Ⅳ
※ご覧の小説はクソ小説の決着で間違いありません。
だいたい初めから、このいけ好かない伊達メガネの主張はそれっぽいだけであり、きちんと筋の通ったものなどひとつもないのだ。
もはや、約束された勝利の炬燵は目の前であるかのように思えた──が。
「否ッ!! 断じて否、僕が此処で敗北を認める訳にはいかないッ!!」
「うぉっびっくりした」
ダン! と机に手をつき、絶叫する伊達メガネ。どうもその光景に既視感を覚えたが──まぁいい。問題はそこじゃない。
「諦めろよ。さっき決着ついただろ。つか落ち着け」
「君には言われたくないな、友よ。──某は敗北を認めるわけにはいかんのだ、どうしても!!」
「一人称迷走してんぞ」
メガネの向こうに殺気を感じつつ、俺は友人を宥めにかかる。一体何だっていうんだ──約束された勝利の炬燵はどこへ行ってしまったんだ。
「つーかそもそもお前、なんでそんなにクリスマスツリーにこだわるんだ? 熱く語る割にはあんまり根拠なさそうじゃねえかよ」
「聞くな!! 吾輩も炬燵派になったらこの争いが成立しなくなるではないか!! 小生だって好きでクリスマスなんて不毛な行事を推している訳ではない!!」
「だから一人称……って、だったら別に争わなくてよくねえか?」
「何もしないクリスマスが虚しいからと貴様が始めた恒例行事だろうがぁぁ!!!」
「そうだっけか」
伊達メガネは鼻息も荒く口角泡飛ばすと、「はぁぁぁ……」と盛大にため息をつき、座り直した。
「とにかくだ。クリスマスはただでさえ虚しいのだから、君に勝って自尊心を満たすくらいしかすることがないのさ、友よ」
「うん…………蜜柑買ってきて? あと電球」
「君が行きたまえよ。拙者寒いのは嫌い故」
俺たちは無言で拳を突き出し、そのままじゃんけんを始めた。
──俺は、無言のままコートを羽織った。