ぜろ
目を開けて。
誰かの声で、うっすらと意識が芽生えた。
私が何者なのかはわからない。ただ、どこかに立っていた。
緑一面の丘だった。身体の輪郭がぼやけて、はっきりしない。
少し冷たい風が吹いているようだ。髪がそよそよとなびく。
景色は夕焼けのように赤かった。ここには赤い空と、照らされた緑の丘しかない。
どちらかの手には、剣のようなものを持っている。
顔は少しうつむきがちで、背中を丸め、肩を落としているようだ。
そんな群像が私の周りを形づくる。
私は今生まれたばかりだ。
この私は、どこへも行かないし、どこへ行くこともない。
私は永遠にこの世界に居るだけ。
あなたがこの場所から離れても、ずっと。
ここに居る。