リーズフリオ・グリーフベルア(中)
高いところは気持ちがいいからというのもあるが、そもそも大好きだ。柱に巻き付いた街がゆっくりと近付いてくるのを柱の天辺から何度も見守っていた。風車が回り、ゴンドラが上下する。どこかの風車の動きがおかしいのを見つけては、ヘイズに連絡を入れたりする。そんな毎日。
そんな毎日だった。
日々の身銭を稼ぐには十分で、支店でたまにやってくる所長と酒を飲んだり、ほとんど働かないユズに文句を言ったり、背のでかい後輩の面倒を見たり――
「リグ……」
振り返るように、メルは首を捻る。
肩越しに三軸風車の残骸が見えた。
と、何か人影が見えた。
両手に大量の電精槽を抱える背の高い人影。凄い速さで近付いてくると思ったが、そもそもメルの周りが遅くなっているだけ。
足早いな。
そんなことを考えたその瞬間、体が吹き飛んだ。
え、と思ったときには空は夜に戻り、体に覆い被さる重さを感じた。
「んな……」
「先輩!!」
「リグ……」
「てめぇ! 途中停止できねぇんだぞこの式! どうしてくれるんだ!!」
メイリードの叫びに、メルは思わずリグを庇うように体を起こし前に出た。
「先輩ってば!」
リグの声も届かない。自分はまだ動けるということに、さほどの驚きはない。思わずリグを守ろうとした自分を疑問に思うことはない。だがメルは、放心していた。
彼女にとってはそんなことは瑣末なことだった。
重要なのは、もっと別のことだ。
「何だよ……」
ぼそりと呟く。
「嘘をつけよ……何だよそれ」
頬を涙が伝うのが分かった。
「止まらないって……止まらないって何だ!! それじゃ、レイナが死んだのも! ユリシーズが消えたのも! 全部あいつら自身が悪いのか!! ふざけんな!! 錬金術の式ぐらい止めろぉぉ!」
己に覆いかぶさるリグからすり抜け、走り出した。
「おわ! 何キレてん――」
近場にあった電精槽が悲鳴を上げてエリクシルを吐き出し始めた。同時、メルはもう一度音の壁を越えていた。
メイリードは式の展開中をとんでもない速度で殴り飛ばされ、なすがまま吹き飛ぶ。
「ばかやろう!! てめぇ! 暴走するぞ! 回ろ――」
メイリードの声は爆音に掻き消された。
あまりの音に、一瞬目の前が真っ白になるようなそんな光のような衝撃のような熱のような爆音だ。
勢いで吹き飛ばされたユズは空中でそれを見る。メルは、己の体が今どこにいるかもよく分からず頭上の爆音に驚き顔を上げていた。
少し離れた場所でリグが全部を見ていた。
メルの頭上を中心とした円形の式がリグの目でも分かる炎を上げた。いきなり空が燃え上がり、そしてすぐさま炎は回り出した。先ほどの爆音はただの開始の合図。
今目の前でそんなものとは比較にならない何かが渦巻いているのがわかる。
円の中心へと吸い込まれ、一瞬にして炎は業火となり、次の瞬間、世界は真っ白に染まった。
何もかもが一瞬だった。
世界は白く染まった。
柱が悲鳴を上げていた。
体半分を失いながらも何とか己を保ったユズが見たのは、まるで世界の終わりのような光景だった。
■
一七番地は、最初メイリードが放ったあの斬撃のようなもので縦にひび割れており、それが今の爆発で完全に亀裂となったのだ。
街が裂けていた。
街を支える支柱が、悲鳴を上げている。
バランスが崩れ軋み、崩れ落ちそうになっている。まるで谷が生まれていくように。亀裂から吸い込まれるように、街が落ちていく。
「……メイル……リグちゃん……」
夜だが辺りには火が広がり、視界は皮肉にも十分だ。
そんな中、リグの家はすぐに見付かった。
広い庭が燃えているのも見えた。
亀裂はちょうど庭の中央を走り、柱まで続いている。
亀裂の基点のお陰なのか、今はまだ崩壊はしていない。
だが崩れるのは時間の問題だろう。
世界が軋んでいる。
「あ!」
庭先に、必死にしがみついているリグを見つけ、ユズは風に乗る己の体を何とか揺らしながらリグの元へと落ちるように下へ。
高いところがだめな彼女が身動きを取れるわけがない。
急いで助けなければ、取り返しの付かないことになる。
辺りを見回すが、メルの姿は見えずメイリードの姿も見えなかった。
――私が助けないと!
