序章
「<シンデレラは、王子様と幸せに暮らしました>ねぇ?
こんな、ありきたりなストーリー………つまらないと思わない?」
少女は楽しそうに、呟いた。
その瞳には、光はない。
ただ虚ろな目で、本を読んでいる。
「化物は出ないの?
ライバルは?
継母と義姉達………どこが、残酷なのわけ?
それに、何なわけ?
ガラスの靴が履けちゃったら、誰だってお妃様になれたわけでしょう?」
少女は、呆れ返ったように声を張り上げる。
そんな彼女の様子に同じく、本を読んでいる面々は、苦笑した。
「これが、世界の選んだ正当な歴史。
我々は、この歴史を紡いでいく義務がある。
新たな未来を構成する上で、必要不可欠なのだ」
「それがつまらないって言ってるの!!
だから、わたしが………すっごく素敵な話に変えてあげるわ?」
少女は楽しそうに飛び跳ね、そのまま消えた。
残された者達は、困ったように頭を抱える。
「どうする?
あのままでは、前のように………世界がめちゃくちゃになる」
「今は、干渉する時ではない。
様子をみよう」
その声と同時に、闇に包み込まれた。
まるで、舞台が暗転したように。
遠くからは、少女の笑い声………。
そして、誰かの悲しむ声が聞こえてくる。
けれど、誰もそれを助けない。
いや………今は、助けるわけにはいかなかった。