懐かしくて知らない街
こんにちわ!
意外と見てくださる方が多くて驚いています(*´Д`*)アリガトウゴザイマス
次は2週間ぐらい投稿できないと思います
では、どうぞ!
朝。清々しい朝。空は晴れていて、太陽が満遍なく俺たちを照らしてくれている。
...そう、この状況がなければ目覚めのいい朝だっただろう。
「あー!いい朝だね!おはようレンくん!」
朝から元気な女の子と、
「おはようございます。いい朝ですね。」
起きてすぐでも行儀のいい女の子と
「おはようございます!レンくんはハナちゃんたちにはなにもしてなかったよ!」
なんて剣が喋って...
女の子二人がタオル一枚で目の前にいるという状況じゃなければ。俺だって年頃の普通の男子だ。普段通りに二人と一緒にいるだけで緊張するのにタオル一枚なんて格好で目の前にいられたら俺の中の獣が目覚めてしまいそうになってしまう。
「...なんでタオル一枚で寝てんの?」
「お風呂入った後すぐに寝ちゃったんです」
「風邪ひくぞ?...じゃなくて!二人とも頼むから服を着てくれ!目の前にいるのは男子だぞ⁉︎襲われてもいいの⁉︎」
「いいけど?」
「いいですよ?」
いいのかよ...これまでの俺の我慢はどうなるんだろうか。
「っていうのは冗談だけど〜、子供の時に一緒にお風呂入ったことあったんだから問題ないと思うよ?」
「あ、ホムラさんもレンくんと一緒にお風呂に入ったことあったんですか」
「どっちとも入ったことあるよ?...いやそういう話じゃなくて!あーもう!はい、服着て!ほら!いやここで着替えないで!男子いるでしょ!」
まずはハナに洋服を押し付けようとした。これが失敗だった。ホムラやハナも武術を護身用に習っているので反射神経はいい方なのだ。そのため俺が押し付けようとした洋服を避けるのなんてたやすい。っていうかやろうと思えば一般人でもできる。しかしハナはそれを完全に避けられる状況だったにもかかわらず、俺の前のめりになった体をそのまま抱きしめて後ろに倒れたのだ。俺は片手をハナの頭の後ろに回し衝撃から守り、片手で自分の体重を支えて対応する。
「危ないっ!ハナ大丈夫か?怪我はない?」
ハナは顔を赤くしながら、
「はい、...大丈夫です」
と答えてきた。珍しいな...ハナが顔を赤くするなんて。とその時、ドアがノックされた。
「給仕係です。入ってもよろしいでしょうか?」
そこで気がついた。
...自分の今の体勢がハナを押し倒している格好になっていることに。
マズい。すごくマズい。この状態で入ってこられるのは非常にマズい。この時間に給仕さんが来るということは朝食だろう。ハナが俺の体の下から抜け出し、女子二人が急いで着替え始める。...当然俺は目を塞いでますよ?
「すみません、ちょっと待って下さい!」
すると不思議そうな声で
「かしこまりました」
と返ってきた。何かおかしいことしたかな?
ハナとホムラが着替え終わったと言ってきたので目隠しを外して給仕さんに入って大丈夫だと伝える。
「朝食をお届けに参りました。パンがよろしいですか?ご飯がよろしいですか?」
「私はパンでお願いしまーす!」
「じゃあ私はご飯で」
「俺もご飯がいいかな」
俺は子供の時はよく朝にパンを食べていたが大きくなってくるとご飯の方が好きになっていたのだ。なんというか...腹持ちがいい、というのだろうか?
まあそれはともかく、テーブルの上では給仕さんが手際良く料理を並べていく。野草や焼き魚、そして果物の果汁や様々な調味料を混ぜて作られたという飲み物(野菜ジュースみたいな感覚。普通に美味しかった)などが並べられていった。全て並べ終わったところで、お給仕さんは部屋から退出していった。
...失礼なのはわかるんだよ。
うん。わかるんだけどね...目がそっち行っちゃうんだよ。ハナとホムラは急いで着替えたせいで着物の帯とか色々ゆるくなってしまって、若干はだけてしまっているのだ。
...食べる前にさりげなく言っておこうかな。
「二人とも...着物若干はだけてる」
さりげなくとはなんだったのか。
俺はどうやら自分の心を偽っていたようだ...
