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異世界転生した俺と私   作者: 恵樟 仁
3/19

序章③ 二人の出会い



 私は重たい瞼を一生懸命に開け、眼を開ける。



(私、何をしてたんだっけ?)



 寝起きなのか、鈍い頭をフル回転させながら自分が一体何をしていたのか思い出そうとする。 

 ――――――そうだ。

 確か、不良たちに絡まれて愛と一緒に逃げて・・・それでどうしたんだっけ?


 私は空を仰ぎ、さらに思い出そうとすると違和感に気付く。

 あれ・・・空が無い?

 頭上を仰ぐと一面は黒一色であった、太陽はもちろん、月も星もなければ見慣れた電線もない。



(どういうこと?)



 私はさらにここに至るまでの事を思い出そうと頭を回転させる。不良から逃げてて、その後――――――――思い出した!

 あの時、路地を抜けたらトラックが横転して、余程スピードを出していたのか転がりながら愛に向かって突撃してきたのだ。私はそれを見て咄嗟に愛を突き飛ばして・・・・・・それで、どうなった?



「愛!!」



 愛は無事なの?――――――そもそも私は生きているのだろうか?

 ここが死後の世界だったとしても納得がいく、なんせ周りに何もないのだから・・・そう思い再び辺りを見回す。


 私は愛の名前を呼ぶが、返事は帰ってこなかった。ここが死後の世界だとすると愛は無事なのだろうか?いや、そもそも死後の世界があるとは限らないか・・・。




 ここが何処かもわからない、どうすればいいのかもわからない、そんな状況に私は不安を覚え始めた。

 焦り始め、とにかくどこかに移動をしようと思い、足を踏み出すと―――――何かを踏んだ感触が靴の裏に広がる。



「ぐぇ」


 

 カエルを踏んだような声が聞こえて、何事かと自分の足の下を見てみると、制服を着た男子が倒れていた、私の高校とは違う制服である。その男子の頭を思いっきり踏んでしまったのだ。

 



「おいコラ、いつまで踏んでやがるんだ?」

「あ、ごめんなさい!」



 慌てて足を退けると、男はゆっくりと起き上がった。

 先ほどから上ばかりを気にして下を見ていなかったが地面もやっぱり黒一色である。踏んだ感触はアスファルトでも土でもないような奇妙な感覚だった。



「誰だお前?」

「あ、あなたこそ・・・」



 やはり初対面の相手である、相手も私の事を知らないようなのでやはり、うちの学院の生徒ではないだろう。これでも私は生徒会長なのだ、まったく知らないなんてことは無いと思う・・・多分。



