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風車のある風景  作者: 神奈
本文
21/46

メル


 締め付けられるような苦しさに飛び起きた時間は、もうすぐ昼前になるかといった時間だった。

 苦し紛れに、タンクトップの首元を引っ張る。

 元々くたびれたタンクトップの首元は、それ以上伸びることは無く、ただ首の後ろが痛んだだけだった。

 溜息混じりに頭を一掻きすると、メルはベッドから飛び降りる。古臭い借家の床が、彼女の体重を受けてかすかにたわみ、抗議の音を上げる。

「早いけど、出かけるか」

 つぶやきは、真っ暗な部屋に埃と一緒になって積もった。


 明け方だろうが、昼だろうが、この世界に温度の変化は殆どない。

 日当たりがいい場所と、永遠に影になってる場所のほうが寒暖の差は激しい。

 雲海を突き抜け、空へと伸びる柱に巻きついた街。

 メルが住む街にいたっては、雲海からさらに五百メートル程上った所にある。


 本来、タンクトップ一枚で過ごせるところではない。

 その気温を保っているのは、この世界の根幹を支えている錬金術のひとつだ。

 物理法則を無視した超巨大な柱に、更に重量耐久度を無視した街がつるの様に巻きつき広がっている。

 

 そして今も、街は上へ横へと広がり続けている。

 そんな積層都市の下層、腹と呼ばれる場所がある。

 初期に作られた街の基礎部分から釣り下がるように広がっているいわばスラムのような場所だ。

 治安が悪いわけではないが、そもそも酔っ払って足を踏み外した瞬間、死ぬようなこの場所にまともな人間は住んでいない。

 スネに傷があるものか、そうでなくてもまともな家に住めないほど貧乏であったり、管理局に登録されていない住居が多いため、身を隠すのに便利なそういったものたちが住む場所だ。

 ただでさえそんなカオスな積層都市の最下層に、管の如く長細い集合住宅がひとつ張り付いている。

 その集合住宅の床。街の底。

 そこにメルは逆さに立っていた。

 

