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思春期フットボーラー  作者: kasic
1章 立ち上がる少女
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尊いもの

 中学に入って、私は東京でも強豪と呼ばれるチームに入った。私のお姉ちゃんが中学の頃に入ってたチームだよ。私、小学校の時はフォワードで、お姉ちゃんみたいなフォワードになりたかったから、どうしてもそこに入りたかったの。けど、やっぱりレベルが高くて一週間でお前はサイドに行けっていわれちゃったよ。思えばお父さんとお母さんは最後まで中学の部活動でいいんじゃないかって言ってたけど、私が苦労するって分かってたんだろうね。

 

 で、そんな強豪チームで一年生の時から上級生と混じっても圧倒的なプレーを見せてたのが、もう分かるよね、藤堂さんだった。身長は今よりも低いし、フィジカル面ではまだまだだったんだけど、今と変わらずにシュートは決まるし、威力も凄いし、一人だけネットを揺らす時の音が違った。その時はもう落ち込んだね、あんな子が居たら適うわけがない、とんでもない所に来たって思ったよ。けど、あの頃の私はなんていうのかな、怖い物なし?っていうのかな?ちょっとは落ち込んだけど、もっと頑張ろうって思ってさ、自分でもめっちゃ頑張ったなって思うよ。毎朝5時ぐらいには起きてランニングしたり、公園で自主練したりして、練習の後もグラウンドが閉められるまでずっと練習してたし、家帰ったらごはん食べてお風呂入って宿題やってたら一日終わっちゃったなあ。


「なんかアスリートかってくらいストイックだね」

「真面目なメイちゃんらしいですね」

「はは、ありがと。けど、そんだけサッカーに打ち込んだからって劇的にうまくなるわけじゃないんだよねえ」


 そりゃあ一度もやったことなかったサイドバックすらもそこそこ出来るようになるほどにはうまくなるけどさ、周りのうまい人は私以上にうまくなるし、体も大きくなっていったよ。私も身長は伸びてたけど、どんだけご飯食べても体は大きくならなくてさ、よく太らないのが羨ましいなんて言われるけど、スポーツやってるとその言葉イラッとくるよね。

 

 まあいいや、そんだけ頑張っても足はあんまり速くならないし、フィジカルも強くならないしでいいかげん心が折れそうになってた頃、中一の、秋ぐらいかなあ、ちょっと気晴らしに朝のランニングコースを変えてみて、いつもとは違うちょっと遠い公園に行ってみたら……そこにはびっくり、見知った顔が居たの。それが、藤堂さんだった。


 その時はほとんど話したこと無くて、家がそこそこ近かったことに結構驚いたよ。で、それは向こうも同じだったみたいで、私が声かけたらキョトンとした顔してたなあ。それでちょっと話したら藤堂さんはお父さんが元日本代表だってことも分かって、私もお姉ちゃんがその頃にはもう日本代表だったから、それで意気投合してさ、それがきっかけで朝は一緒に練習することになったの。あの子って、もうその頃から東京都の選抜メンバーとかに選ばれたりしてて、経験豊富だったし、話を聞くだけでも面白かった。こういうクロスをもらえたらシュートを撃ちやすい、とか、ああいうディフェンスをされたらイヤだ、とか、いろいろ教えてもらったよ。そうだね、中学時代はあの朝の時間が一番楽しかったなあ。お互い自分の夢のこととか話したりしてさ。あの子、ワールドカップで優勝したい、とかオリンピックで金メダル、とかすっごい具体的な夢を持ってて、実際それに見合う努力をしてるんだから、もう尊敬しちゃうよね。


 それ以来、私は朝はあの子と一緒に練習して色々教えてもらって、練習では、何かとみんなと衝突しがちな、何となく分かるでしょ?あの子をフォローして仲裁役になったりして、こういうのがウィンウィン?って言うんだよね?とにかく、お互い助け合ってやってたって感じだったな。