海星学院(かいせいがくいん)の生徒じゃないわよね?」

「あん?どこだそりゃ?」



 やっぱり、違う学校の生徒らしい。



「それより、ここはどこだよ?」

「それは私が聞きたいわよ・・・」



男は黒い髪をかき上げながらこちらに尋ねてくるが、私もここが何処なのか皆目見当もつかないのだ。



「ちっ、使えねえな」

「なっ、何よその言い草!」

「ふんっ」



 男のあまりの言い草に私は語気を荒げる、一体何なのこの男・・・。



「あ、もしかして、あなたがここに私を連れて来たんじゃないでしょうね!」

「は?ふざけんなっ、誰がそんなことをするかよ!」

「じゃあ、なんで私たちはこんなところにいるよの!」

「知らねぇよ!」



 男の態度にイラつき、私は頭の隅ではこの男に連れてこられた可能性が低いことを考えていながらも八つ当たり気味に言葉をぶつけた。



「ん?ちょっと待てよ?俺、そもそも生きてんのか?」

「え・・・?」

「確か、トラックが落ちてきて俺はペチャンコになったんじゃ?」

「トラックが落ちてくるってどういう状況よ・・・」



 一体何が起きたらトラックが落ちてくるなんてことになるのだろうか。



「お前はどうなんだよ?ここに来る前何かなかったのか?」

「私は、愛を助けようとして転がってくるトラックから愛を突き飛ばして・・・それで」

「トラックが転がってくるって・・・そっちも十分ありえねぇだろ?」

「うぐっ」



 確かに、普通に考えればトラックが転がってきてそれに巻き込まれるなんて余程ツイてない人間じゃなければ起きないことだろう・・・うう。

 でも、この男の降ってきたトラックというのも十分に奇跡的な状況だと思う・・・。



「つまりあれか、俺たちは二人ともトラックに巻き込まれて死んだってことか?」

「うう・・・じゃあ、やっぱりここはあの世?」

「かもな」



その可能性もあるわよね、というか、そうとしか考えられないわ。恐らく死んだであろう2人が地球じゃ考えられないような真っ暗な空間にいる。


そして、何よりおかしいのはそんな真っ暗な空間だというのに明かりもなくお互いの姿がハッキリと見えるということだ。

――――――――――――明らかに、普通ではない。



「確かに君らの言うところのあの世に近い場所かもね」



不意に私と男以外の声が聞こえてくる。



「誰だ!」



黒髪の男が声のした方向に吠える。



「誰と言われたら・・・神様かな?」



見ると自分を神様と名乗る胡散臭い男がにこやかに笑いながら座っていた。



「おいおい、さっきまであんなところに椅子なんてなかったよな?」

「ええ、それにあの眼鏡の人もいなかったわ」



黒髪の男の問いに答える。

男の言うとおりだ、先程まであそこにあんな椅子はなかった。簡易的な椅子に見えるがどこか存在感のある椅子である、あんなものがあったら絶対気づいているだろう。


「神様だぁ?冗談は顔だけにしやがれ!」

「ひどいなぁ、相馬志隠くん」

「なっ、なんで俺の名前を!」

「君だけじゃないよ、皇紫苑さん」

「なんで私の名前を・・・」



神様と名乗る眼鏡の男は私や男のフルネームを言い当てた。私達を調べ上げているストーカー・・・という訳ではないだろう。この場所を見るに本当に神様なのかも知れない。



「んで、その自称神様が俺達に一体何の用だよ?」

「ん、君達を次の世界に送る案内をしようと思ってね」

「次の世界?」

「そう、次の世界!いやぁ、君たちの前世は見ていたよ、実に面白かった!でも、残念ながら不幸な事故で命を落としてしまったからねぇ。次の世界に転生することになったのさ。それで、次に君たちの行く世界は前の世界みたいに平和じゃないからねぇ。気に入った君たちには神様の僕がすこし贔屓をして上げようかなって思ってね。」

「贔屓?」

「そう、普通なら前世の記憶も消去してまた、赤ん坊からやり直させるんだけど君達は今の姿のまま記憶を持って次の世界にいってもらうつもりさ、もちろん、神様からの恩恵も上げちゃうよ」



正直、胡散臭いことこの上ない。別の世界だとか神の恩恵だとかそんなものが本当に存在するというのだろうか?仮に存在したとしてなぜ神様が私達にそんな贔屓をしてくれるのだろう?



「これって異世界転生ってやつか?」

「そういえば、そんな漫画を愛が楽しそうに読んでいたわね・・・確か、別の世界に生まれ直して剣とか魔法とか使うやつよね」

「その通り、話が早くて助かるよ。君達が次に行く世界も魔法やスキルが存在するファンタジーな世界だよ」




魔法というのはよく、愛が私にやらせてくれたゲームに出てくるあの魔法だろうか?

だとしたら、是非使ってみたいと思うけど・・・果たして信用していいものか?



「意味がわからん、なんで俺がそんな世界にいかなきゃなんねーんだ?」

「それは、君達が死んじゃったからさ。そして次行く世界も元々決まっていたんだよ」



くっ、やっぱり私達は死んでしまっていたのか。だとしたら、この神様に加護をもらって転生をした方がいいのかしら?

でも、この人が本当に神様とは限らない、百歩譲って人間じゃないとしても、もし、悪魔やなんかで私達を騙そうとしていたら?



「それじゃ、向こうの世界の説明をするね、今からあげるカードは向こうでは誰もが持っている身分証みたいなものなんだ」



自称神様は私達の前に丁度、手のひらサイズのカードを出現させた。



「詳しくステータスを見たいと念じてごらん」



自称神様のいう通り詳しく見たいと念じてみるとまるでホログラフの様に内容が映し出される。

そのカードにはシオン=スメラギと私の名前が書かれている。

そしてレベルやスキルなど普段では見慣れないものが書いてあった。文字に起こすとこんな感じである。



☆シオン=スメラギ

 職業 なし

 レベル 1

 年齢 17

 性別 女

 種族 人間

 状態 健康



〇スキル

 鑑定 魔再構築(マジックアレンジ)


〇アビリティ 

 魔法の天才


 

〇習得魔法

 なし



次レベル必要経験値 8

――――――――――――と、映し出された。



スキル?アビリティ?これは何かしらそれに次のレベル?