はい。すごく眼福です。とても眺めがいいです。俺は物凄い変態ですありがとうございました。
...当たり前だが、どれだけ開き直っても、変態な俺の目はその若干はだけている浴衣から見える胸や艶やかな足から離れない。年頃の男子だもんね。しょうがないね。それはハナたちも気付いていたようで、顔を赤くしながらこっちを向いてきた。
ーあ、怒られるなこれー
しかし、次の瞬間にハナの口から放たれた言葉は普通の人が聞いたら耳を疑うような発言だった。
「知ってますよ。...フフッ。顔を赤くするレンくんを見たいだけです。幼年学校くらいの歳の時に一緒にお風呂入った時だって、顔を赤くしてくれなかったじゃないですか。それに、どれだけ急いでても着物の着かたを失敗するわけないじゃないですか。普段から着てるんですよ?」
そうだね。ごもっともだね。5歳くらいの時から
和服、もとい浴衣を普段着として着ているハナがそんなミスをしでかすわけがないよね。
「そっか。そうだね。うん。じゃあさっさと朝食を食べようか。...ねぇ、さらに脱ごうとするのやめよ?」
「レンくんになら何を見られても大丈夫です!」
「いや俺が大丈夫じゃねぇよ!」
「エッチです!エッチ!レンくんに手を出すのはダメー!レンくんは私と契約してるんです!」
そう一人と一本に言われて仕方なくという感じでハナは浴衣を着直し始めた。
「「いただきまーす」」
と言って食べ始める二人の会話を聞いてホムラは思った。
【わざとじゃなく着かたをミスったなんて、口が裂けても言えない...】
なんとも言えない自分だけの秘密を作ってしまったホムラであった。
この街は大きくもないが小さくもない中途半端な大きさだが、活気があって賑やかだ。そんなこの街を依頼者宅まで歩いていると、ホムラが喋りかけてきた。
「ねえねえ、この街の依頼って何だろうね?受付の人が言うには人助け系だって言ってたけど」
一般的には依頼は大きく分けて二つある。
一つ目が討伐系。文字通り害獣や魔物を倒すような依頼だ。この形の依頼が一番多い。
二つ目が人助け系。人を探したり、物を他の街まで運んだりする。たくさんの街へ行く冒険者だからこそ出来るようなものだ。
この二つのタイプの依頼の危険度は天と地の差だ。戦闘になる確率は依頼にもよるが人助け系の方が圧倒的に低い。しかし戦闘系の方が報酬がいいので一長一短なのである。
報酬の討伐系か、安全な人助け系か、と言った感じだろうか。
「聞いてみるまでわかりませんね...詳しいことに関しては聞いてないんですか?」
「それがねー...よくわかんないんだー。人助け系なんだけど戦闘になるかもしれないし、危険度は最高段階なんだって〜」
「...そんな危険な香りがする依頼受けちゃったの?」
「ハナとレンが魔剣持ってるし大丈夫でしょ!」
「そういう問題じゃないよな...」
「魔剣だって万能じゃないんですよ!」
魔剣自身がこう言ったらおしまいだと思う。
しかし間違ってはいない。いくら魔剣を持っていると言ったって俺たち初心者なのだ。
いきなり最高難度とか行って大丈夫なんだろうか。まあ、受けてしまった以上行くしかないのだが。
しかしまあ街が変わると建築もまた変わるものだな。
俺たちがいたフソウは木造がほとんどだったが、キューラルはれんが造りがほとんどだ。
淡い朱色の特徴的なレンガで出来た壁。
見ていると何か懐かしい感じがする。...初恋の女の子に告白した場所に似ている...のか?記憶が曖昧になりどんどんぼやけていく。
映像が頭に流れてくる。
「...ごめんね、レンくん。私...」
「***ちゃん待って!***ちゃんをどこに連れてく気だよ!***ちゃんを離せ...」
...ああ、小さかった俺はこのあと突き飛ばされて気を失ってたんだっけな。
どうしてもあの女の子の名前が出てこない。
俺にとって初恋の大切な人なのに...
