猫の天使
私の友人のエピソードを小説にしてみました
楽しんでもらえたら嬉しいです
私、48才いまだに独身。
銀座の理容室で理容師をしている。
私の唯一の楽しみは休みの日に愛猫のニャン太とじゃれあって遊ぶ事だ。帰ると必ずニャン太の顔が真っ赤になるくらいキスをするのが私の日課になっている。
ニャン太との出会いは、私のマンションによく遊びにくるようになったのがきっかけだった。どこかの飼い猫らしく、首輪には可愛らしいピンクの鈴が着いていた。
誰かの猫だと知りながら、私は勝手にその子にニャン太と名前をつけ、トイレまで用意してあの子が来てくれてるのを楽しみに待ちわびた。
そんな、ある日たまたま隣の家が引っ越すと言う話をその隣に住む女性から聞いた。
何だか猫ちゃんをたくさん飼っていたらしく、次の引っ越し先では飼えないという。猫ちゃんのほとんどは血統書付きで引き取り先は決まったという。ただ一匹だけ雑種で、もらいてがなくて困っているとか。。。
猫かぁ、最近、ニャン太も遊びに来ないし飼ってもいいかな?と思い、会わせてもらうことにした。
隣の女性が部屋のなかから大切そうに抱いて来たのは、紛れもなくあのニャン太だった。
茶色のシマシマの緑色の目をした可愛いらしい猫、首には可愛いいピンクの鈴が付いている。
その場ですぐにうちの子になってもらうと決めた。
飼い主のその女性はとても喜んで、餌やトイレの砂などたくさん渡してくれた。
それから私とニャン太は11年、毎日同じ布団で寝ている。
その日は遅番だった、家に着いたのは10時をまわっていた。
玄関をあけると、いつもいるはずのニャン太の姿がなかった。
私は不安になり部屋のなかを探して歩いた。
ニャン太はソファーのしたでぐったりと倒れていた。。。
あわてて動物病院の緊急連絡先に連絡した。
先生はすぐにつれてきてくださいと言ってくれたので、暖かい毛布にニャン太をつつみ、泣きながら動物病院へ向かった。
先生はあともって3日だと私に告げた。
帰ってから私は3日間、食事とトイレ以外の時は、寝ずにずっとニャン太の側で過ごしていた。
3日目の夜だった、ほんの一瞬だった、30分、たったの30分眠ってしまったその間にニャン太は旅立ってしまった。
その日は12月24日、私の誕生日だった。
私はニャン太を抱きながら大声で泣いた。
ニャン太を供養してあげて写真を飾った。写真は私のキスをうけた真っ赤な顔のニャン太にした。写真の側には、出会った時に着けていた鈴のような可愛いピンクの小さなお花を供えた。
あれから1年、寂しさは拭えなかった。
今日は私の誕生日、ニャン太を思い切なくなる。
帰り道、駅で金髪の綺麗な顔をした少年が歌っていた。
優しい歌声に引き寄せられ、しばらく聴いていた。
私の寂しい心が少し癒されていくのを感じた。私はそっと少年のギターケースの中に千円札を落とした。
次の日の帰り道、また同じ場所で金髪の少年は歌っている。
雪だというのに。。。足を止める人は一人も居なかった。
可哀想に思い少年の前に行くと少年が話しかけてきた。
「ねぇ、おねいさん昨日も来てくれたよね?」
少年は私の事を覚えていたのだ。。。
「この雪じゃ誰も来てくれないから、暖かいお茶でも飲みにいきませんか?」
そう、人懐っこい笑顔で少年は笑った。
私は特に予定もなかったので一緒に駅ナカのカフェに向かった。
二人でコーヒーを頼み、自分は銀座で理容師をしていること、少年が、何故歌っているかなど、とりとめのない話をした。久しぶりにとても楽しかった。
別れ際に少年が、言った。
「口紅の色、変えたんだね?」
私は凄くビックリした。
去年のクリスマスイブのあの日、私は長年使っていた赤い口紅の色を変えていた。
ビックリした顔をする私に、
「前の色のが好きだったな。。。」
そう言って微笑み少年は去っていった。。。
その日以来、少年の姿はない。。。
私は思う、あれはニャン太だったんじゃないんだろうか。。。
鏡に向かった私は、口紅の色をそっと変えた。。。
可愛いニャン太くんに私も会いたくなりたした。
あなたの元にも亡くなった猫ちゃんやワンちゃんも来ているかもしれません