「このスキルってのはなんだ?」



黒髪の男が私と同じことを疑問に思ったらしく自称神様に尋ねる。



「スキルにある鑑定というのは僕からのプレゼントだよ、鑑定はアイテムや装備であればその名前や使用用途なんかが解るスキルだね、後はモンスターの名前なんかも解るよ。異世界の情報に詳しくない君たちへの辞書変わりだと思ってもらえれば幸いかな♪それ以外のスキルは君たちの個人のスキルだね。アビリティはスキルと違って常時発動している能力かな、才能見たなものだと思ってくれればいいよ」



スキルとアビリティ多少違いはあってもどちらも私たちの能力ってことね。



「つまり、向こうの世界では世間知らずな私たちは鑑定で色々調べながら生活しろって事かしら?」

「お、紫苑さんは飲み込みが早いね」




褒められてもうれしくない。



「次のレベルの必要経験値とかいうのがあるんだが、魔物でも倒してレベルを上げろって事か?」



魔物と言うのは愛に借りたゲームに出てきた化け物のことね。



「その通り、君達にはレベルを上げて、冒険者として生きてもらうよ」



冒険者としてレベルを上げて強くなれってことね。もとの世界じゃ、私の力は大したこと無かったから色々と悔しい思いもしたけどその世界なら力をつける事ができるかもしれない。そう思うと少しやる気が出てくる。



「それと、魔法を覚えるにはこの世界にある魔法のオーブを使用することで覚えられるよ、ただし、そのオーブを使えるのはそのアビリティとレベルが足りている人だけだね」


「そんなのどうやったらわかるんだ?」

「普通は使ってみないと分からないね、まあ、使った人が図鑑に纏めてたりもするけど……でも君たちの鑑定ならそれも調べることが出来るよ、試しにこのオーブを紫苑さん使って見なよ」



 そう言うと、自称神様は私に向かって三つのオーブを投げてきた。

 私はそれに鑑定とスキルを使ってみようとする・・・が。



「スキルってどう使うの?」

「ああ、鑑定を使ってみるんだね、鑑定しようと思ってアイテムを見てみると出来るよ」



 私は言われた通りに鑑定しようと念じてみる、すると、オーブの下に小さなウィンドウのようなものが出てきて、そこに効果れていた。


炎の矢(ファイアアロー)のオーブ

炎の矢の魔法が習得できる。

習得条件 『火の加護』もしくは『魔法の天才』のアビリティ

習得可能レベル  1


水の球(アクアボール)

水の球の魔法が習得できる

習得条件 『水の加護』もしくは『魔法の天才』のアビリティ

習得可能レベル  1


治療(ヒール)

治療の魔法が習得できる

習得条件 『光の加護』、『慈愛』もしくは『魔法の天才』のアビリティ



「わ、本当だ、なんか出て来たわ」

「どうなってやがるんだ、こりゃ?」



 目の前に出てきたウィンドウに驚く私達。



「その魔法を習得したいと念じてごらん?」



 その言葉のまま、私は魔法を習得したいと願った。

すると、オーブが光り輝いて、私の中へと入ってくる。



「お、おい!大丈夫なのか!?」



 男が慌てながら私の心配をしている、まあ、光る何かが体の中に入っていく光景をみたらそうもなるだろう。だが、慌てる男とは別に、私は自分の中で何かが変わったのが分かった、いや、変わったというより成長したという感じだろうか。



「もう一度、カードを見てみると良いよ」



 カードを取り出し、私は確認をする。


☆シオン=スメラギ

 職業 なし

 レベル 1

 年齢 17

 性別 女

 種族 人間

 状態 健康



〇スキル

 鑑定 魔再構築(マジックアレンジ)


〇アビリティ 

 魔法の天才


 

