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【勘違い其の二】勘違いは美少女の告白と共に……

今日の授業を全て終えた俺は、放課後に一人、校舎裏で佇んでいた。


何故そんな事をしているのかというと、今朝の下駄箱で入手した手紙が全ての発端なのである。


あの後、朝の喧嘩騒動に巻き込まれない様に、急いで教室へと向かった俺と田中君は、細心の注意を払いながら、手紙を開封したのだが、妙な仕掛けは見当たらず、封筒の中身は、その本来の役目である便箋が一枚入っているのみだった。


その便箋に書かれた内容には、今日の放課後に大切な話があるので校舎裏来てほしいという意味の文章が、丸みを帯びた綺麗な文字で書かれていたので、俺はその手紙の要求通り、こうして校舎裏にやってきた訳である。


最初は悪戯好きの男子が女子の筆跡を真似て書いたのかと思い、無視しようとしたのだが、田中君が本当に大切な話なのかもしれないと言うので、俺は顔も知らぬ手紙の差出人の為ではなく、友人田中君への義理を果たすべく、この場に居るのだ。


校舎裏に佇んでから、五分が経過した辺りで、やはり悪戯だったのではないかと思い始めたその……


「お、お待たせしたみたいで、そ、その……ごめんなさい!岸本先輩!」


……俺の目の前に、天使と見紛うばかりの、美少女が現れた。


その美少女力たるや、凡人の俺が視界に映すだけで、周囲の男達が嫉妬に狂いそうなまでの美少女である。


仮に同じ美少女と言えなくも無い、俺の姉をキレイ系とするのであれば、彼女は間違い無く可愛い系だろう。


風に流れるサラサラとした腰まで届く黒髪と、テレビのアイドルすらも霞んでしまう程の整った顔立ち。


この学校の制服である、ブレザー姿に俺を先輩と呼んだ事から、彼女は高校一年生で間違い無いのだろうが、何処となく幼い顔立ちと、恐らく150cmにも至っていないであろう身長の為か、下手をすればコスプレした小学生にすら見えそうだ。


目の前に現れた彼女の姿を観察するという、目の保養を終えた俺は、改めて考える。


彼女の登場と先程の言動により、今朝の手紙が男子による悪戯ではないという事は分かった。


多分この手紙の差出人は、この超絶美少女後輩で間違い無いだろう。


しかしそれは、新たな謎をもたらす。


全くと言って良い程に、接点が皆無な筈の俺に、彼女は一体何の用があるというのであろうか?


まずこういったシチュエーションの場合、告白という可能性が、思春期男子としては一番先にに思い浮かぶが、俺はそんな希望的観測をする気は毛頭無い。


この手紙の送り主が、この様な超絶美少女で無ければ、俺もその可能性を視野に入れていたかもしれないが、彼女程の高レベルの美少女であれば、黙って教室の席に座っているだけで、俺以上の高スペックな男達が、光に群がる夏の羽虫の如く集まって来る事は明白だ。


態々俺に告白をする筈が無いだろう。


だとすれば考えられる可能性は、かなり限られてくる。


一つは彼女の男の趣味が、非常に残念だという可能性だが、俺の様なシャイボーイは、この学校に掃いて捨てる程居るのだ。


そればらば俺に告白する前に、好みのタイプが必ず一人は告白しているだろうから、その可能性は低いと見て良いだろう。


趣味は人其々だと頭では理解しているのだが、この様な見目麗しい美少女が、折角上のランクを楽に狙えるのに、地味好きという、残念な趣味の持ち主だとは、思いたくない……


美少女の隣が似合うのは、何時の世も同じか、それ以上の輝きを惜しみなく放つ美男子と相場が決まっている。


此処まで幾つもの言い訳がましい事を言ってきた俺だが、つまり俺が何を言いたいのかを一言で纏めてしまうのであれば、どういった形であれ、彼女が自発的に俺を訪ねて来る意味が皆無だという事だ。


更に俺の様なシャイボーイは、事前にこうして予防線を張って置かなければ、後のダメージが大きすぎて、一週間は立ち直れなくなるだろう。


話を戻すが、今度は考える視点を変えて、彼女が自発的ではなく、他者の意思により、成された行動だと考えればどうだろうか。


これは俺の残念な姉から聞いた話なのだが、中学から高校における女子の一部のグループ内で、罰ゲームと称して、勝敗の着く遊びに負けた女子が、好きでもない手頃な男子に告白して、成功すれば一日だけデートをして、その後こっ酷く振るという、純真な男心を弄ぶ悪魔の様なデスゲームが流行したのだそうな……


目の前の美少女が、そんな小悪魔的な性格だとは思いたく無いが、そう考えると先程よりは、急速に現実味を帯びてくるから不思議なものだ。


いや……


彼女がそんな心の持ち主では無かったとしても、集団意識とは時に個人の考えを飲み込み、その人物が本来は決して起こさない様な行動をしてしまうというのは、十分に有り得る話である。


高校に入学して間も無く、新たに形成されたコミュニティーの中で、悪ふざけが過ぎてしまい、断りきる事が出来なくなってしまったのかもしれない。


「あ、あの……私と付き合ってください!」


俺が心の中で結論を出そうとしたその時、未だ名も知らない美少女に、俺は告白された……



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