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十杯目 「私の持っている剣はそんなにヤワじゃないわ! 」

明けましておめでとう御座います!

今年もよろしくお願いします!


いらっしゃいませ!今日のオススメは、お餅を使用したお正月限定ラーメンです!

麺の代わりにお餅を細長く切り、醤油ベースのスープで仕上げた特上の一品!

お腹いっぱいになること間違いなし!


皆さんはお餅で喉を詰まらせないように気をつけてくださいね〜!


第十話


「さて、フィガロの娘よ。力を見せてもらおう! 」


「……っ!! 」


加速し、迫ってくる男は身体を後ろへ仰け反らせると、大剣を頭上から振り下ろす。

"ぶんっ!"という空気を切り裂く音と共に大剣は空を斬り、地面を深く抉った。



「ほう……今のを避けるか。 」


シャロットは持ち前の反射神経で敵の攻撃パターンを察知し、後ろへ飛んで回避に成功した。

男はシャロットの動きに感心したように喉を鳴らす。



「……次はこっちから!! 」



地面を抉った瞬間の大剣は俊敏性の欠片もない。相手に大きな隙を与えてしまう。

間違いなく、今が攻め時だろう。



ーーそのはずなのに、何故?



地面を蹴って加速し、男との間合いを詰めていたシャロットは危険を察知したのか、その場で踏み止まった。

まるでその場の重力が重くなったかのように、動けなくなってしまったのだ。




「俺の絶対領域(テリトリー)に気がつくとは、中々の判断力の高さだな! 」



あと数秒後に彼の言う"絶対領域"に入っていればどうなっていただろう。

近づこうとした時に感じた殺気だけで言えば、身体が真っ二つでは済まない。

木っ端微塵にでもされていたに違いない。



「……恐るべきほど隙がない! 」


「お褒めに預かり光栄だよ。敵の副長に褒めてもらえるとは思わなんだ。だがこれで、お前は俺に勝ち目が無いと分かってしまったな?さて、どうする? 」



男は燃え盛る大剣を肩に乗せて、シャロットを嘲笑した。

確かに男の言う通り、近づけない限りは剣を当てることは出来ない。

当てられなければ、勝ち目はない。


けれどーー



「私の持っている剣はそんなにヤワじゃないわ! 」



そう言って、シャロットは地面に剣を刺した。

ーー直後。

地面に刺さった《デュランダル》は、今までに無いほどの黄金の輝きを見せる。

そしてそれは、"大地"にも反映された。

発光する大地に驚きを隠せない男は、目を見開き、辺りを見回す。




「な、なんだこれは!!その剣の力か?! 」



発光した大地は、《デュランダル》を所持する者の意思を尊重する存在となる。



「爆散しなさい! 」



シャロットの言葉と共に、発光した大地は小刻みに爆発を重ねる。

その爆発は男すら巻き込み、周囲に甚大な影響を及ぼした。

既に廃墟と化した街並みは、地面が爆散したことによって、建物は次々と崩れ落ちる。

当然、辺りは砂煙が立ち昇り、視界は真っ白に閉ざされた。

だがしかし、男は何も動揺せず、疑問げにシャロットへ問いかけた。



「地面を爆散させてどうする?それがお前の勝利に必要なことか? 」



男はシャロットの行なった行動が理解出来なかった。爆発も大したダメージではない。

小針で身体を刺されているかのような弱い痛みが小刻みに走るだけ。




「何のつもりだ?まさか、部下を置いて逃げるのか?気配は見えてるのだぞ? 」


男は既にシャロットの気配を付近に察知していた。ハッキリとどの場所にいるかは不明だが、確実に近くに潜伏しているようだ。

精神を研ぎ澄ませ、周囲に注意する。



「逃げてなんかないわ!私は貴方を倒すのだから! 」



「……っ!そこかァッ! 」


シャロットの声が周囲で聞こえ、男は身構えた。そして直後、刃が空を切り裂く音を察知して、音のした背後へ振り向きざまに大剣で牽制を行おうと振り下ろす。

男はシャロットが自分の行なった挑発でノコノコと出てきたと勘違い(・・・)をしていた。


大剣が振り下ろされたことによって起こる風力で周囲の煙は吹き飛ばされる。



ーーだが、そこにシャロットの姿はない。

あるのは、レピアの騎士団の殉死した兵士が使っていた剣が地面に転がっているだけだった。



「……残念ね、ハズレよ! 」


頭上からシャロットの声が響き、男は思わず上を向いてしまった。

