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思春期フットボーラー  作者: kasic
2章 足掻く少女
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50/54

ありがとう

「みんなすごい!ベスト4だ!」

「マジで全国行けるぞ!」


 整列と相手ベンチへの挨拶をすませ、こちらのベンチに戻ると、控えの選手達が中には涙を浮かべながら出迎えてくれた。


「沢ちゃん、最後のブロック、鳥肌立っちゃった!マジ最高だったよお」

「彩音先輩、そう言ってくれて嬉しいです!」


 私と替わって後半からベンチに戻った彩音先輩も涙ぐみながら飛びついてくれる。それがどれほど悔しいか分かっているだけに、そんな思いをした先輩がそう言ってくれるだけで何よりも嬉しい。


「ふふっ、今日は本職4人がみんな頑張ったよね!」

「そうですね!みんなで試合に出れて勝てて嬉しいです!」


 横から綾乃先輩とナツさんの二人も抱きついてきて、4人で輪になって喜ぶ。この三人には今日だけじゃなくて、いつも助けられている。そんな皆さんが充実感あふれた良い笑顔をしていて、私の方も大事な試合を勝てた実感が高まってくる。


「みんな!最後にスタンドに挨拶!」

「はい!」


 スタンドの前に整列し、皆さんの顔を見渡すと、全員が自分のことのように喜んで声を掛けてくる。


「みんなすごかった!」

「感動をありがとう!!」


 さすがに三強の一角との激戦を制しただけあって熱い盛り上がりを見せている。


「応援、ありがとうございました!!」

「ありがとうございました!!」


 キャプテンのかけ声に合わせて一礼すると、拍手の音は更に強まり、コールリーダーがなにやらコールの準備を始めた。


「さ、わ、た、り!」

(え、私?)

「沢渡!沢渡!」


 思わぬ私へのコールにビックリしてしまい、少し硬直してしまう。


「ほら、行きな!!」


 綾乃先輩に前に押し出され、私は何十人ものコールに対して必死に頭を下げる。そして感じたことを一生懸命叫んでみる。


「みなさん、本当にありがとうございます!!今日はみなさんのおかげで最後まで走れました!皆さん最高でした!!!」

「うおーーー!!お前も最高だったぞ!」

「最高の試合をありがとう!」


 私の声を皮切りに一層盛り上がってコールを叫んでくれる。


「有希!」


 私は応援席の中に有希の姿を見つけ、右手を挙げて合図する。そうすると彼女は涙をぼろぼろと流してガッツポーズを返してくれた。


「メイ!ありがとう!ホントにすごかった!」

(私って改めて幸せな人間なんだなあ)

 

 自分の活躍を喜んでくれる人がこんなにもいる。にも関わらず、今日はハーフタイムまで過去のことばかりに囚われて縮こまってしまった。


(私は芳都野高校1年の沢渡鳴、この響きをもう絶対に忘れない)


