Ⅲ
※ご覧の小説はクソ小説の折り返し地点です。
さて、伊達メガネの素直な謝罪を聞いたということは、今が畳み掛け時である。ここで一気に攻め入れば俺の勝ち──即ち、炬燵の獲得だ。ウドの大木の類義語は樅の大木だと思っている俺が、ここで退くわけにはいかない。
「そもそもお前! カップルが何のもとに成り立ってるか知ってんのか?」
「否……恥ずかしながら、浅学故に。友よ、僕に教えてはくれまいか」
「よかろう」
伊達メガネに下手に出られるのは正直かなり気分がよかった。滅多にない機会だし。
「──別れ、だ」
過剰なまでに重々しく、俺は言ってやる。
「別れ、かい?」
「そう、別れ。──いいか浅学クソメガネ、俺が特別に教えてやる。ひとつのカップルの成立にはな、ひとつのカップルの別れがあるんだ。誰かの涙に依らない幸せなんてねェんだよ」
静かに語り終えると、俺はフッとアンニュイなため息をついた。今なら伊達メガネの気持ちがよく分かる──クイとメガネを持ち上げたい気分だ。
「……し、しかし友よ。この世の中には伴侶のいない人間など幾らでもいるのだから、番い(カップル)が成立するのに番い(カップル)の別れが在らずとも──」
「うるせェ!! この世はな!! 諸行無常なんだよ!! 誰かの幸せは誰かの不幸なんだよ!! メリーバッドクリスマスなんだよ!! 分かったか!!」
「…………わ、理解った」
……若干力業だったような気がしないでもないが、まあいい。伊達メガネの論破には成功した。