大剣は振り下ろした状態につき、今持ち上げても間に合わない。そう思考を駆け巡らせている余裕はなかった。


"グシャッ"と、生々しい音がして、頭上から振り下ろした《デュランダル》が男の顔面の右側に突き刺さった。


「ぐっ……あ"あ"あ"ぁぁぁぁ!! 」


断末魔のような悲鳴を吐き、男は燃え盛る大剣を手放して、地面に転がした。



「はぁ……はぁ、はぁ、貴方を捕縛します。顔の左側がそうなりたくないなら、直ぐに投降してください。 」



「舐めるな、このクソアマ!こ、この程度でやられる俺じゃないッッ!! 」



嫌な予感がしたのか、シャロットは直ぐに血濡れの《デュランダル》を抜き、後退して男との距離を取った。



「……フィガロの娘を油断していたオレが馬鹿だった。仕方ない、本気でかかるかッ! 」


男は潰れた右目を手で抑え、血を払うと、地面に転がった《レーヴァテイン》を拾った。



そして次の瞬間にはーー



「……ふんっ! 」


地面を蹴って一気に加速した男は、シャロットとの間合いを一瞬で詰める。凄まじい速度で振り下ろされた大剣に、《デュランダル》で牽制の態勢を取る。

だが、敵は防御の態勢を取ったシャロットへ、嘲笑を浮かべた。



「……ふっ、所詮はガキよ。俺の相手ではない! 」


「……っ!! 」


直後、空気を焼き焦がす大剣は《デュランダル》との接触を行わず、シャロットの右肩を切り裂いた。



「ぐぁっ……ぁぁぁああああ!! 」


痛烈な悲鳴と共に切り裂かれた右肩から鮮血が滴り落ちる。



何が起こったのか、全く理解が出来ない。

確かに自分はデュランダルで防御したはずだ。

しかし、今見たことが正しければーー



"レーヴァテインが防御をすり抜けた"


ことになる。

痛烈な感覚が右肩を襲うが、更なる追撃を見据えて、後ろへ一歩後退した。



「チッ……良い判断だ。その場に留まっていれば俺に八つ裂きにされていただろう! 」



「くっ……あっ……な、何が、どうしてッ! 」


剣が防御をすり抜けるなどあり得ない。

それが"普通の剣"だったならばだ。


敵の持つ《レーヴァテイン》は、自分の持つ《デュランダル》と同格の魔剣。

そう考えた時、自分に勝ち目はないと確信する。


それでもーー


「……お前と俺では比べるに足らない。同格の剣を持っていようが、お前はまだまだ餓鬼も同然よ! 」



「はぁ……はぁ、そ、そんなの関係ない!私は父からこの剣を貰い受けた!レピア王国騎士団副長のシャロット・エクスなのだから! 」


シャロットは右肩の痛みなど気にも留めず、敵将の首を討ち取ることだけを考える。



「……ふっ、話にならんな。終わりにしてくれよう!コレは右目のお礼だッッ!! 」


男は加速して、再びシャロットとの間合いを詰めると《レーヴァテイン》を容赦なく振り下ろした。

それはシャロットとの激闘に終焉をもたらす一撃となる。


ぼやけた視界の中で自分が持っていた金色の剣は、男の掌の上に渡っていくのが見える。

けれど何も言えず、彼女の熱を帯びた身体全体は燃え尽きるように、その場で意識を失った。





「……デュランダルは有難く貰っていくぞ。若き娘よ! 」


地面にうつ伏せで倒れているシャロットを横目に、男はそう言い残し、彼女が手にしていた黄金の魔剣デュランダルを持ち去った。






ーー数時間後。

フィガロが大勢の救援と共に街へ戻ってきた時には、敵の姿は無かった。

あるのは、力尽きた娘の姿と殉死した兵士達の遺体。


「シャロット……!! 」


慌てて馬から降りたフィガロは、地面に倒れているシャロットを身に寄せた。

呼吸と胸の心拍で(せい)があることを確認すると、ホッとしたように胸を撫で下ろした。


「ここは任せるぞ!俺はシャロットを……! 」



殉死した兵士達の遺体を台車に乗せるようにと指示を向けたフィガロは、シャロットを抱き抱えて馬に跨り、鍔を返して、荒れ狂った街を後にしたのだった。

十杯目の完食、ありがとうございました!

いかがでした?急いで召し上がって、喉に詰まりませんでした?そういう事故多いですからね。


お正月で浮かれていても、心にどこかストッパーを置いて楽しんでください。


ありがとうございます!

またのご来店をお待ちしております!

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