「...くん!...ンくん!レンくん!もう依頼者さんの家の前に着いてるよ!おーい!」
最近こんなことが増え始めた気がする。最近と言っても二、三日前からだが。昔の、忘れていた大切な記憶を思い出してきたのだ。
...そんなことより依頼だ。頬を叩いて気を引き締める。
「ん?あ、ほんとだ。よし...初の依頼、頑張るぞー!」
「「おー!」」
その後ろではハナが不機嫌そうな顔でレンを睨みつけていた。
ー依頼者宅ー
「よく来てくれたね。さ、入って入って。」
出迎えてくれたのは優しそうな中年くらいの男性だった。
応接間らしき部屋に入った瞬間にいきなり重苦しい雰囲気が部屋の中に満ちた。危険度が最高なだけあって相当真面目な話なのだろう。依頼主さんに席に着くことを勧められてから席に座る。
「...依頼というのは?」
「あまり大声では言えんのだがな...この都市は騎士によって治安が維持されていることは知っているね?」
よくある話だ。大きな都市などは民衆だけだけでは治安が保てない。そのために騎士を配置して治安を保つという仕組みなのだ。
「その騎士がどうかしたんですか?」
「...最近、行方不明者が増えているんだ。このキューラルに限らず、他のグライフ公国の都市でもね。しかし、ここから比較的近いフソウの都市には被害が出てないらしい。」
「それって...」
「そう。グライフ公国の騎士が何か関係あると私は睨んでいる。もうこのキューラルだけでも二十人はいなくなっている。...なんとか、探りを入れられんか?見たところ、そこの二人は魔剣使いとお見受けしたが、なんとかできないだろうか?」
「わかった。やってみるよ。」
この無茶には流石にハナとホムラも黙っていなかった。
「バカなんですか⁉︎なんでこうも危険な仕事を受けるんですか⁉︎」
「そうだよ!この依頼は危険すぎる!降りよう!...ね?」
「さっきも言ったでしょ⁉︎私だって万能じゃないんだよ?」
「ダメだ。降りる気はない」
「なんでですか⁉︎」
「なんで⁉︎」
...綺麗にハモったな。まあ、俺は本当に降りる気はない。
「だってもう二十人もいなくなってるんだろ?ほっとけないよ。そのせいで何人も悲しんでいるだろうし、助け出すための足掛かりにでもなったら良いかなって」
「ハア...筋金入りのお人好しですね...でもレンくんはこうなるとどうしても受けますからね...受けるんでしょう?手伝いますよ」
と少しムスッとした顔で言ってきた。凄まじい不意打ち。恐らく、今俺の後ろには『ズキューン‼︎』という擬音が響いているだろう。
「そうだね。本当にお人好しだね。でもまあ、...手伝いはするよ。お代は一日お出かけデートだよ?」
「死なない程度に留めてくださいね?」
この二人は自分たちが可愛いのを分かっててやっているのだろうか?残り一本も女の子の姿であれば危なかった。いちいち仕草にドキッとしてしまって心臓が飛び出てしまいそうだ。
「え⁉︎そんなのありなんですか⁉︎」
それでは不平等だ!ということでハナが黙ってなかった。
「お代を払え、と?」
「私も...」
「割り込むようで悪いんだが、急ぎの話なのだ。これはグライフ公国の都市を通った冒険者たちみんなに依頼を出している。他の街ではもう調査が始まっているようだ。キューラル中央部まで馬車で送るから、よろしく頼む。絶対に、悪事を暴いてくれ。」
「...わかりました。あなたの堅い決意。しかと受け止めました。やれるだけやってきます」
部屋から出ると、馬車が用意してあった。
その運転手がオイデオイデと手を動かしている。
「あんたたちが依頼を受けた冒険者さんたちだね?おっと、自己紹介はいらないよ。知らなければ答えられないからね。」
...馬車の運転手さんでさえ尋問される覚悟なのか。ますます気が引き締まる。
「お願いします」
「はいよ」
その短い会話とすら言えないやりとりを最後に、そこからキューラル中央部まで会話は一切無かった。馬車の荷台に乗り、キューラル中央部へ向かってただただ進んでいった。
ー???ー
「***ちゃん!僕は***ちゃんが好きだ!まだ子供だけど、僕は君と一緒に居たいんだ!」
そう言われた少女は、少し困惑した表情でこう答えた。
「ごめんなさい、それは出来ないんです。だって...」
躊躇する少女。言っていいのか躊躇った後、決意が固まったようでしっかりとこう答えた。
「私、人間じゃないんですよ?」
その時の顔がとても悲しそうに見えたのは錯覚だろうか。しかしこの少年にはそう見えた。
その後すぐにたくさんの大人が来て、あの少女を連れて行ってしまった。
「***ちゃん待って!***ちゃんをどこに連れてく気だよ!***ちゃんを離せ!」
「なんだ⁉︎このうるさいガキ!」
「ぐっ...!」
思いっきり突き飛ばされた少年は壁に頭をぶつけて気を失ってしまった。
...少年の名は、『レン・ガードナー』。
彼にはこの後の記憶が一切無かった。
そして、あの少女については資料も、そして存在を証明できるものすら全て無くなっていた。
高校生なんでテストがあるんですよねぇ...
すみません、後2週間くらい投稿できません。
待っていてくれたら幸いです(´;ω;`)
ではまた2週間後に!