過去には戻れない。
挫折を味わったことのない人などいるのだろうか?
私は、時々そんなことを思う。
そんなときは、あぁ、自分はなんて駄目な人間なのだろうと自らを責める。
次第に、たぶん最初から無理だったのだと、正当化して甘やかす。
そうしてしばらく経って、ふとまた挑戦しなければ⋯⋯という気持ちになるのだけれど、過去の失敗が頭をもたげて、一歩踏み出すことができない。
昔はよかった。
なんでこうなったのだろう。
そんな、とりとめもないことを考える。
昔はあんなに輝いていた⋯⋯過大評価でも、以前の自分は誇らしく思えた。
全ては、過去の栄光。
昔の私と今の私は違う、昔の私には戻れない。
あの頃の君が一番よかった――――そう言われても、私は戻れない。
挫折を何度も味わって、立ち向かうことすら諦めてしまっている。
逃げてはいけないと、頭ではわかっている。
数ヶ月前、医師から言われてしまっている。このままでは危険だ、と。
その瞬間は、危機感があった。愛する子供と夫がいる。彼らを悲しませるような真似は、できないと。
医師からの指示に従い、私なりに生活を改めてようとした。
けれど、成果は見えない。数値に改善が見られないのだ。
どうして、こんなに頑張っているのに⋯⋯。
不安を紛らわそうとして、医師の指示を放棄した。
ストレスは身体によくない、我慢は身体に毒だと言いながら、また挫折しようとする自分を認めてしまっていた。
諦めの残骸が、我が家にはたくさんあった。
形から入ろうとして買い、タンスの奥に眠るスポーツウェア。
紐を結んだだけのウォーキングシューズ。
味が気に入らなかった置き換え用ドリンク。
邪魔になって仕舞ったきり、埃を被ったダンベル。
ごろ寝布団と化したヨガマット。
痩せたら履こうと買ったものの、その間に流行り廃れたスキニーパンツ。
それらすべてが、私を恨めしそうに見ている気がする。
でも、もうなにもしたくない。今のままでいい。
甘い物もお酒も、もう我慢していられない!
「パパー、またママがお菓子食べてるー」
「ほんとだねー、ダイエットはどうしたんだろうね?」
「健康診断、今度はやばいかもって慌ててたのにね」
「来年は引っかかるんじゃないのー?」
夫と子供が聞こえよがしにそう話している。
私は負け惜しみにも近いが、叫ばざるを得なかった。
「ダイエットは明日からー!」
2020/12/28
エアなわとびとか、踏み台昇降とかよくやっていました。