認をする」


 そうジルさんが言った後助けた女性はジルさんの仲間がいる方向に歩いて行きました。ジルさんは横に転がっている男に近づきしゃがみ込んで、男の確認をしました。


「ん?こいつ、ギヨームじゃないか」


「知っているんですか?」


「あぁ、こいつは一応Cランクの冒険者なんだが、前から問題行動が目立っていてギルド側でも手を焼いていたんだ」


 私が聞いてみると、どこか苦虫を噛み潰したような顔でジルさんがそう言ってきました。なるほど前々からこのようなことをしていたんですね。このような顔をするのも納得です。


「そうなんですか、よく今までギルドから除籍されませんでしたね」


「こいつはこんなでも実力はあったからな、しかし今回の件で今度こそ除籍は免れないだろう。それにしてもギーヨムを無傷で倒すなんて、もしやあなたも冒険者か?」


「いえ、私は違いますよ。近いうちになろうとは思っていますが」


「そうなのか、是非とも冒険者になる時は私の名を出してくれ私が推薦しておこう。名前は?」


「シェリアと言います。あ、フードを被ったままでは失礼ですね」


 どうやらジルさんは私のことを冒険者ギルドに伝えるらしいです。あまり目立つのはよろしくありませんが、折角ですのでそのご厚意に甘えましょうか。それからフードを取るとジルさんは驚いたような顔をしました、もう見慣れましたね。


「シェリアか今まで見た事ないほど綺麗だな、覚えておこう。さて、確認も終えたしこいつを連れて戻るか。シェリアはこの後は?」


「私はここに来る際に子どもたちを置いてきてしまったのですぐに戻ります」


「子どもがいるのか、それはいけないな。こちらは問題ないからすぐに戻るといい」


「はい、ありがとうございます。では失礼します」


 ジルさんがそう言ってくれたので私は路地裏を離れて先程いた場所に戻ろうと歩き始めました。


(?二名ほどからいつもとは違う視線を感じます。いったいなんでしょう?)


 少し気になりながらも先程の場所に戻ったのですが、そこにレインとアリアの姿はありませんでした。近くにいるのかと思い探してみても見つかりませんでした。


「レイン、アリアどこに行ってしまったんですか」


 探しても見つからないので探査魔法を使おうとすると横から声をかけられました。


「こんにちはそこの方、大変そうだね〜」


「なんですか、あなたは」


 私はいきなり話しかけてきた男に警戒心を抱きながら返事を返しました。そんな私に対して男は飄々とした態度で私の耳元に近づき話しました。


「そんな警戒すんなって、子どもたちがどうなっちまっても知らないぜぇ?」


 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?


 今この男はなんと言いましたか?子どもたちがどうなっても知らない?つまりこの男ないしその仲間達がレインとアリアを連れ去ったということですか。なぜそんな事を、なぜあの子たちを......

 私が頭の中で考えていると男がまた喋り始めました。


「驚いて固まっちまったか、おっと変なことは考えるなよ?さっきあんたの戦い方は見たがあれじゃあ俺らは倒せない」


 なにを言ってるんですか、私があなたのような者に負けるはずがありません。


「さてとりあえず子どもを返して欲しければ金を渡しな、レストランから見ていたがあんた金持ってるだろ。だから金を準ッッがっ!?」


 喋っている途中でしたが私は男の首を掴み持ち上げました。


「あの子たちはどこにいるんですか?探査魔法を使いましたが見つからなかったのでなにか隠蔽魔法でも使ってるのでしょう?」


「くそっ!この女っ!調子に乗ってんッッぐっ!!」


「いいから話してください、うっかりあなたの首の骨を折ってしまいそうです」


「おいっ!大丈夫か!!今なんとかしてやる!」


 私が手に力を入れると別の方向からもう一人の男が出てきて私に魔法を使おうとしていますが、無駄です。男が魔法を使う前に先に私が重力魔法を使い男を床に縫い付けます。


「な、なん....だ..これ、から....だ..が......おも、く」


「そのままそこにいて下さい。それであの子たちはどこですか?ある程度の場所を教えてくれればそこから見つけます。」


 殺気を向けながら再度質問をすると、男は震えながら質問に答えました。


「お、王都の東側にあるコングって名前のバーの地下にアジトがある。だ、だから、そこに...」


「わかりました。そこにレインとアリアがいるんですね」


 男から二人の居場所を聞いた私は再度殺気をぶつけて男の気を失わせたあと手を放しました。重量魔法をくらった方も床に伏せながら気絶していました。


「東側のバーですね、早くあの子たちを助けないと」


 魔力を足に纏わせ加速魔法を使いながら私は王都の屋根をかけました。かなりのスピードが出ているので街の人たちに姿を見られることはありませんでした。探査魔法を使い建物にも注目しながらしばらく移動していると何か引っ掛かりがある建物がありました。看板には『コング』と書いてあります。間違い無いですね。