 皆さんの歓声を受けて、私は自分の立ち位置を改めて認識することができた。




「みんな!早くロッカールームに戻って備品片すよ!」

「はい!」


 私達は通用口に足早に戻り、後片付けに入る。次も試合が控えているため、ロッカールームの備品は片付け、別室の控え室で着替え等を行わなければいけない。


「ケイちゃん!メイちゃん!」


 ロッカールームに戻ろうとすると、日吉さんと九条さん、華音ちゃんの三人が私達を呼び止める。


「いいよ、行っといで。片付けはウチらがするから」

「あ、ありがとうございます」


 綾乃先輩の快い一言を受け、私は三人の下に向かった。私としても華音ちゃんには話しておきたいことがあった。


「今日は良い試合をありがとう。悔しいが、さすがはビッグガールズの二人だったな、完敗だった」

「いえ、美琴さん、中学の時よりも上手くなってました。周りの使い方は私よりも何倍も上です」


 なんと、ケイが素直に相手の実力を認めている。相手の実力を自分よりも上と認めるのは珍しい。


「ふっ、当然だろう。お前に勝ってると思う部分をこの三年間で必死に磨いたのだからな。だが、その部分を抜かれる日も近いだろうな」

「どうしてそう思うんです?」

「気付いてないのか?誰かを活かす楽しさを知ってしまっただろう?最高の相棒を手に入れてな」


 日吉さんが得意気に話したすと私に視線を変え、ケイはすぐに顔を赤らめながら少し早口で話す。


「まあ、相棒というにはミスも多いし、もっと頑張らないといけないですけど、今日はメイがいなかったら点も取れなかったですし、一緒に皆さんと戦えて嬉しかったです」


 ケイは耳まで赤くしながらもハッキリと話してくれる。そこまでモジモジしているとこちらまで恥ずかしくなってくるじゃないか。


「そうだよな。その気持ちを大事にするといい。中学の時から感じたが、お前は真面目すぎる。FWは確かに点を獲らなければ生き残れないポジションだがな、そのためには周りを活かし、周りに活かされることが必要なんだ」

「はい、今日は改めてそれが分かりました」

「何?久しぶりに先輩っぽいじゃない」

「まあ、中学時代の後輩だからな。ウチの連中みたいに舐め腐ってはいないだろ」


 二人の軽口に笑いが起き、場が和やかになる。だが、華音ちゃんはその時も少し上の空で、どうしたのだろうか。その様子を見て九条さんが声を掛ける。


「ほら、華音、メイちゃんと話したいことがあるんでしょ」


 九条さんが背中を優しく叩きながら促すと、華音ちゃんが意を決したように私を見つめて話し始める。


「メイ!今日はこんな大舞台で会えて嬉しかった。それと、ごめん!」

「え、な、何?」


 いきなり頭を下げられて驚いてしまう。中学を卒業して一度も話してすらなかったし、謝られることは本当に何もないのだ。


「私、正直メイのこと舐めてた。口では良い選手だって言っても、ビッグでは私がレギュラーだったし、今日もハーフタイムの時は勝手に落ち込んで前半で替わるだろうなって決めつけちゃっててさ」


(うぐ、それ言われたら9割ぐらい当たってるから言い返せないんだけど)


 勝手に図星を突かれて悶絶してしまうが、構わず華音ちゃんは続ける。


「けど、後半は立ち直って出てきて、股抜きゴールかまされて、最後の決めたと思ったシュートにも足が伸びてきて、完敗だった!ハッキリ言う、今のメイは私よりも何倍も上の選手だ!」

「何倍って、それは言い過ぎじゃ……」

「言い過ぎなわけあるか!」


 私が謙遜しようとすると少し大きな声で遮られ、驚いていると構わず華音ちゃんは続ける。


「後半出てくる時、ゴール決めた時、最後ブロックされた時、試合が終わった時、いつもメイの周りには人がいた。メイが良いプレーしたら控えの選手もスタンドの選手も喜んでた。悔しいけど、私は室谷の皆さんにあそこまで喜んでもらえる自信はない」

「華音ちゃん……」


 彼女はどうやらプレー以外の所を話してくれているらしい。後半が始まってからは無我夢中で覚えていないことも多いが、周りにサポートされた試合だったことは確かだ。


「メイは中学の時からそうだよ。上手いのに自信ないですって顔して苦しそうに練習して、いつも全力プレーでみんなの心を掴んで……その姿がムカつく時もあったけど、ずっと好きだった、負けたくないって思ってた。だから今日は悔しい!!」


 華音ちゃんは思いの丈を吐き出すように話し、感情が高じてしまったのか、涙をぼろぼろと流し始めた。


「ほら、メイも言いたいことあるんじゃないの?」

「ケイ……うん」


 私もケイに促され、華音ちゃんにもう一歩近寄り、肩に手を置いて話した。


「華音ちゃん、私も華音ちゃんに去年からずっと言いたかったことがあって……」


 本当は華音ちゃんだけじゃない、ビッグガールズのみんなに伝えたいことがあった。だけど、私のつまらない意地でそれを言うことができなかったのだ。


「中学の時、私の壁で居続けてくれてありがとう。華音ちゃんとレギュラーを競い合えたことは私の一生の誇りだよ」

「メイ……」


 私の言葉を聞くと華音ちゃんは顔を上げてこちらを見てくれた。


「あの時は確かに苦しくて、レギュラーのみんなを疎ましく思ってたこともある。だけど、みんなに着いて行きたくて必死に練習して、あの時がなければこの舞台で試合に出ることなんてなかった。だから、……ありがとう!」