体を必死に伸ばし、ユズはリグの元へ落ちていく。
と、しがみついて動かなかったリグが動き出した。落ちるのかと思ったが、そうでもないらしい。
「リグちゃん! 危ないから動かないで!」
だが、制止は届かずリグは不安定な足場を歩き出した。
恐怖で歩けるはずなんてないのに。
一体何が。
だがすぐに答えが分かる。
リグは三軸風車の元に向かっているのだ。あの場所には……
風が吹き荒れ、とうとう庭にも大きな振動がやってくる。
がくりと高度を落とし、一瞬崩れるのかとひやっとさせられるが、まだ街は形を保っていた。
だが三軸風車が大きく傾いだ。そして、覆っていた布が風に煽られて舞い上がる。
月明かりの青と、炎の赤に染め上げられ。撒き上がる埃と煙を物ともしない輝き。
それは、体中を貫くほどに衝撃的な色だった。
ユズは、それがどれだけ己が消えようと、何度生まれ変わろうとも、絶対に忘れないだろうと思った。いや、確信していた。
「……綺麗だ」
流麗な曲線を描き、それはゆっくりとひとつになり点になる。
まるで針のようにも剣のようにも見えるその姿は、まさに目的のある道具そのもの。誰に見せてもすぐに用途がわかる、そんな道具としての機能美の集大成。
ただひとつの目的のためだけに作り上げられたそれは、誰がどう表現しようが足りないほどにストイックで、力強く、そして何よりも美しい。
ただ空に向かって飛ぶための道具だと、確信できる。
絶大な意思と、莫大な知識と、途方もない執念の塊は、炎の赤に輝き、月明かりの銀色の輪郭を浮かび上がらせ、崩壊する街の中で力強く輝いていた。
リグはそこに向かっていた。
何度もよろめき、揺れに翻弄され、炎に煽られ、彼女はロケットに向かっていた。
もうちょっとで近付く。もう少しでリグの元に。
ユズは手を伸ばす。
「リグちゃん、危ない!」
ようやくユズの声が聞こえたのか、リグは振り返った。
その顔が喜びと安堵を浮かべるのを見て、ユズはほんの少しだけ安心した。
まだ彼女は自暴自棄にはなっていないのだと、安心した。
だが違った。
「ユズ先輩! 先輩を! メル先輩を探してください!!」
「……はぁ!?」
いきなりの言葉に、着地に少し失敗し、斜めになった床にユズはたたらを踏みながら倒れかけ。
「早く! ロケットを飛ばします! 急いで!」
「んなっ!?」
■
メルは走っていた。
爆風に吹き飛ばされ、転がった先が運悪く亀裂の中だったのだ。
そのまま落ちかけ、何とか一七番地の腹の辺りで落下は止まったのだが、状況はまったく芳しくない。すでに一七番地の腹はひしゃげ始めた支柱の影響で崩れ始めていて、跳び付いた先から崩れていくようだった。
それでもなお彼女は落下せずに済んでいた。
まるで漫画の主人公みたいだ。そんなことを考えながら、崩れ落ちる瓦礫から瓦礫へと飛び移る。こんな曲芸が思ったより簡単にできるのが納得がいかない。大体、落ちてる物体に掴まってもう一度飛ぶことができるなんて。
試したら上手く行ったからいいものの、行かなかったら瓦礫と一緒に真っ逆さまだっただろう。
いくらかの時間をかけてメルは街の上に顔を出した。そしてようやく自分が感じていた違和感が何か理解する。
まだ誰一人として人を見ていない。
最初は夜だからだと思っていた。
だが違う。
この騒ぎで家から出ない人間がいたら、それはもう動けない物理的な理由がある以外に考えられない。
だというのに一人も目にしていなかった。
崩れる一七番地の中を、メルはできるだけ崩壊を食い止めるように補強を施しながらリグの家へと急ぐ。