「うーん、良い話ですけど、このままだったらしっくり来ませんね」

「うん、今の話聞く限りだと、メイと藤堂さんめっちゃ仲良いじゃん。けど、今日あんなことになってたし、二人が話してるところなんて見たことなかったよ?」


 あはは、まあそうだよね。確かにこの頃までは仲は良かったと言ってもいいと思う。

 それなのに、今日あんなにやり合っちゃったのは、今から話す話が原因なんだと思う。


「沢渡、お前は今日からセンターバックの練習をしてくれ」


 あれは確か新チームになってすぐだったかな。多分私が背が高くなってたからだと思うけど、ホントに前触れもなく当時層が薄かったセンターバックにコンバートされた。層が薄いって言っても、センターバックにはキャプテンと、将来有望だった一年生がいたから、その時点でお前はレギュラーでは使わないって宣言されたような物だったんだよね。


 正直悔しかったなあ。自分なりに毎日一生懸命練習して、実際に練習試合とかでは結果も残し始めてたから、レギュラーになれると思ってた矢先だったし、何よりも最初はフォワードでたくさんゴールを決めようって思ってたのに、今やゴールから2番目に遠い所で味方のゴールを黙って見て、自分はゴールを決められる立場になっちゃったのが、なんか無力感っで言うのかなあ、昔は楽しかったサッカーがもう苦しくて仕方ないものになった。

 練習でも試合でもただ人がいない所で便利に使われて、肝心な所ではいつもピッチの外。もう自分がイヤになったね。



「………………」


 そこまで話すと、二人は相づちを打つことも無くなってしまった。予想はしていたが、この話をするとどうしても暗くなってしまう。


「ごめんね、やっぱり湿っぽくなっちゃう」

「いや、いいんです、続けてください」

「うん、本題はこの後にあるんでしょ?」


  そうだね、それで、藤堂さんとの話に戻るんだけど、その頃のあの子は、もう押しも押されぬエースストライカーで、フィジカルも強くなってて手が付けられなくなってたな。どんな体勢でもシュートまで行くし、それがまた枠に行くんだよね。そして、何よりも、年代別日本代表に選ばれるようになってた。あの子はいつも通り、日本代表のすごかったチームメイトの話とか、海外遠征に行ってごはんが美味しくなかった時の話とか、海外の選手は日本の選手ではあり得ない所で足が出てくる話とか、もういろんな話をいつも通り話してくれた。けど、私は、あの子の、ケイの話を素直に聞けなくなっていたの。

 

 ケイは、私が中学校に入る前に思い描いてた姿にそっくりだった。なんであんな風にできないんだろう、なんで私は今センターバックなんてやらされているんだろう、そんなことを思うウチに、私はいつの間にか、同士とも呼べるような人に嫉妬していることに気づいた。醜いよね。当時の私はケイだけじゃなくて、他のスタメンの選手にも、嫉妬してた。ベンチから試合見てても心の中では今日負けないかなあ、なんて思ってた。今日あんなことになった原因の大部分は、私がこの時の気持ちを引きずってたことだと思う。それで、もう一緒に練習するのが辛くなってた、ある日の朝、いつも通り公園に来たケイに向かってこう言った。


「朝練、もう終わりにしようか」

「……え?どうして?」


 あの時のケイの顔はもう一生忘れられない。呆然としたように目を見開いて、その後あの強気な目で私を睨んできた。


「お姉ちゃんみたいなサッカー選手になりたいってずっと言ってたじゃない。試合に出られないからって、諦めるの?」

「もう無理だよ。中学校で試合に出られない選手が、プロになんかなれるわけないよ」

「違う、メイはそんな人じゃない。そんなことで夢を諦められる人じゃない。何か理由があるんでしょ?」

「無いよ、そんなの。ただプロになるなんて言ってたのが馬鹿らしくなっただけ」


 そこまで言うと、私は背を向けた。あの子の顔を見るのが怖かったから。それで、外に歩いていったら、もう追ってくることは無かった。そして、代わりに私の背中に言葉を投げかけた。


「私は!私はなるよ!サッカー選手に!日本をワールドカップで優勝させる、オリンピックで金メダルだって獲る!バロンドールだって獲ってやる!!あなたが諦めても、私は前に進み続けるから!!」