 何とか笑顔でそこまで言い切ると、華音ちゃんは更に涙を流し、抱きついてきた。


「なんだよ、そうならそうってもっと早く言ってくれよお」

「うん、ごめん」

「みんな馬鹿じゃないんだからね!メイがウチらを避けてたことぐらいみんな分かってたんだから!」

「……だよね、ごめん」

「あと、さっきの言葉はあたしも同じ。メイが居なかったら室谷で一年からスタメンなんてなれなかった。あたしの方もありがとう!」


試合が終わったことと昔の思い出が合わさってなかなか泣き止まない華音ちゃんを私は背中をさすりながら静かに宥め続け、中学時代の一つ一つの出来事に思いを馳せた。



「さて、華音も落ち着いたことだし、戻るか。お互いチームメイトも待っていることだろうしな」

「はい、今日はありがとうございました」

「メイちゃん!」

「え、はい?」


 戻ろうとした所で、九条さんに呼び止められる。昔からあまり関わったことのない方だったが、何だろうか。


「次からはもっと上見てプレーしてみたらいいかも」

「上?」


 思わず天井を見上げると、九条さんが苦笑して続ける。


「違う違う、もっと自信持ってプレーしたらってことよ。メイちゃん、自分が思ってるより多分100倍は良い選手だから」

「100倍……ですか」

「うん!今日の試合でファンになっちゃった。次の試合から注目して見てるから、メイちゃんのサッカーを」

「は、はい、ありがとうございます」


 どちらかというと落ち着いたタイプの印象だった九条さんだが、珍しく高いテンションで私を褒めてきて、少しむず痒くなる。


「じゃあね、メイ、ケイちゃん。次は絶対負けないから。今日から私達は打倒芳都野高校だからね、覚悟しとけよ!」

「うん!またグラウンドでね!」


 最後に挨拶を交わしながら自分達の控え室に戻る。色々ありすぎた刺激的な試合だった。今日は眠れるだろうか。


(私のサッカー、、か)


 九条さんに最後に言われたことが頭に残っている。そういえば、ケイにも試合中、私のサッカーが通用している、と励まされたことがあった。


「ねえ、私のサッカーって何かな?」

「いきなりどうしたの?」


 ケイは私の言葉に怪訝そうに首を傾げ、聞き返される。


「最後に九条さんに私のサッカーを楽しみにしてるって言われて、分かんなくなってきちゃって。ケイも試合中そんなこと言ってたからさ」

「……言ったっけ?ごめん、覚えてないかも」

「え、そんなあ、私、気になりすぎて頭いっぱいなんだけど!」


 思えば、”俺たちのサッカー”とか、よく使われる表現ではあるが、いざそれを自分に落とし込むとなると具体的な表現が出てこない。私のプレーが九条さんやケイに魅力を感じさせたなら、それは何なのだろうか。


「うーん、私の思うメイのサッカーと九条さんの言うそれは全く違うかもしれないし、私自身うまく言語化できないわね」


 結局明確な回答をもらえることなく、控え室に到着してしまう。せっかくの初ゴール、しかもそれが決勝点となり、最高の日になったはずが、胸にモヤモヤした気持ちを残して学校に戻ることとなった。






(はあ、やーっぱり眠れないや。明日も午後から練習だし、寝なきゃいけないんだけど)


 学校で軽い調整を終え、夜ご飯も食べ終えると、自室に戻ってベッドに転がった。しかし、案の定目が冴えてとても眠れそうになかった。


(こうしてても仕方ないし、今日の試合でも振り返るか)


 体を起こし、ベッドに腰掛けて今日の試合のハイライト動画を見返す。まずは私がPKを与え、ココアちゃんが止めてくれたシーンが流れる。


(うっ、このシーン見るだけで黒歴史のフラッシュバックが……ココアちゃんが止めてくれたのに何てことを……明日イヤでもたくさん振り返るんだし、こんな所とばそう!)