エリクシルが異常に少なく補強も満足にできないが、ないよりはましだと言い聞かせながら走る。
いくつかの家を飛び越え、何本もの通りを横切り、見慣れてはいなくても記憶にある街並みが壊れていくさまを目に焼き付ける。
これが自分が空を望んだ結果だというのか。
あんまりじゃないか。
だが、少なくても責任の所在が自分にあるうちはいい。
罪滅ぼしはできるし、センチメンタリズムにかまけて自己嫌悪と後悔に沈んだ毎日も送れるだろう。
前を見た。
ようやくリグの家が見えてくる。そして庭の上空で燻るように空気が、空間が焼けているのが見えた。
時間回廊は、途中で止めることができないと言った。
ユリシーズが消えたのも、起動したファルも、式が起動した時点でもう死ぬことが決まっていたことになる。
自分のせいではなかった。
しかたがなかった。
最初に起動したのは、自分ではない。
自分は悪くない。
そう考えそうな気持ちが出てきそうになっては、何度もその胸糞悪い思考に吐き気を催してえづく。
――くそっ
自分の非力さ、無知さが招いた結果に変わりはない。
だがそれを、仕方ないと慰められるのも、しょうがないと諦めるのも嫌だった。少しでも、一瞬でも罪の意識が軽くなりそうになる自分が嫌で嫌で仕方がない。
「くそっ! くそ!!」
力強く飛ぶと庭が眼下に広がった。
亀裂は庭から始まっており、未だに崩壊は免れているらしい。
ふと目に留まったのは三軸風車。いや、ロケットの発射台だ。
夜の闇はすでに炎と月明かりに暴き出されている。その明るさの中にあってなお、ひとつ温度の低い色がある。ニビ色かと思ったら、銀の輝きにも見える。耐熱金属があれほど流麗な輝きを放つことが未だに信じられない。
空気抵抗を極限まで減らすための鏡面磨きと、計算され尽くしたシルエットが作り出す光と影。
それらが今まさにこちらを見ている気がした。
「あ……」
体中に電気が走った気がした。
ただ空に行くために作られた、それだけの物が言っているのだ。
叫んでいる。
静かに重く響く声で。
さぁ、私を空へ連れて行け。 と。
鉄の声を聞いたことがある。
風車の歯車を継ぎはぎし、曲がったフックを取り換え、経年劣化したシャフトを取り換えて。
ずっと油と錆の中で呼吸をしていると、たまにそういうことがある。
鈍く腹の底に響くくせに、嫌に甲高く頭に響く音。
金属の、鉄の声だ。嬉しそうに、哀しそうにその音は響く。
リグは、最初からその声が聞こえているようだった。
彼女は鉄と会話し一緒になって風車を弄っていく。
何せ只の一度だって、彼女が締め直した螺子は緩むことはなく、ギアは欠くことはない。
そのリグが思想し、設計し、組み立てたロケットがそこにある。
「ああ、そうだ。そうとも」
それは空に行く物である。
たぶん言葉が分からない子供に見せたって理解するに違いない。
それほどに一途で力強い思いが篭もっている。
「リグ!」
「先輩!」
分かっていた。見えてなくても、分かっている。
リグは絶対にそこにいると。
何故だか分かっていた。
操縦席の出入り口から顔を出し、リグが大きく手を振った。メルはその目の前にゆっくりと着地をする。
「先輩、早く! 準備は終わりました。あとは操作を先輩が覚えるだけです!」
メルは頷いてリグの横をすり抜けると、操縦席に乗り込んだ。何度か入ったことがあるが、何故だか空気が違うように思える。変な圧迫感に周りを見回す。
「お前ら……」
もののけたちが座席の背後に広がっていた。