〇習得魔法

 炎の矢(ファイアアロー)のオーブ NEW

 水の球(アクアボール) NEW

 治療(ヒール) NEW


次レベル必要経験値 8



「習得魔法が増えてる……」

「そうやって魔法を覚えるんだよ、ただ、アビリティという才能が無いと覚えられないから志穏君には無理だけどね」

「ふん、いらねーよ」

「そうそう、スキルの方だけど、そっちはレベルアップや閃きなんかでも増えるから志穏君も期待すると良いよ」



 そう言われても、再び鼻を鳴らしそっぽを向く、黒髪の男。



「そうだ、スキルやアビリティの効果が解らない時はそれも鑑定で調べられるから調べてみるといいよ」



神様がそう言うので私は鑑定と念じてスキル『魔再構築』を見てみる。


鑑定結果

魔再構築 魔法をアレンジして使用することが出来る。

魔法の天才 あらゆる魔法を習得することができる。ただし、レベルは必要。


 アビリティの魔法の天才はすごいんじゃないだろうか?レベルさえ上げればどんな魔法も覚えることができるのだ……まあ、オーブを見つけないといけないけれど。

もう一つの方のアレンジってどういうことかしら?

それにしても、色々な魔法が使えると思うと、なんだかワクワクしてきたわね。


「ワクワクしてきたでしょ?君たちにはバラ色の冒険者生活が待っているんだよ!」

「おいおい、なんだよそれ?」



黒髪の男が再び、神様を睨み付ける。

どうもこの男はさっきから言葉の節々に乱暴さが見えて好きになれない。折角、神様が色々としてくれているというのに。



「なにがかな?」

「なんで俺達が冒険者とか言うのにならないといけねーんだよ?」



 黒髪の男がそう言い、私も気付く、そうよ・・・なにもわざわざ危険な冒険者とか言うのにならなくてもいいんじゃないかしら?普通にお店とか開いて暮らしても問題ないはずよね?

 そもそも私は、あの自称神様を本当の神様とまだ信じていなかった筈だ、それなのにいつの間にか本物と信じてしまっていた。―――決して、魔法に惹かれて思考停止していたわけじゃない。



「それは困る」

「何が困るのかしら?」



 私が自称神様に尋ねる。



「それだと僕がツマらない」

「ああん?」


 

 予想外の言葉に黒髪の男がまるでヤクザのような顔をして凄む、やっぱりあの黒髪の男は好きなれないわね・・・きっとああやって色々な人を脅したりして迷惑を掛けていたんだわ。



「折角、君達をこの世界に連れてきたんだ、普通に生活されても僕がツマらないじゃないか」

「だから、なんで俺達がてめーを楽しませないといけねーんだよ!」



自称神様が言うことに黒髪の男は反論する、だが私は違うことに引っ掛かっていた。



「ちょっと、待ちなさい。あなた今、連れてきたって言わなかった?」

「あ、そうだぜ!・・・確かに、さっきは俺たちは不幸な事故で死んで、次の世界は決まっていたつってたよな?」



そう、その言い方だとたまたま死んだ私達をこの自称神様が気に入っていて、次の世界の手助けをしてくれると言うことだったはずだ。



「今の言い方だとアンタが俺達を殺して連れてきたって聞こえるぞ?」

「・・・・・・ちっ」



今舌打ちしたわよね、思いっきり聞こえたわよ!



