第1話
タグにある通り、初投稿かつ見切り発車です。ヤバイと感じたら「戻る」でお願いします。
自室のベッドで眠っていた筈のサラリーマン、針村祥司26歳は見知らぬ森の中で目を覚ました。
草の上に寝転がるのは、慣れ親しんだ安いベッドよりも心地よかったがそういう問題ではない。慌てて体を起こす。
「おいおい、どーなってんのよコレは。服まで違うじゃねーの」
Tシャツに短パンというラフな部屋着だった筈が、厚手の灰色のシャツと同色のズボン、茶色いベストという格好だった。足元は革ベルトで固定するタイプのサンダルだ。
周囲を見回してみると、丈夫そうな肩掛けバッグが落ちている。何か手がかりにならないか、と祥司が中身を見てみるとシンプルな両刃のナイフと一冊のノートが入っていた。ノートを手に取って表紙を見る。
「タイトル『取説』って・・・役に立ちそうだが何か不安だわ。とりあえず読んでみますか。何々・・・」
『この書を手に取った貴方へ。現状を一言で表すと「邯鄲の夢」です。この世界で寿命以外の死に方をすれば、この世界での記憶を全て忘れていつも通りの朝を迎えます。詳細は伏せますがいくつかの条件を満たせば、この世界での記憶や経験を持ったまま翌朝を迎えます。同梱のナイフの使い方はお任せします』
「ザックリし過ぎだろこの説明!」
突っ込んだところで返答は無い。この状況を受け入れたくなければサクッと自害すれば日常に帰れると言うことか。しかし、この「取説」の内容が真実と判断するには早い。ナイフで喉笛を掻き切った結果、ホントに死んでしまったら元も子もないのだ。祥司は「取説」を読み進める。
『先程「この世界」と申し上げた通り、今貴方がいる場所は貴方の生まれ育った世界ではありません。剣と魔法のファンタジーな世界です。別系統の文明世界で育った人間を放り込む事で変化を促し、その様子を観察する事で次の世界を構築する際の参考にするのが我々の目的です。とは言っても、文明を発展させろとか新たな知識を持ち込めとか命じる訳ではありません。この世界で、貴方は貴方の思うまま、能力の許す限り自由に過ごして下さい。』
祥司はTVゲームの類にはあまり明るくなかったが、それでもRPGの有名タイトルなんかには触れていたし、剣と魔法の世界には心惹かれるものが有った。夏休みに観察されるカブトムシのような立場なのは少々気分が悪いが、言われた様に好き勝手やってみる気になっていた。
『ここまで読み進めた貴方なら、こちらの調査にご協力頂けるものと思われます。些少ながらお礼として、こちらでの生活に役立つであろうスキルを進呈致します。この書を読み終えれば「言語理解」「鑑定」「収納」「汎用魔法」「スキル隠蔽」の5種の他に、ランダムで何らかのスキルを獲得するでしょう』
スキル。「アビリティ」とか「とくぎ」と同様に考えて良いのだろうな、と祥司は当たりを付ける。
スキルは普段の行動によって新たに獲得する可能性があること、スキルによっては何度も使用して経験を得ることでスキルレベルが上昇すること、スキルとは別に肉体のレベルが存在し、こちらも経験によって成長すること、その他通貨やら国名・地名やらの最低限抑えておきたい基本情報等、思いの外「取説」は丁寧に伝えてくれた。
『以上で説明を終了します。貴方の今後の一助となれば幸いです。それでは良い「夢」を』
最後の一文を読み終えると、「取説」は祥司の手の中で風景に溶け込む様に消えていった。
「ふむ、これで全部か。では・・・『ステータスチェック』」
説明された通りに祥司が念じながら呟くと、目の前に半透明のウインドウが出現した。
『針村 祥司 Lv1
言語理解:- 鑑定:1
収納:∞ 汎用魔法:-
スキル隠蔽:∞
武器作成:1 防具作成:1
道具作成:1 調合:1
☆工場:1』
「・・・これでどうファンタジーしろと言うんだ?『武器や防具は装備しないと意味が無いぜ』とか言えと?」
MMORPGにまるで縁の無かった祥司は、「生産職」という概念を知らなかった。
有難うございました。ご意見、ご感想等いただけますと作者が凹んだり上がったりします。リアルが地味に疲れる感じなので次回投稿は未定です。