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終焉の本を読んでいた男  作者: 帽子屋 黒兎
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新世界のキボウ.3

ぐいっと体を伸ばす。どうやら僕は起きたらしい。読みかけの本を手に取ろうと手をさまよわせるが、一冊たりとも手に本が触れることはなかった。座れば天井以外周りの風景が一切見えなくなるほどにうずたかく積み上げられていたはずなのに、だ。

 それを認識したとたんに頭が覚醒した。

 「そう、か。死ななかったのか」

 どうやら倒された後、この部屋に運び込まれたのだろう。布団……いや、ベッドか。の周りには、あの石の部屋にあった僕の荷物はカバン二つだけで、握っていた模造刀はもちろん、床に落ちていた暗器と模造刀もここにはなかった。服装は、流石に下はズボン、上はシャツでジャケットコートは脱がされていた。

 久しぶりのきちんとした寝具での睡眠だったからか、気分はいい。二度寝と行きたいところだが、ここは敵地のはずだ。装備を確認するためにも、僕は布団(もう布団でいいや)から出た。

 ジャケットとコートを羽織り、暗器を仕込んでいた場所を探ってみるが、武器になるものは無かった。

 次は荷物の点検を……と思っていると大きな扉がノックされた。

 「起きているか、いるならば返事をしてくれ」

声の主は僕を気絶させた者のようだが、僕はまだ非武装の状態だ。切りあった相手にそれでは不用心だろうと、居留守を使うことにした。

ガチャッ

「なんだ、起きているじゃないか」

「……やはり僕の知らない生命体か」

何だコイツ、普通に入ってきたぞ。やっぱり人間じゃないんだろう。

「なにを言っているんだ。私はれっきとした人間だよ」

「人間は僕一人だよ」

「本当に何を言っているんだオマエは、厨二病か?」

……いわれてみたら、たしかに厨二病くさい言い方だが、事実なのだから仕方がないじゃないか。あの滅亡の中、生き残ってしまったのは僕一人だ」

「声に出てるぞ、おまえ。生き残ってしまったって、そんなに悲観することか?」

仮に人間だとして、こいつは僕とは精神構造が違うのだろう。

「君は、家族も、友人も、知り合いも。誰もかれもが消えてなお『生き残ったぜやったー』と言える存在なのだね。つまり仁がないんだ。つまり君は人じゃない」

「勝手な理論だね。まぁ、聞いてよ」


・あるデンセツの顛末

「私はあの時までは、日本で普通に暮らしてた。あの時、そう、消滅の日が来るまではね。「みんな消えたよ。あんたと同じで。違うところがあるとすれば、あんたと違って私は生存者たちと集まることができた。「全部で十二人私の仲間はいた。「協力者みたいなのも一人いたけど、あの人は結局仲間にはならなかった。「私が彼らを人間だと思ってるのは、私たちの仲間が子供を作ることに成功したから。「研究者の仲間が言うには、あの消滅は細菌のせいらしい。新種だね。「私たちが生き残ったのは、その細菌に対する抗体を持っていたからで、それは遺伝するものだったみたい。だから、私の仲間の子孫が彼女たち、のはず。「別に、私や君がその間ずっと眠っていたりしたわけじゃなくて、召喚? されたみたい。「そう、今のこの世界には魔法があるのが普通みたい。「といっても、儀式とか、魔法陣とかの大仰な準備が必要なものばかりみたいだけど。「他にも、仲間だった人が二人、この世界にいるみたい。まだあったことはないんだけどね。「私たちは『終焉の英雄』って呼ばれているらしい。それで、この国の人たちは私たちに何かしてほしいみたい。まだそれが何か、私は知らないんだけどね。二人そろってから話すって言われて。「まさかその二人目がこんなに反抗的だとは思わなかったけどね」


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