 ケイは昔からずっと変わってなかった。変わらずに努力し続けて順調に成長して、変わらない夢も持ち続けて、私もケイに負けない努力をしてたつもりだったんだけどなあ。どうしてこうも差が付いちゃうんだかね。



「ねえ、メイ」

「ん?有希、どうしたの?」


 しばらくの沈黙の後、有希がそれを破った。


「なんで、練習がイヤになったホントの理由、言わなかったの?」

「そうだなあ、あの子、意外と優しいから。ホントの理由を言ったら、多分無神経だった自分を責めちゃうから…………いや、それは言い訳だな。単純に私のイヤな部分を見たくなかっただけなんだと思う。多分一旦自分の気持ち言っちゃったら、もう雪崩が起こるように止まらなかっただろうね。これ、中学を卒業する前、幼なじみにその感情ぶつけちゃったんだけどね。ただ、それだけ。…………軽蔑した?これが私だよ。勝手に突き放して、それでもまた近づいてきたケイに八つ当たりして、ホントに自分がイヤになるなあ」


 私は自嘲気味に言い捨てた。そしてまた沈黙が広がり、顔を俯かせた。二人の顔を見ることができない。せっかく友達になれたのに、軽蔑されてしまっただろうか?


「軽蔑なんてするはずがありません」


 手を握られ、優しく、子供に言い聞かせるような声でココアちゃんが話した。


「メイちゃん、辛かったですね、苦しかったですね。けど、大丈夫です。私達は友達ですから、苦しみは分かち合うべきなんです!」


 そして頭に小さな手のひらが乗せられた。


「うん、メイはよく頑張った!だからさ、顔上げてよ。軽蔑するどころか、私は嬉しかったよ。ありがとう、そんな辛かった話、私達に話してくれて」


 二人の話を聞いて、胸のつっかえが少しとれたような気持ちになった。自分のイヤな一面を見せて、それが他人にどう思われるのか、どうしようもないほど怖かった、けど、この二人は最後まで静かに聞いてくれて、こんな風に寄り添ってくれる。


「ううん、上げない」

「なんで?」

「だって今、見せられる顔じゃないから」


 私が落ち着くまで、二人は何も言わず、ずっと私のそばに居てくれた。言葉は無かったけど、二人の手はとっても温かくて、氷結していた私の心を溶かしてくれるような、そんな気がした。




「さて、メイが落ち着いた所で、私達も秘密を打ち明けなくちゃね」

「そうですね、メイちゃんが頑張って話してくれたんですから」

「いや、そんな、別にいいよ」

「大丈夫、私のはメイほど大した話じゃないから」


 有希は顔を上に向け、一つ一つ思い出したように話し始めた。


「さっき、メイが話してた、希望のポジションとは違う所をやらされてしんどかったって話、私も気持ちすっごく分かるの。私が陸上部で中距離だったって話、したよね?」

「うん、何回か聞いた」

「オッケー、それで、私も希望して中距離、私の場合400メートル走と800メートル走が多かったんだけど、最初から400とか800を希望したわけじゃなくて、顧問の先生からお前は400メートル走って言われたんだよね。希望用紙が配られて、第一希望100メートル走、第二希望200メートル走、第三希望、何だったかな?まあとにかく、希望を書いて出したんだけど、それで帰ってきた紙には私が書いてなかった400メートル走っていう文字が書かれて帰ってきてさ、もうビックリだよね。思わず先生を二度見しちゃった」


 400メートル走は距離に換算すると、サッカーコートの端から端まで2往復くらいだろうか、800メートル走はその倍だ。それを全力で走りきると思うとゾッとする。


「まあ、仕方ないんだけどね。私って短距離を走るには、足があんまり速くないし、長距離を走るには、そこまでスタミナがある方じゃなかったし、中距離が一番良い成績が残る可能性が高かったから」

「けど、やりたくもないのに、中距離走は、とっても苦しいんじゃないですか?」

「そりゃあもちろん。中距離は走った後の達成感が凄いなんて言う先輩も居たけど、そんなことぜんっぜんなかったよ。ほとんど全力に近いペースで走ってゴールの瞬間体が起こせなくなるわ、足の筋肉がちぎれそうなぐらい痛いわ、心臓はバクバクするわ、過呼吸でしゃべれなくなるわでホント酷かったよ。一回救急車呼ばれたことだってあるからね?」