 彼女を支えるのは、両足にある接着の呪い。

 錬金術である。


 渇いた静電気の立てる音のような電精の歌を聴きながら、メルは上下逆さになっていることなど全く意に介さない動きで、借家の床を歩く。

 あまりに自然な動作。

 彼女の髪の毛が重力に引かれていなければ、上下を勘違いしそうな程だった。

 風で押さえつけられていたよれよれのタンクトップが重力に引かれて落ちそうになると、なれた手つきで彼女は服の裾を掴みそれを押さえる。

 そして、ふと寝ぼけ眼のまま、己の足を見た。

「……アレルギーは相変わらずか」

 彼女の足は、黒く焦げていた。電精への過剰反応。

 まだあの悲鳴は、耳から離れない。


 誰かが言っている。

 いや自分で判っている。

 自覚して、絶望して、彼女の体にはまた焼け焦げた跡が広がる。

「仕事用の錬金術ばかりだったからね。肩慣らしぐらいしておかないと」


 ――自覚している。理解している。


「リグに迷惑かける訳にはいかないし」


 ――それは、誰も救えないと。


 首を振って思考を追い出す。

 大丈夫だと言い聞かせる。

 気が付けば、接着の呪いの切り替え速度は速くなり、足元からはせわしなく電精達の声が聞こえてくる。

 雑多に広がる街の腹を、メルは走り出していた。

 逆さになって、街の最下層を錬金術の高速切り替えを行いながら進む。右足、左足、右足、左足。


 ――大丈夫。

 迷いは未だにまとわり付いている。

 もしかしたら。

 あの星へいける速度が出れば。

 この迷いを置き去りに出来るだろうか。

 前へ一歩。前方へ蹴りだすのではなく、体を押し付けるようにして前へ。


 ――今度は失敗しても、悲鳴を上げるのは私だから。

 ならばもう、恐れることは無い。

 もう他人を傷つけることは無い。


 街の端が見えてくる。


 視界が風の音と共に広がった。


 両足に性能増幅、あわせて代謝強化、体の慣性操作と重量軽減、全てを一度に、そして一瞬で起動させた。

 身体に刻まれた錬金術の式が叩き込まれた電精を貪欲に消化し、獣の咆哮のように鮮烈に動き出す。

 体中に引きつるような感覚。

 肌が焦げているのを自覚しながら、メルはそれでも笑った。

 炭化した肌に流れる電精は、通常よりも抵抗を減らされ、まるで暴れ馬のように大量に流入する。

 電精は更に彼女の肌を炭化させ、そして更に抵抗が落ちて電精が流れる。

 終わり無いループの果て、滝のような非常識な電精が彼女の身体を駆け巡った。

 だがそれでも問題など無いとばかりに、彼女は笑っていた。


 一歩。

 蹴りだすように前へ。

 目の前に広がったのは真っ青な空。

 街を完全に抜けた。次に踏み出す足の先に、街はない。

 そして、

「っは――」

 メルは飛んだ。


 挿絵(By みてみん)



 強い風が吹いている。それでも、耳に届く音は心臓の鼓動の方が強かった。


 高く昇った日を見下ろすように逆さのまま、体中に走る焼け焦げた跡の痒みに顔をかすかにしかめる。

 ゆっくりと、黒焦げの身体を風に浸してメルは空に浮いている。

 重量軽減の錬金術は彼女の重量を十分の一程に軽減していて、身体を広げて風を受ければ簡単に舞い上がる事ができた。

 ――昔は結構こうやって街を移動してたっけ。


 振り返れば、眩暈がするほど大きな柱と、それに巻きつくように広がる街が見える。

 一番近くに見えているのは、自分が住む風上街二二番地だ。

 ちょうどその二二番地の真下、螺旋を一回り下った所にあるのが一八番地。

 そこからもうひとつ九〇度ほど下った街のあたりが一七番地だ。

 観光地としても有名な二二番地と比べると、随分と小さい高級住宅街。

「さ、早いけどリグの家でも行こう」

 体を傾け風にのり、メルは空を飛ぶ。


 ■


 一七番地には、この柱の中で一番のものがひとつある。

 それは世界を牛耳っているといっても過言ではない総合製造業トップのベルフレア社CEOの家にある庭だ。金持ちは多々存在するが、これほどの規模の庭を所有するのは現ベルフレア社CEOのグリーフベルア家だけであろう。

 大きさは家九件ほどが余裕で立つほどで、ただでさえ土地が無いこの世界では、異例どころの騒ぎではない。

 その庭の、いや家全てのことを一手に引き受けるのが、今現在庭に居る小さな女の子であった。

「はっ!」

 彼女は日課になった修練を庭先で行っていた。昼前の高い日の光に、うっすらと滲む汗が光を反射している。

 身体を沈みこませ、両手を前へ、円を書く動きでそのまま背後に身体を反転、重心を片足に預けもう片方の足を振り上げる。

 風が切り裂かれるような音が庭に響いた。

 そのまま、まるで蝋人形になったかのように停止。

 呼吸が十を数え終わった後、ゆっくりと動く。

 軽く、そしてゆっくりした動きだったがその振り上げた足が床に着いた瞬間、ズシと床を震わすような重たい揺れが走った。

「……あー」

 失敗したとばかりに、肩を落とした彼女は自分のふがいなさに大きく息を吐き出した。

 床の軋む音は、まだ連続して響いている。

 彼女の足を見れば、かすかに電精が走る静電気のような光りの筋が走っていた。

 錬金術が起動しているのだ。

「うまくいかないですね……」

 それから数秒をへて、ようやく床の軋みは収まった。

 起動していたのは重量増加、慣性増加のふたつ。

 体重のない彼女が蹴り足に重さを持たせるための物だった。

 物理法則を書き換えるような技術であるため、スイッチのオンオフのように簡単に効果を停止したり起動したりすることは容易ではない。

 蹴り足に重たさを乗せるという発想までは良かったが、それではそのままの足で床を踏み抜いてしまうのだ。何度も試してみたが結局、重量増加量を減らす方法以外に解決方法はなかった。