 余計に眠れなくなってしまうところを私は30秒送りを連打し、なんとか打ち消すことに成功した。そして、次の瞬間、私のゴールシーンが目に入る。アウトサイドの股抜きで九条さんを躱し、軸足とは逆方向のシュートで華音ちゃんの股も抜いた。


(私、ゴールシーンの時こんな感じだったんだ。……未だに信じられないや)


 シュートまでの感覚は確かに覚えてる。九条さんの近づいてくる速さ、私との距離関係、後ろを確認しなくても確かに分かったのだ。だけど、なぜそんなことができたのかが未だに分からない。


(こんなプレー、次もできるのかな。もう二度とできないような……そんな気もしてきちゃう)


 そんなことがグルグルと頭を回り始めた時、ポケットに入れていたスマホが振動し、着信を知らせてくれる。


(誰だろ、って、お姉ちゃん!?)


 日本では既に夜遅い時間帯だが、わざわざ電話までくれるなんて珍しい。中学に入ってからは初めてかもしれない。


「も、もしもし」


 もしかしたら今の私のモヤモヤを晴らしてくれるのかもしれない、そう思った私は急いで電話を取り、応答する。


『お、メイ?やっぱまだ起きてた?』

「う、うん、起きてたけど、どうしたの?」

『あ、やっぱり。今日のメイの試合見たよ、おめでとう。初ゴールでしかも決勝点でしょ?んなもん寝れないに決まってるし、話し相手になってやろうって思って』


 おおよそ世界的サッカー選手とは思えない軽い口調でケタケタと笑いながら話し始め、この変わらない姿に少し安心する。


『それにしてもゴールシーンは上手かったねえ。特にシュート前のアウトで股抜いたヤツ。後ろも見ずアレは相当難易度高いよ。下手なプロでも抜かれんじゃない?』

「ああいや、でもあれは……何というか出来すぎで……」

『ん?意外と元気ない?どったの?』


 さすがは姉ということか、私がモヤモヤを抱えていることを察知し、聞き返してくれた。ここはお言葉に甘えて話してみるか。

 私は得点シーンのプレーをなぜできたのか分からないこと、もう二度と出来ない気がして怖くなっていることを話してみた。


「……んー、なるほどねえ」


 すると、相づちを打ちながら聞いてくれたお姉ちゃんは少し間を置いて優しく話し始める。


『私からしたら、メイがああいうプレーができるのは違和感なかったけどな』

「え、どゆこと?」


 せいぜい小学校時代の私しか知らないお姉ちゃんがなぜそんなことが言えるのだろう。私が尋ねると、お姉ちゃんも当然のように返してくれる。


「だってさ、小学校の時もこんな感じでゴール決めてなかったっけ。日向ちゃんのパスに抜け出して、相手に追いつかれても冷静に躱してゴール。あんたらの得点パターンだったでしょ?」

「あ……」


 昔のことすぎて忘れていたが、確かにケイからパスを受け取った後の一連の動きは、小学校時代に確立した得点パターンとそっくりだ。

 それに、華音ちゃんの股を抜いたシュートも力のない私が相手の狙いを外すために散々練習した物だった。


「サッカーって瞬間の判断が必要でさ、私だって今日できたプレーが明日できるかなんてその場面になってみないと分かんないよ。だけど、結局試合で出来るプレーって自分のこれまで培った範囲までしかないんだよね」

「私の培ったこと……」


 お姉ちゃんの言うことを反芻し、得点シーンを生み出した私の経験を振り返ってみる。


(股抜きシュートは小さい頃の練習だとして、九条さんをノールックで躱したアウトの股抜きは……一つはボランチの練習で相手に背中を向けてボールを捌く練習と、けど、タイミング良く足出されるタイミングが分かった理由がまだ謎のような……)


 なんだかよく分からない謎の声が聞こえてきていたような気がするが、それを言った所でお姉ちゃんを混乱させるだけだろう。


「ふふっ、余計混乱しちゃった?けど、良いプレーしてその感覚をまた掴めるか不安っていうのは誰しもが通る道だよ。メイが選手としてワンランク上に行った証拠ってこと」

「……お姉ちゃんもそうなの?」

「当たり前、いつもそうさ。それ見せたら敵どころか味方の競争相手にもつけ込まれるから見栄張ってるだけ。大事なのは自分がやってる練習とか経験を言語化して自信を持つこと。ハッキリしなくても良いから」

