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十一杯目 「一緒にデュランダルを探しましょう! 」

いらっしゃいませ!

今日のオススメは、シリアス風味の特製塩ラーメンです!

塩はレピア地方に生息しているソルトビードルの巣から取り除いた特殊な塩を使用しています!


是非、最後までご堪能あれ!

「それで、私が目覚めた時には手元に《デュランダル》はありませんでした。父は、そんなものよりも私の無事が優先だと目に涙を浮かべながら言ってくれました。 」


シャロットは目に涙を浮かべながら、話を続ける。凄く悔しそうに、哀しそうに。


「でも、私は……そ、そうは思いませんでした。《デュランダル》を失った瞬間から……私の騎士としての誇りも、剣を握る意思も、消えてしまったのです。それからずっとここで武具屋を営んでいます……過去のことを忘れようって……うぅ、ぐすっ……」



目の前にいるシャロットにとって、《デュランダル》は自分が認められた証で、強さの象徴だったのだ。それを奪われ、敗北を経験した彼女は立ち直れなかった。

なら、今のシャロットに必要なものは間違いなく本物の《デュランダル》だ。


シュウは何かを思いついたように立ち上がると、拳を握りしめてシャロットへ口を開く。



「自分の大切な物を失う辛さ、分かります!ずっと昔のことかもしれない!でも、今のシャロットさんには《デュランダル》が必要なんじゃないですか?! 」


「……だ、だとしたら、どうすれば良いんですか!ずっと、《デュランダル》を探そうと必死に動いてみました!色んな人にお願いして情報も!でも、無意味でした……!レピアじゃ、何も情報はッ……!! 」


泣き叫ぶシャロットに、シュウは提案する。

それはただの思いつきで、勝手かもしれない。それでも、勝手だと一蹴することは出来ないはずだ。



「俺と一緒にティアロ王国に行きませんか?それで一緒に《デュランダル》を探しましょう!! 」


「え……?で、でもッ……ど、どうしてそこまで、私の過去なんてシュウさんには関係ないじゃないですか! 」


シャロットは困惑したように否定した。

確かに過去は関係ない。でも、今、俺はシャロットさんが幸せそうには見えない。

悔しさと哀しさ、両方を常に持ったまま生きていくなんて辛いだろう。



「そこは関係ない!俺はシャロットさんに親切にされた!なら、そのお返しをしないと俺の性根が許しません!だから、俺に手伝わせてください!お願いします! 」


深々と頭を下げ、懇願する。

親切にされたことは人間なら誰しもお返しがしたくなる。俺は少なくとも、彼女に武器を無償で貰えたことに感謝をした。

ならば、俺は彼女に感謝をされるようなことをしないといけない。

そうでなくても、俺がしたいのだ。



「……分かりました、本当にありがとうございます。一緒にティアロに行ってください! 」


「はい!勿論です! 」


交渉は成立した。

俺とシャロットさん、ルティア、セフトの四人はティアロ王国に行くことになった。

失われた聖剣デュランダルを取り戻す為にーー。






出発は明後日に決定した。

シャロットさんは、店を暫く休む為、準備が必要らしい。

セフトは泊まる家も無いらしく、武器を盗った申し訳なさからか、シャロットさんの手伝いをすると言っていた。


俺達は目的地を決め、レピアの城下町を歩いていた。まだ昼頃ということもあってか、商人達が大きな袋を担いで仕事をしている。

果物屋や魚屋、肉屋も張り切って店を切り盛りしていた。



「なあ、ルティア。エクス家まではまだかかるのか? 」


俺達はシャロットさんの話に出てきた、偉大なるレピア王国の騎士長を務めていたフィガロさんに会いに行くことにした。

あの当時のことを聞き、今から一緒にティアロへ行くことを伝える為にだ。


「エクス家は高貴族だから、王都付近に建てられているのよ。昔、郊外付近にあった家がデュランダルの影響で燃やされて、場所が変わったそうよ。 」


「家を燃やすって……! 」


自分の欲や富の為に他人に迷惑をかけ、家の位置を変えてしまう。

シュウは不快な気持ちになった。

眉を細め、真剣な表情でエクス家に同情する。



「シュウ、何かお腹空かない? 」


「ああ、減ってるけど……」


まさか、ルティアの手料理じゃないよな。

シュウは自分の中でよからぬことを考えていた。

だが、その予想は外れる。



「私の知り合いの店なんだけど、寄る? 」


「ああ、そうしよう! 」


内心心底ホッとして、シュウは喜びに満ちた様子で返答した。


店の位置は大通りから少し外れた小道を抜けた先にあるようだ。シュウは、ルティアの後をついて行った。


すると、真っ黒い看板に赤い文字で《dark matter》と書かれた喫茶店?のようなこじんまりとした店が見える。

《dark matter》暗黒物質という意味だが、料理屋なのか?やや心配気味になっていると、店の前でルティアが立ち止まる。



「はぁ……何か用? 」


ルティアは深い溜息を吐いて、シュウの背後の電柱付近に問いかける。

シュウはルティアが険しい表情で口を開いたので、やや驚いた様子で電柱付近に視線を移した。



「任務遂行ハ確認シタ。活動を休止すルのカ? 」


電柱付近に立つのは、黒いローブを身に纏い、顔を狐の面で隠している人物だった。

声は完全に機械音で、男なのか女なのか察しがつかない。

ルティアの知り合いのようだ。



「エリンから聴いてない?命の恩人に恩を返さないといけないの。私の仁義よ! 」


「警備隊ノ娘が言っテいタナ。ソウカ、そノ仁義。通シたラ、必ズ戻レ! 」


シュウを真ん中に会話が進んでいく。

面を付けた人物はルティアの返答が返ってくる前にその場を去った。

今の人物は誰?ルティアに聞こうと思ったが、表情の曇った彼女に聞けなかった。


「シュウ、ご飯はやっぱり、また今度でいいかな?気が変わっちゃったわ。 」


「ああ、別に構わないよ。少し休んでから、エクス家に向かおうか! 」


《dark matter》と書かれた店の料理は気になったが、何となく危険を回避出来たような気がした。

ルティアのことを気遣ってか、シュウは少しだけ休憩することを提案する。

食事もしたくない状況でエクス家に行っても、あまり意味はないからだ。



シュウとルティアは、小道に戻り、近くの壁にもたれかかる。



「……アイツ、私の傭兵ギルドのボスやってる人でね。 」


ルティアから話してくれたことに喜びを感じ、ぽっと浮いた顔になった。

そんなシュウに視線を傾けず、彼女は続ける。



「まあ、私の家族、なのかな?そんな感じ……」


家族か。全然会えていない。

今、どうしてるんだろう?

俺がトラックに轢かれて死んだことを悲しんでるのかな。

そう言えば、この世界に来てから一度として元いた世界のことを考えてなかった。



「休憩終わりにしよっか!気遣いありがとね。シュウ、行こう! 」


「ああ! 」


でも、今考えるのはやめよう。

今は、シャロットを助ける為に。


《デュランダル》の事だけを、

目の前のことだけを考えるべきだ!!




十一杯目の完食、誠にありがとうございます!

どうでしたでしょうか!

塩っぱさと中に広がる家族を感じられるような心地の良い甘み、旨味!

ここまで食べて頂けたのなら、堪能してくれたことでしょう!


次回もご来店をお待ちしております!

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