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未来視の魔女  作者: 譜楽士
黒い貴女が魔女になるまで
3/37

あてにならない未来予報

 目の前の彼女と、記憶の中の彼女の姿があまりにかけ離れていて、あたしはそっと頭を押さえた。


「どうしたの? 広美」


 ちょっと待って、あたしに記憶と現実の区別を付けさせてくれ。

 この混乱の原因である関掘(せきぼり)まやかから、にこやかに声をかけられ、あたしは心の中で彼女にそう言った。

 まやかのしゃべり方は、一年生当時の舌っ足らずな口調から、滑舌(かつぜつ)のよい聞き取りやすいものに変わっている。

 身にまとう雰囲気も、お姫様というより即位した女王だ。

 改めて振り返ってみると、一番外面的に大化けしたのはこいつだな……。


 あのバカ弟子は、お姫様時代のまやかを見てみたかったとか、そんな呑気なことを言ってたけど、実際にやったら拒絶反応で吐くんじゃないか?

 そう思うくらいの変貌っぷりだ。彼女がこうなる過程にあった出来事は、まあもう少し後で話すけどさ――それにしたって、人ってこうも変わるもんかね?

 そんなことを考えながら、あたしはまやかに手を振る。


「なんでもない。ちょっと昔の変なことを、思い出しただけ」

「そう。まあ卒業式が終わってすぐだものね。今まであったことを思い出したりもするわ」

「うんソウダヨネ。あたしたち本当に、今まで色々あったもんネー」


 その色々あったの筆頭に言われてしまっては、しゃべり方が棒読みになるのも致し方なし。


 ……まあ、そのおかげで今あたしたちはこうして、第一印象の良し悪しに関わらず、一緒にいることができているわけなんだけど。

 そんな風に考え、周囲を見回す。

 貝島優(かいじまゆう)、関掘まやか、あとそこでパンケーキ食ってるのが今泉智恵(いまいずみともえ)

 そして、やはり静かに紅茶を飲む、平ヶ崎弓枝(ひらがさきゆみえ)


 あの時あんなだった連中と、こうしている未来なんて、本当あのときはカケラも見えなかったなあ。

 まああの時期は、あたし自身が今より尖がってたのもあると思うけど……。


 ああ、それとさっきから言ってるこの『未来が見える』っていうのは、別にそんな怪しい話とかじゃないんだ。

 超能力を持っているとか、そういうんじゃなくて――なんていうかな。

 あたしは、限定的に『人の未来を演算できる』んだよ。


 よくいるでしょ、振る舞いを見て『ああこいつ、このままだとロクな目に合わないな』と思うヤツ。

 ああいうのを、あたしはもっと具体的に計算できたりする。

 事実、優は後輩から猛反発をされたし、まやかは一時期、自分が何を求めているのかも分からなくなった。


 人の言動から、そいつの未来を推し量っていく。

 だからどっちかっていうと、これは『予知』というより『予測』に近いかね。


 まあ、天気予報みたいなもんだと思ってくれればいいや。

 あたしが演算って言ってるのはそういうことだ。そいつの言動が変われば、自ずと未来も変わる。

 雲の動きで、明日が晴れか雨かが変わるように。

 こいつらが、あたしの予想もつかない場所に至ったように。


 そういうシステムだから、演算対象のデータが多ければ多いほど『予測』の精度は増していく。

 面倒くさいにも関わらず、あたしがあの不肖の弟子と、その周辺をウロウロしていたのはそういうことだよ。


 と――こう聞くと便利そうに感じるこの『未来予測』だけど。

 先が分かるっていったって、そんなに使えるもんじゃない。


 ご多分にもれず、自分自身の未来は見えないし。

 それに、もし仮に余計な親切心を発揮して「このままだとあなたはこんな目にあいますよ」なんて言っても、普通の人間は行動を改めないじゃん?

 だから持っていたって、実はそんなに役には立たない。

 かえって気味悪がられるか、何もしなければ「どうして何も言わなかった」って嫌われるだけさ。


 あと、もう一つこの使えない能力には、どうしようもない問題点があるんだけど――

 これって完全に制御不可能の、自動演算仕様なんだよねえ。

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