「見たところまだ開いてないですね。このまま強行突破しましょう」


 屋根から降りて建物の前にたち全身に魔力を流しながら入ります。


「んぁ?すまねぇなお客さん今はまだ開いてな......ってなんだお前!客じゃねぇな!」


「えぇ、お客じゃありません。子どもたちを返してもらいに来ました」


「こ、子ども?一体何のことを言ってるんだ?」


 一瞬焦ったような顔をして誤魔化そうとしましたがこちらはもう分かっています。明らかに奥の壁から魔法の気配がします。


「誤魔化しても無駄です。あなたに用はないので奥失礼しますね」


「え?!ちょっとまて!」


 男を無視しながら奥の壁へ着き魔力を込めた拳で壁を殴りました。するとなにかガラスが割れたような音が鳴りなにもなかった壁に扉がありました。


「そ、そんな?!高位の魔法師がかけた隠蔽魔法だぞ!そんな簡単に破られるわけが....」


「私の前ではただのガラスと変わりません。では行きましょうか、この先に二人がいるはずです」


 そのまま扉を開け下に続く階段を降りました。ここまで一気に来ましたが、一度落ち着くと段々と怒りが沸々と湧いてきました。

 階段が終わり目の前にはまた扉があり、そこを開けると広めの部屋に男が5人おり一人のボスらしき人の側にレインとアリアがおり、レインが守るようにアリアを背に隠していました。二人とも私を見るなり涙目になりそのまま見てきました。


「なんだお前、どうやってここに来た」


 私にボスらしき人が何者なのか尋ねてきました。他の四人も私に少なからず警戒しいつでも飛び掛かれるようにしています。


「母さん!」「お母さん!」


「私はそこの二人の母親です。取り返しにきました。」


「母親ぁ?チッ、ニグスたちやらかしたな、だがお前一人ではどうすることもできん。この隠蔽魔法を破ってきたってことはかなり腕の立つ魔法師のようだが、近接特化の五人相手では勝てるわけがない」


「…………」


「最初はお前から金を奪ってこのガキ共だけ売っ払う予定だったが、お前も中々いい身体付きしてるじゃねぇか。ガキ共と一緒にどこかに売っ払ってやるよ」


 ブワッッ!!


 男の言葉を聞いて私の何かが切れました。

 金を奪うだけじゃなく、この期に及んであの子たちを売る?ふざけないでください。


「そんなことさせません、あなたたちは私が倒します。覚悟して下さいね」


「な、なんだ...それは」


「母さんの身体から、白いオーラが出てる」


「綺麗....」


 私の身体から何か出ているようですが、これは大量に流れる超高密度の魔力が身体から溢れて見えるようになったもので、この状態では身体能力などが爆発的に上がり魔法力も上がります。


「ではいきますよ」


「くそっ!あの女を止めろ!たかだか魔法師だ、全員でかかれ!」


 男が言うと同時に残りの四人が私に一斉に襲いかかってきましたが、今の私にはほとんど止まって見えます。アイテムボックスから剣を取り出し、剣の腹で四人を壁まで叩きつけます。一瞬で四人がやられた光景をボスの男は信じられないとういう目で見ています。


「なにが起こったんだ、一瞬でやられるなんて」


「簡単なことです、ただ剣の腹で叩いただけです」


「そんなバカなことがあるか!それにさっきまで剣なんて持っていなかった!」


 うるさいですね、もう声も聞きたくないので男の目の前に瞬時に移動し、身体に触れ私の魔力を流します。すると男は泡を吹いて倒れ、ピクピクと痙攣し始めました。過剰な魔力を流された事で身体が耐えきれなかったようですね。

 これで全て終わりました。私は魔力を解除してレインとアリアの元に行き二人を抱きしめました。


「レイン!アリア!」


「母さんっ!俺、またアリアと二人だけになるんじゃないかって!」


「おがぁざぁん!ごわがっだよぉ!」


 レインは啜り泣くように、アリアはワンワン泣きながら私の胸に蹲ってきました。


「ごめんなさい二人とも、私が目を離したせいで....でももう大丈夫です。私はここにいます」


 それからしばらくすると二人も落ち着き私から離れました。


「ほんとは学園を見る予定でしたが、今日はもう帰りましょうか」


「「うん」」


 私たちはそのまま学園を見ることはせずに家に帰りました。





―――――――――――――――――――――――――――





「母さん、俺もっと強くなりたい!」


「お母さん!私ももっと魔法を使えるようになりたい!」


 昨日の一件があった翌日の朝レインとアリアは私にそう言ってきました。


「急にどうしたんですか二人とも?」


「俺昨日なにも出来なかった、もっとアリアや母さん、みんなを守れるようになりたい!」


「私はもう守られるのはやだ!今度は私が守る方になりたい!」


 二人は意思のこもった目でそう言ってきました。正直昨日の一件でもうダメかもと思っていましたが、私の子どもたちは私の予想以上に強い子たちのようです。









 



 








 


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