「嫌だなぁ、死んだ魂の君達をこの僕の空間に連れてきたって意味だよ♪」



辻褄は・・・まあ、合うけど、信用できないわね。



「信用できないわね」

「ああ、まったくだ、大体、女と一緒に戦えだ?できるわけねぇだろ!」



――――――――――――――ちょっと待て。



「ちょっと、そこの犬男、今のはどういう意味かしら?」

「だから女を戦わせるなんて・・・って、誰が犬だ!!」

「さっきからキャンキャン吠えてばっかりじゃない、うるさいったらないわ。」

「吠えてねぇよ!この、絶壁女!!」

「・・・・・・あ゛ん゛?」



絶壁・・・どこがとは言うまい。だが、今まであえて避けていたがそう、才色兼備である紫苑にも唯一、ないものがあるそれが今、志隠が絶壁と例えたその部分であった。



「―――――――――――――――――殺すわ」



先程までの透き通る綺麗な声とは裏腹に、まるで地獄の底から響く悪魔のような声で私は呟いた。



「あ?やれるもんならやってみ―――――――ぐぴょはぁ!?」



志隠の口から今まで聞いたことの無いような悲鳴が上がる。自称神様はその無慈悲な攻撃に手で目を覆うのであった。



「し、紫苑さん、さすがにソコを蹴るのは女の子としてどうかな?」



そう、紫苑は怒りに任せ、黒髪の男の象徴を蹴り上げていたのだ。

悶絶する志隠に自称神様はトントンと軽く腰を叩いてやるのだった。



「良いザマよ!」



男の急所を蹴り上げ、腕を組ながら満足そうに言う私の姿を見て自称神様は背筋が寒くなったのか顔が少し青い。



「それじゃ、次の世界で冒険者をやることに決定ということで良いかな?」



 黒髪の男の姿を見て身の危険を覚えたのか少し早口で神様はそう言う。



「言い分けないでしょ!百歩譲って冒険者は良いとしてもこの男と一緒なんてお断りよ!」

「そ、それは・・・こっちのセリフ・・・」




まだ、痛みが完全に取れていない志隠は声を掠れさせながらも反論をしてくる。



「一緒じゃないと困る」

「なんでよ?」

「2窓って疲れるんだよねえ」

「意味がわからないわよ・・・」



何よ、2窓って。



「とにかく、私は御免よ!」

「わがままですねぇ」



あんたが言うな!

どう考えてもあんたのわがままでここにつれてこられたんじゃない!



「あ、そうだ、だったら二人を一緒にしちゃえば良いかな、そうしよう。」

「いくら言ったって私はこの男と一緒になんて行かないわよ」

「まあ、そう言わずにもうひとつプレゼントをしてあげるから」



そう言うと自称神様は人差し指の先を光らせるとその光を私と悶絶男に投げた。



「な、何!?」

「身体が光ってやがる!」



 私と悶絶男の体が光り出すと、自称神様が口を開く。



「大丈夫、君たちを向こうの世界に送ってあげるだけさ、あ、そうそう、向こうの世界に言ったらポケットに入っているメモを見るといいよ、きっと君たちの目標になるはずだから」


「一体何を・・・」



一体何を言っているの!と言おうとしたのだがそう言い切る前に私たちを包む光が、眩く輝くと私と悶絶男は姿を消した。




「―――――期待してるよ」



誰もいなくなった空間で再びそう言う自称神様の顔は先程までの軽さは無くなっていたのだった。










不意に股間の痛みがなくなり、不思議に思い目を開くと、そこは大草原であった。


回りには、あのいけすかない絶壁女もいなければ自称神もいないし、もちろん遼もいない。俺は次の世界とか言う場所に飛ばされたようだ。



「はっ、絶壁女がいなくてせいせいしたぜ」

(絶壁って言うな!)

「なっ!」



不意にあの絶壁女の声がする。俺は辺りを見回すがそれらしい姿は見つからなかった。



「どこにいやがる!絶壁女!!」

(アンタ、本当に殺すわよ!そっちこそ、どこに隠れてるのよ!)


「はあ?俺は隠れてなんていねえぞ!」



 俺は何度も辺りを見回すが絶壁女の姿は見えなかった。



「一体どうなってやがる・・・声は聞こえるのに姿が見えねぇ・・・」

(それはこっちのセリフよ・・・周りは川と草原しかないし・・・悶絶男の声だけ聞こえるし)

「誰が、悶絶男だ!」

(悶絶してたじゃない!)

「お前が蹴るからだろ!!」



 あの時の痛みを思い出し、改めて股間を抑えようとするがそこには長年付き添った親友の感触が無かった。

 よく見ると、腕も細い、俺の腕はもっと筋肉がついていたはずだ・・・どういうことだ?


 嫌な予感がし始めて、 俺がなんとなく胸に手を持っていくとそこにはささやか、本当にささやかながら柔らかい膨らみがあった。



(何で勝手に手が動くのよぉ!)



これってあれか?俺があの絶壁女になっちまったってことか・・・・・。

 俺は慌てて近くの川にまで走る、水面に浮かぶ自分の姿を確認するためだ。


(ちょっ、体が勝手に動くんですけど!?)



 絶壁女の戸惑う声がする、この声の意味だけでも十分ではあるが、まだ、自分の状況が信じられず、川まで走り、自分の顔を映した。


 ―――――――そこには、絶壁女が映っていたのだ。



「なんじゃこりゃああああああああああ!!!」



 俺の悲痛な叫びはこの大草原に木霊するのであった。


プロローグが終了になります。

これから始まる二人の旅はどうなのことやら?

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