 肩越しに振り返った先、彼女は自分がタイミングを見誤った結果をみる。

「錬金術は、万能じゃない……ですね」

 圧縮木材に開けられた足型の穴は消えない。


「おや?」

 モモは、ふと影がよぎったような気がして真っ青な青空に目を細める。

 そこに何かが飛んでいるのが見えた。

 妖精族でも飛んでいるのか、と首をかしげるがそれにしては随分大きいような気もする。

 遠近感がつかめなくて、拙い技術で視覚の性能強化を起動してみる。

 視神経にかかる鈍い重たさを感じながら増幅された視界に見たのは、

「メル様!?」

 ――重量軽減? え、なに? 空を飛んで……


 あ、と驚きに反応が遅れたほんの一瞬。

 危ない。

 と思わず顔を手で塞いだ瞬間に見えた光景はもう鼻先にメルの顔があった。


 ――ぶつかる!


「おっと」

 そんな声を聞いて頬に風を感じた。

 だが、それで終わり。

 いつまでたってもぶつかる衝撃はなかった。

「あ、あれ?」

「おはよう、モモ。早いね、掃除?」

 目の前にメルが立っていた。

 殆ど落下するような速度で飛んできたはずだが、何処にもその残滓は見当たらない。

「え、あ。メル様。どうやって……」

 目を白黒させるモモに、メルは首を傾げる。

「空飛んできた」

「その格好で、ですか?」

 思わず疑問よりも先に、目の前の彼女の服に突っ込みを入れてしまうモモ。


 タンクトップに、ホットパンツ。

 いやこれは下着だろうか。雲海に差し掛かった太陽が、メルのシルエットを浮かび上がらせている。

 タンクトップもホットパンツも生地が薄いのか、まるで全裸に見えるシルエットをしている。

「……あ、やば」

「あの、屋敷にどうぞ。服、ありますから、よろしければ」

「あ、ほんと? お世話になります。 ……ん、これは」

 メルの視線を追ってモモが振り返ると、その先にあったのは床に開いた穴だ。彼女が錬金術の制御に失敗して踏み抜いた穴は、圧縮木材の床にしっかりと残っている。

「あ、これは。その、あのですね」

 すでにこの家の主人には伝えてあり、もうやらないようにといわれたばかりだ。

 今更隠す事でもないのだが、それでも原因が自分でしかも消せない傷跡。恥ずかしさだけはどうしてもぬぐえない。

 できれば知られたく無かった。

「すごいね、圧縮木材をこんな綺麗に打ち抜くなんて」

 そういって、メルはその穴の前でしゃがみこむ。

「そうですか? タイミングを間違えて重量増加の起動中に足で踏んでしまっただけなんですが……」

「……えっと、重量増加ってこれ?」

 そういうと、いつの間にかにメルの足には重量増加の錬金術が起動していた。

 ――いつの間に……。

「え、えぇ。そうです。そんなに出力はでませんが……」

 そもそもそんな速度で起動できるなんて知らなかった。

「床なんか抜けないでしょ。ほら」

 結構力強くメルは床を踏む。思わず目を瞑るが、確かに床は軋むだけで穴は開いていなかった。

 だがすぐにタネは分かった。

「あの、体重を乗せるようにですね。こう」

 体術の基本である、重心の移動と歩法のひとつ。

 己の体重を乗せ、体を動かすための第一歩を踏み出す。

 ズシ。と床が震えた。

「うわっ!」

 驚いたのはメルのほうだ。重量増加もしていないふみ足で、圧縮木材の街を支えることの出来る構造体がゆれたのだ。

「ちょちょちょ、ちょっとまってモモ。なに、それ」

 二人が二人とも、意味が分からないという顔で相手をみつめる。

 二人の間を、適当な風が適当に駆け抜けていった。



「な、るほど。そういう仕組みか。なんとなく分かった。私には無理そうだけど」

 何度か実践をへて、ようやくメルはモモがしていたことを理解する。体重をのせる重心移動、体の隅々まで考えつくされた動きによる、相乗効果。そしてリアルタイムでそれを補正するだけのセンス。