 それはすごい修羅場だ。有希はサッカー部の走りのメニューも平然とした顔でやり抜いているが、それはそうした修羅場をくぐり抜けてきたからであろう。


「それで最後の大会が終わった後に100メートル走の奴らが、三年間辛かったなあ、なんて話しててマジで腹立ったね。中距離走の辛さを味わってから言えよって思ったよ。それで、高校では陸上部はいいかなって思ってサッカー部に入ったの」


 そこまで話すと有希は一つ息をついた。


「だからさ、さっきメイの話聞いた時、ホントに尊敬した。私は陸上やめちゃったけど、何回もポジション変えられて、それでも頑張って、結果が出なくて、でもまだサッカー続けてる。努力を続けてる。中々できることじゃないと思うな」

「有希…………」

「さて!私の話はこれで終わりかな?ココアはどう?何かある?」


 手を一つ叩き、有希がココアちゃんに話を振った。顔が少し赤くなっているのを見るに、少し恥ずかしいのだろう。


「うーん、お二人の話を聞いてからだと、少しスケールは小さくなるのですが、お二人には私が芳都野高校に来た理由、話しましたよね?」

「うん、確か、GKの層が薄くて、全国に行くチャンスがある所、だっけ?」

「はい、確かに間違いではないのですが、うーん、どう言ったらいいんでしょう?実はそんなにかっこいい理由ではないんです」


 ココアちゃんが悩ましげに首をひねりながら話し始める。


「私はメイちゃんと違って、地元の中学のサッカー部に入ってたことはもう言いましたよね?そのサッカー部は別に強豪ってわけじゃなくて、県でベスト16に入れば良い方の学校でしたね。私は中に入った時からもう170センチあって、一年生の頃からレギュラーでした。自分で言うのもなんですが、もう孤軍奮闘の活躍ぶりでしたよ。私よりも上だって思うキーパーも全然いませんし、正直調子に乗ってましたね」

「へー、やっぱりココアって昔から背が高かったんだね」

「いや、つっこむ所そこじゃないでしょ」


 ものすごい自信家だとは思っていたが、なるほど中学では敵なしの状態だったのか。中堅サッカー部で埋もれていたことを考えると、クラブチームの方まで噂が広がってこなかったのも理解できる。


「特に最後の大会はキャプテンも任されて、より一層頑張りました。ベスト16を突破して、準々決勝、準決勝は二試合連続でPK戦を制して、決勝まで行ったんです。決勝まで行ったのは初めてだったらしくて、正に守護神としての活躍ができました。だけど、決勝戦は…………もう、ボロ負けでした」


 ココアちゃんは少し言葉を詰まらせる。当然だ。負け試合のことはあまり語りたくないだろう。


「決勝戦の相手は、全国でも上位に進出できる高校で、正直、舐めてました。シュートの威力も凄かったですし、ドリブルだってうまいですし、個人技だけじゃなくて連携もしっかりしてて、次々にゴールを割られて、最終的には5点も取られちゃいました」

「5点か。守備陣からしたら、屈辱だよね」

「はい、けど、一番衝撃を受けたのが、相手の気迫なんですよね。円陣のかけ声もすごく大きくて、一つ一つのプレーは自信に満ちあふれてて、スタンドではたくさんの控え部員が声をからして応援してました。多分、たくさんのライバルと競い合って、お互いを高め合って、それでレギュラーに選ばれた選手はみんなの思いを背負って試合に出てたんですよね。そう思うと、競争の少ない所で三年間レギュラーを張って、お山の大将をやってた私がとっても惨めで、井の中の蛙だったってことに気づきました」


 ココアちゃんが自嘲気味に笑いながら話した。こんな風にココアちゃんが弱い所を見せてくれたのは初めてのような気がする。


「それで、大会が終わって、進路を決める時期になったんですけど、スカウトのみなさんって良く見てるんですね。一回も全国大会には出たことが無かった私にオファーがたくさん来て、中には特待生として来てほしいって言ってくれた所もありました」

