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終焉の本を読んでいた男  作者: 帽子屋 黒兎
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新世界のキボウ.2

「何、と言われましても……あなたには、何に見えているのですか?」

 「そうだな、見た目はさながら人間のようだ、だが、それだけはあり得ない。ともすれば可能性が高いのは機械生命か。あるいは、お前たちが元凶という可能性もあるか……」

 僕は大図書館の生活に慣れすぎて、独り言を言いながら考えをまとめる癖がついてしまっていた。そうでもなければ、わざわざ敵対する可能性までも声に出す必要はなかった。仮称騎士たちは警戒態勢なのか剣だと思われる鉄の棒を正眼に構えている。ならばと僕も握った刀の反りを返し、柄に手をかけた。と、通路の奥から一人分の足音が響いてきた。敵か味方か、確かなことは言えないが、しかしこの状態、仮にあの少女の立ち位置が姫に準ずるのなら、僕は孤立無援だと考えておいたほうがいいだろう。

 「姫様! お待ちくださいといったでしょう!」

 残念だが予感は的中したようだ、僕は舌打ちを一つしてから鍔を押し、抜刀した。今ならまだ仮称騎士たちは声に動揺して隙ができている。全滅させるのは無理だろうが、あの「姫」とやらを人質にすればなんとかなるかもしれない。可能性は、まぁ。低いが。

 ともかく、行動せねば話は始まらぬと正面にいたものに襲い掛かった、が、その一撃は、追いついてきた声の人影にはじかれてしまった。

 「あっぶな! あんたいきなり見知らぬ人に切りかかるって正気!?」

 影は、どうやら女の形をしているようで、軽鎧をまとって黒く長い髪を後頭部でひとまとめにしている、そして両刃の片手剣を持っている。向こうはどうやら会話を望んでいるようだし、力量もあちらのほうが上だろう。だが、だからどうしたというのだ(・・・・・・・・・・・・)。むしろ好都合だ。もしこいつらがあの元凶だとすれば、きっと家族と同じところに行けるだろう。

 はじかれた刀を引き戻し刃を水平にして女の首を狙って突き出す。女は首を振ってそれを避けたが、その方向に振り払って相手に距離を取らせる。本当は当たればよかったのだが、そう上手くはいかないか。

 騎士たちはもう立ち直ったようで、姫の守りはかなり固くなってしまっている。ならばやはり、あとは殺してもらえさえすれば、僕の目的は達成されるだろう。

 女に限らず、相手側の敵愾心を煽るために、下げた剣先に十字手裏剣をひっかけて騎士団子の中央を狙って飛ばす。当たりはしないだろうが、それでも相手の敵愾心を得られればそれでいいのだ。

 しかし、それを実行する前に僕の意識は闇に落ちた。

 後から振り返れば、このとき僕は、彼女から意識をそらすべきではなかった。そして、僕にとって不幸だったのは、彼女との実力差が、僕を殺すことなく制圧できるほど開いていたことだろう。


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