「私には、錬金術の方がさっぱりですけども」

 ほとんど同じ式を使っても、メルとの起動速度の差を埋めることは出来なかった。

 メルはただ笑って、体を動かすのと同じだから、ただ慣れるのみだ。と、笑う。

 いったいメルほどになるまで、どれほどの数の錬金術をどれだけ使い続ければ良いというのか。

 そのうえ、彼女は最近はほとんど錬金術など使っていないという話だ。

 モモは背中に伝う汗に、あいまいな笑みを浮かべるほかなかった。

「そういえば、モモちゃんに勝手に爪つけたあと、何もしてなかったね……ごめん」

「え? え、え」

 頭をかきながらメルは申し訳ない、と謝った。

 本来親族から受け取る錬金術の爪を勝手に与えたこと、そしてそのまま錬金術のことをひとつも教えなかったこと。


「あの時緊急だったとはいえ、本当に申し訳ない」

「い、いえ! そんな!」

 ――なんだか。

「メル様?」

「ん? なに? 爪外す? モモちゃんなら、体術もあるしいらない物なのは確かかも」

「いえ、なにかあったんですか?」

 腫れ物を扱うように、錬金術から離れていた彼女がどうして。

 疑問は、上手く言葉にならないままぼやぼやと彼女の頭のてっぺん辺りで渦巻くばかりだ。

「んー。まぁ少しは先輩らしいことしようかな、って」

 メルの視線は屋敷の二階に向いていた。

 リグの部屋の辺りをじっと見て、彼女は薄く笑っている。


「そう、ですか。ありがとうございます」

「なんでモモちゃんがお礼をいうのさ」

 良いながらぽんぽんと、メルはモモの頭を軽く叩いた。

 借りた服にはすでに着替え終え、メルは眩しい朝日に思わず目を細める。

 見晴らしがいい屋敷には、もうすでに朝日が差し込んでいるのだ。

 普通の家ではこうは行かないな、とメルは広い庭を眺めながら思う。

 リグの身長は、メルと頭ふたつぐらい違う。

 だから、はじめから彼女の服は選択肢には入っていなかっただろう。だからといって、アーセルの服を持ってこられるとは思っていなかったのだけれど。

「あの……あいませんか?」

「いやその、なんというか」

 リグの母親とは思えないほど、アーセルは小さい。一緒に働いていた頃は、自分より小さかった。

 だから。

「アーセル、成長したのか……」

 服のサイズが大きかったのは、あまりにもメルにとって衝撃だった。

 悔しさに打ちひしがれ、メルは思わず膝を突きそうになる。

 とくに胸の辺りが、考えるのも悔しくてメルは目を瞑り歯噛みをして思考をとめる。

「あ、あの。私の服でよろしければ……」

 思わずモモを見た。

 立ち上がり、目線を合わせる。

 ――殆ど同じ……たしか、リグと同い年だったような。

 ということは、モモもリグと同じ二〇歳前後。メルとは四倍近く差がある。

「う……」

 じわりと、目じりに滲む感覚。

 涙が出そうになる感覚に顔がゆがんでいく。

「メ、メル様!?」

 がくり、と膝を突くメル。

 ――考えたくなかった。

 だが現実は、目の前に言い訳の出来ないレベルで広がっている。

 自分が背が小さいのはわかっていた、出来るだけ考えないようにはしていたが自分の背が小さいのは今に始まったことじゃない、だがまさかここまでとは信じたくなかった。ここまでとは。