今、座席はロケットが上を向いているため、背を地面に向ける形になっている。
下にあるロケットの後方にもののけたちは身を隠すようにして集まっていた。
「残念だが、我々を使ってもらうよメイルジーン。我々は行かねばならぬ理由ができたから」
「先輩、急いで。いいですか、何度も説明できないですから一度で覚えてくださいね」
「あ、あぁ」
リグの勢いに、思わず頷く。
もう後戻りはできないと、そう言われた気がした。
「メイル!」
ユズの声にメルは顔を動かす。
リグの背後にユズの姿。いつもの姿に戻っていた。
「行ってくるよ」
「私も一緒に行く!!」
「だめ」
ぴしゃりとメルは言い放った。
「メイルぅ!! 私を――」
「リグ、説明を」
「え、あ……はい」
一度だけリグは申し訳なさそうにユズに視線を送ると、また説明を開始した。
計器の読み方から、進行表の確認の仕方。エリクシル残量計の不備や、速度計が使えなくなったこと。
「どうして?」
リグの手が入ったものが、そんな不備だらけだというのが信じられず思わず口から疑問がついて出てしまった。
「速度を計るための基部は柱のどこかに設置しなきゃいけないんですけど。あ、これテスト用の小型です」
そう言って彼女が取り出したのは、丸いスイッチのようなものだった。
それを掌に乗せると計器のひとつが動いた。中央にある、小さなメーターだ。
「こっちから信号を出して、ロケットが受信すると移動速度によって信号の間隔が変わったりドップラー遷移を起こして波長が……あー、とにかく距離や速度が分かるんです。これがないと意味がない物です。本当は、柱の天辺に高出力のものを置きたかったんですが」
「……そうか。ま、間に合ったら置いてよ」
「そうですね。こっちは水平計です、正確には柱に対してどれだけ傾いているかを測る物です。これが地面だと思ってくれて大丈夫です、この棒がロケット自身ですね。それから、こっちの数字はただの時計です。ですけどこっちの進行表と連動しています。こっちを動かすと目覚ましになります。進行表の好きなところに合わせてベルを鳴らせます。寝るときとかに使ってください」
「そんなに時間かかるの?」
「本当なら何日もかけてゆっくり速度合わせたいところなんですよ。急ぐ分、減速をしないといけないし細かい調整も多くなるから……。大体起動合わせで半日強ぐらいだと思ってくれて大丈夫です。食事は三食分あります。水も」
リグの説明は続く。
だがその間にも、街は崩壊し、少しずつ庭にもその手は伸びてきていた。
揺れは酷くなり、本当にこれで発射などできるのかと心配したときだ、メルは操縦席の出入り口、リグの肩越しに一番見たくないものを見た。
「っ! メイリード!!」
「え!?」
「見つけたぞ、阿呆ども!」
空を飛ぶ彼女の手に起動している錬金術が見える。
「……街を支えてるのか」
ようやく、落ち行く瓦礫を足場に飛び跳ねることができた理由に納得がいく。
本当にバカバカしくバカげたバカに盛大な錬金術だ。力強く、容赦なく、強大な錬金術だった。思わずそれに息を呑む。
一七番地の直上、二一番地の腹が炎に赤く染まった空を背後に、メイリードがこちらを見下ろしている。
「そのまま人命救助でもやってろ!」
「もう終わったっつーの。すでに街の人間は避難済みだったみてぇだしな。人っ子一人いやしねぇ」
「……」
どういうことかは分からないが、とりあえず死人が出ていないのはいいことだとメルは聞き流す。
「さぁそのロケットから降りろ。でなければ、街ごと落とす。基礎部分はすでに掌握したからな。後ろの柱との隙間に綺麗に落としてやってもいい」