「けど、そこには行かず、ウチに来た」


 そこは常々疑問に思っていた所だ。ウチは最近の実績は無いに等しい。いくらレギュラーになれて全国に行くチャンスは増えるとは言っても、普通なら全国に行きたいなら別の高校を選ぶ。


「はい。……怖かったんです、みんなと競争するのが。多分、強豪校に行くと、決勝戦で戦った人のような選手達と競争になって、それに勝たないといけないんです。特にキーパーってポジションが一つしか無いですし、より競争が激しいんですよ。そう考えたら、震えが止まらなくなって、お誘いを全部断っちゃいました。周りの人からはビックリされましたけどね。それで、一生懸命探した学校が、芳都野高校です。設備はしっかりしてて、けど最近は振るわなくて、レギュラー争いはそんなに無さそうで、私にはぴったりの学校でした。……私の話も、ここで終わりです。……それと、メイちゃん」

「何?」


 ココアちゃんは私の目をしっかりと見て、何かを訴えかけようとしている。体が大きい分こう言う時のココアちゃんの迫力は凄いものがある。


「私も、有希ちゃんと同じです。さっきの話を聞いて、メイちゃんのことすごいなって思いました。私はキーパーだったので経験したことはありませんけど、希望のポジションじゃない所をやるのって、ホントに辛いことだと思います、それで多分私が決勝でやった中学よりも強いチームで三年間奮闘してたんですよね。正直、私だったら耐えられるとは思いません」

「買いかぶりすぎだよ。結局はレギュラーは取れなかったわけだし、最後はほぼ試合になんか出てなかったよ」

「そこです!メイちゃんはそこがいけません!」


 人差し指で顔を指され、何やら怒られてしまった。


「メイちゃんはもっと自信を持つべきです。例えそうでも、メイちゃんはとっても努力してますよね?聞く限りではメイちゃんはセンターバックになってから二年も経ってません。それなのに判断は的確で、ポジショニングにも間違いはありません。私も練習やこの前の試合では大いに助けられました。唯一私が不満を持つとしたら、自信が無さそうで頼りなく見える所です。だからいつも相手に狙われるんですよ。私、少し藤堂さんの気持ちが分かるんですよね。あんなに練習してる人が試合中オドオドしてて、そんなに頑張って何が不安なんだって話ですよ」

「まあまあ、メイは練習しててもうまく行ったっていう経験が無いわけだしさ」


 見かねた有希がココアちゃんを宥めている。私を褒めてくれるんじゃなかったのか?いつの間にか説教が始まってしまったが。確かに思い当たる節はたくさんあるのだが、相手に狙われる理由は単に一年生だからだと思っていたが、そんな所にあるのかと思うと、納得できる。


「ですから、これからはもっと自信を持って行きましょう。大丈夫です。例えシュートを撃たれても私が居ます。そう簡単に決められません」


 自信満々にココアちゃんは胸を張った。さっきは随分弱った姿を見せていたが、やっぱりココアちゃんはココアちゃんだった。





「なんか、照れるね。打ち明け話するって」

「そうですね、けど、私は二人ともっと仲良くなれた気がして、とっても嬉しいです」

「私も、なんか気持ちが楽になったかな。あんな話、人にすることないと思ってたし、ずっと溜まってたもの、はき出せた気がする」


 お姉ちゃんには勘付かれていたようだが、両親にも話したことが無かったし、日向を除けばこの二人が最初だ。そう思うとまた目頭が熱くなりそうだ。


「お?また泣いちゃう?」

「メイちゃん、今度は私の胸に飛び込みますか?」

「泣いてないってば。もう、あれは忘れてよ」


 二人がからかうように話すので、少し言い返してみる。自然と誰からともなく笑い声が起き、しばらく三人で笑い合った。芳都野高校に入ったのは決して前向きな理由ではなかったが、この二人と出会えたことが、私には神様からの贈り物のように思えた。

今回で文字数が10万文字を超えたようです。これも見てくださっている皆様のおかげです。

今後とも是非よろしくお願いします

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