 かくも現実は厳しい。

「うぐぐぐぐ」



 久しぶりに纏め上げた髪の毛に、メルは懐かしさを覚える。

 頭皮が引っ張られる感覚が、心地良い。そして、空気に触れた首筋の解放感に、思わず笑みが漏れる。

「え、えーと。その」

 褒めて良いのやら、どうして良いのやら、とモモが感想に困ってる顔をしていた。

「ぴったりすぎて、ちょっと自分でも引いた」

 ――八〇代なのに。

 二〇歳の子と同じ服だ。しかも八〇歳と偽っているが、実際は四捨五入すれば九〇台に突入する年齢である。

 人間に合わせて言えば、二〇後半と、一〇歳以下の子供。

「その、メルさんは若くみえますよね!」

 モモの言葉のナイフに、心が細切れになる。

 膝が崩れ落ちそうになるのを何とか堪え、メルはくるりと回り自分が着ている服を見下ろした。

 フリフリのレースで飾られ、軽く丈夫な生地がかすかな動きにふわりと広がる。

 動くことを前提に、さらに汚れが目立たないように作られている癖に、見た目は可愛くしかし派手ではない。

 まさに金のかかったセンスのよさといった具合に、いつも来ている無骨な作業着を想像して少々微妙な気持ちにもなった。

「申し訳ありません、これしかなくて」

 それはモモがいつも着ているメイド服であった。


 風車修理でつかうツナギは、極力出っ張りが無く、頑丈に作られているため、まさにメイドの服とは逆の造りだ。

「こういう服着るのはじめてかも」

 少しだけ楽しい。

 だがそもそもメルの動きは、大雑把なことが多く、今も腰に片手をあてて嬉しそうに笑っている姿は、全くメイドには見えなかった。

 なんというか、その姿はコスプレでしかない。

 メイドとはその所作から成り立つものなのである。

「何だかメイドになった気分だ」

 だが、現実は違う。メイドとはその所作から成り立つものなのである。大事なことである。

 くるくるとメルはその場で回った。

 絶望的にメイドらしくない姿ではあったが、楽しそうなのでモモは何も言わずに笑顔で顔を固定。

「えっと……」

 先程自分が飲んでいたカップを取り上げ、盆の上においてみる。

 ふむ、と一人で頷き納得するとモモのマネをするように、一歩。

 靴底の硬い靴の所為で足音がカツカツとなっているが、メルは一行に気にせず楽しそうに歩いていた。

 

 と、扉が開く音と同時、寝ぼけたまま寝癖だらけのリグが顔だした。

 夜遅くまで作業をしていたらしく、まだ目の下に隈が残ったままだ。 

「あ、モモ~。おはよう」

「お嬢様。おはようございます、いま朝ごはんお持ちしますね。それとも、部屋に運びましょうか?」

「こっちにお願い、油でどろどろだからお風呂も入りたいしすぐに部屋には戻らないから……え、と」

 まだしっかりと開き切っていないリグの目が、メルを捕らえ、一瞬揺れる。

「あぁ、おは――」

「えーっと、新しいメイドさん?」


 厨房へ向かおうとしたモモが、バランスを崩し足音を立てた。


「よろしく。アーセルの娘でリーズフリオといいます」

 メルに向かって、寝ぼけていても尚優雅で美しい一礼。

 身体に覚えこまされた動きは、たとえ起きていなくても有効らしいことに、メルは頭の後ろの辺りで感心した。

 リグの肩越しに見えるモモが、ゆっくりとこちらを振り返っていく。

 ギギギギと、効果音が聞こえそうなほどだ。

 

 どうしたものか、メルは一度視線を天井に向け。

 そして、

「よろしくお願いします、お嬢様」

 そういって一礼をした。


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