「はん、ここまで来てまだ邪魔しようってのかよ。よほど暇なんだな!」
メルはリグを押し退け、操縦席の出入り口から身を乗り出すと拳を振り上げながら叫んだ。
「てめぇこそ、こんな状態でまだ諦めねぇのかよ!」
「このロケットを見て、そんなことが言えるなら、やっぱりあんたとは何も語ることはない」
「くそが! ぜってぇ邪魔する!」
「だから何でだよ!」
「お前、帰ってこないつもりだろうが」
空気が止った。
街に広がる炎すら、一瞬動きを止めたのではないかと、そんな錯覚に落ちるほどに、その瞬間は、誰の耳にも衝撃的だった。
まるで、大切な物がどこかに行ってしまうのを嫌がる子供の駄々だ。
「な、に言ってんだよ。帰ってくるし。あんたには会いたくないけど」
何とか意識を取り戻して、メルが叫ぶがその声は、まったく勢いがなくなっていた。
「会う会わねぇとかそんなこたぁどうでもいい。帰ってこねぇお前を、帰ってこれない乗り物に乗せるつもりはねぇつってんだ。おとなしく降りやがれ」
結局誰よりも、もしかしたら作ったリグよりも、メイリードこそがそのロケットの本質を見抜いていたのかもしれない。
握り締めていた拳はいつしか力をなくしていた。
リグも説明を続けられず何も言えないままメルを見上げている。ユズだけがその空気の中、動いていた。
メイリードに気が付かれないように静かに背後に回り、彼女を捕らえようとした瞬間。
ユズはそれに気が付く。
崩れた屋敷の付近、気絶したままのモモを抱きながら、アーセルが崩れかけた街に必死にしがみ付いているのを。片手しかない彼女はそのたったひとつでモモを支え、歯と足だけで斜めに傾いだ街にしがみ付いている。
「モモちゃん!」
思わず叫び、ユズは走り出す。
もう体の半分以上は吸われたあとだ、物理的に体が小さく速度が出ない。
ユズの叫びにリグは一瞬だけ視線を向けると、すぐにメルに向き直る。
だが、彼女を咎めるようにメルが叫ぶ。
「リグ、アーセルが!」
「先輩はこっちです」
そう言って、リグはメルを操縦席に押し込めた。
「あんた!」
「早く。もうロケットが飛べるタイミングは幾分もありません。説明も足りないですが、しょうがないです。あとは、いくつかものけさんたちも知っているので聞いてください。基本的に方向調整などは進行表に合わせて自動で行われます。だから進行表だけは間違わないように」
「あんた、何を言ってんの! 自分の母親が」
「先輩だって同じじゃないですか」
「う……」
何も言えず、されるがままにメルはシートベルトを着けられていく。
「最初の加速が終わったら、このベルトは取っていいですから、それまでは我慢してください」
「てめぇ!! メイル!!」
「発射シーケンスだけは、外部からしかで――」
爆音が響いた。何もかもが倒れるような感覚。
床に縛り付けられたようになったメルは、まだ開いてる操縦席の出入り口から外を見た。柱が倒れていく。
いや、街が崩れていくのだ。
リグの肩越しに、メイリードが憤怒の表情で同期陣を振り払ったのを見た。
ほんの少しだけ動き出すのは遅かったが、庭全体が引き剥がされるように宙に舞った
まるで気軽にフリスビーで遊ぶかのように。
街が引き剥がされ、そして吹き飛んだ。
風に乗ったわけではないが、柱との相対速度をなくした街はゆっくり、だが確実に柱の後ろへと流れていく。
先ほどメイリードが言った通り、丁寧に柱と柱の隙間に落ちそうな軌道だった。