「そっか……あ、もう一個いい?」


 なんとなく整理が付きそうになってきた所で、私の心をモヤモヤさせているもう一つのことについて切り出した。みんなが無責任に浴びせてくるこの言葉だ。


「"私のサッカー"って何かな?」

「……どうした?ちょっと遅い中二病?その心を忘れないのも大事だけどさ」


 やはりこういう反応になってしまうか。この反応を踏まえて、私はケイや九条さんに私のサッカーが好きだということを言われたことを話す。


「……なるほどね、もうそんなレベルまで行ってるのか」


 お姉ちゃんは興味深そうに相づちを打ちながら聞き、少し間を置く。


「それってさ、私が何か言ってメイは納得できるの?」

「それは……」


 確かに、ケイも九条さんの思うそれとは違うかもしれないと言っていた、もしお姉ちゃんが答えを持っていたとして、それが正しいとどうして言えるのか。


「そゆことだよね。……けど、良い機会じゃないかな」


 そこまで言い終わると、姉はいつもの剽軽な口調を変え、真面目で迫力のある声で静かに話し始める。


「大人になってもサッカーをやるつもりなら、真剣に考えてみなさい。卒業してからも、サッカー辞めるまでずっとね。それがないと、いつかは続けられなくなっちゃう」

「サッカー辞めるまでずっと……」


 お姉ちゃんの言葉には確かな重みがあった。確かにお姉ちゃんは世界中のサッカーファン、関係者に好き勝手言われる立場だ。その時に自分のサッカー観を確立しておけということだろうか。


「難しく考えなくていい。まずは自分に自信を持って。今日のメイのプレーは、メイがいるせいで試合に出れなかった控えの人も笑顔になって、相手選手すら魅了してる。実はすごいことやってるんだよ?」

「すごい……かな」

「すごいよ。それってさ、プレーじゃなくて、メイのプレー姿とか、そこから見える人柄とか、そういう所に惹かれてるってことなんだ。格好良くない?」

「格好いい」


 話を聞きながら、私は初めてサッカーをやりたいと思った時のことを思い出した。お姉ちゃんがデビュー試合でゴールを決めてサポーターに駆け寄って、味方もサポーターも全員盛り上がって鳥肌が立っていた。


(規模は小さいけど、ああいうことが出来たってこと?)


「"メイのサッカー"ってそういうこと。今日のプレーにはそれだけみんなを惹き付ける何かがあったんだ。答えは自分の中に持ってるはずだよ」

「自分の中……」

「悩みなさい、サッカー少女。負けても死ぬことはないんだからさ、仲間とボール追いかけて、"メイのサッカー"を見つけなさい。それができる頃にはもっともっと上手くなってるし、自信も持ててるよ」

「……うん、分かった」


 お姉ちゃんは姉としてではなくサッカー選手として私に助言をしてくれている気がする。そんなことは初めてで、それが私にとってたまらなく嬉しい。

 私の返事に満足をしたのか、お姉ちゃんはいつも通りふざけ半分のような明るい口調に戻し、また話し始める。


「悩み事はそんな感じ?私もそろそろ練習だし、切るね?」

「うん、お姉ちゃん」

「おう、どうした?」

「……忙しいのに試合見てくれてありがと。尊敬するお姉ちゃんが褒めてくれて、嬉しかった」


 私の言葉に姉は少し言葉を失っている。尊敬する姉から最後に一本取れたようで少し嬉しくなった。


「……えっと、私からも、ありがとう。メイのプレー見て感動した。改めて頑張る気力が湧いてきたよ」

「そっか、嬉しい」

「……じゃあ、時間もそろそろだし、切るね、次の試合も期待してるから」

「……うん。またね」


 その言葉を最後に電話を切られた。何だか心地良い余韻が私の中に残ってる。


(答えは私の中にある……か)


 お姉ちゃんの言葉を思い返しながら部屋の電気を消し、もう一度ベッドに転がった。胸の中には先程と違って温かい言葉で満たされている。


(明日からまた頑張ろう。また失敗するかもだけど、みんなと乗り越えて、そしたら見えてくるよね)


 目を閉じると、PKを与えたショック、ゴールを決めた興奮、勝ってみんなと喜び合えたこと、すべてがかけがえのない思い出として頭に浮かんでくる。忘れないように胸にしまっていると、いつの間にか眠りについてしまっていた。

ここで第2章は終わりとなります。

更新頻度も不定期な本作ですが、お読みいただきありがとうございます。

次章からも熱い試合が続きますので、お読みいただけますと嬉しいです。

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