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【勘違い其の一】勘違いは手紙と共に……

「手紙?」


下駄箱を開けると、薄い桃色の手紙が一通入っていた。


これはもしかして……


「それってもしかしてラブレターなんじゃないか?」


俺が下駄箱の前で、取り出した手紙を見ながら、考察していると、一緒に登校して来た友人、田中君が声を掛けてきた。


「……まさか」


そんな事があるわけ無い。


漫画や小説の世界じゃ無いのだから、この現代社会でその様なレトロな真似をする輩がどれ程までに、存在しているというのだろうか。


もし仮に俺が、超絶的な美少年だったとしたら、その可能性も少なからずあるかも知れない。


しかし残念な事に、俺は美人の姉を持ちながら、容姿は至って平凡そのものである。


寧ろ父さんと母さん、共に平凡な顔つきなのに、姉だけが何の化学変化を起こしたのか、同じ親から生まれてきたとは思えない程の美形なのが異常なのだ。


まあ、その代わり性格があまりにも残念な為に、その容姿もプラスに働くどころか、マイナスを突っ切ってしまい、大学生となった今でも、彼氏の一人すら居ないのだが……


……いや!


そんな残念な姉の話は、今はどうでも良い。


俺が今解決するべき問題は、この手紙をどう扱うべきかという事だ。


「……中に剃刀が入っていたりしないだろうか?」


俺はまず手紙の開封口に、何か鋭利なトラップが仕掛けられていないか、入念に確認する事にした。


先程は友人である田中君がラブレターなのではないかと、一つの可能性を提示してくれたが、その可能性は残念な事に皆無としか言い様が無い……


生まれてから早十六年と数ヶ月。


自慢ではないが、モテた事などこの人生で一度たりとも無いのである!


それどころか、男友達は友人の田中君を始め、それなりにいるのだが、同年代の女子と会話をした事も、姉とその友人を除けば、殆ど記憶に無いのだ……


そう考えると、普段から姉に対して、彼氏の一人も居ないのかと、嘆く俺ではあるが、黙って人通りの多い場所に立っていさえいれば、向こうから勝手に一目惚れした男が告白してきそうな姉以上に、伴侶を見つける事が難しいのではないかと、最近は切実に思う様になって来た。


「さっきから何をやってるんだよ岸本?」


自身の将来に大きな不安を覚えつつも、目の前の手紙の安全確認に精を出していたら、またしても田中君が話しかけてきた。


「……安全を確認中」


今はこの平和な学園で流血騒ぎを起こさない為に、集中しなければならないので、話は後にしてもらいたい。


「良く分からないけど、いつまでも此処に居たら周りの迷惑になるし、さっさと開けるか、教室に移動してからゆっくり確認すれば良いだろ?」


そう言うと、田中君は俺から手紙を奪い取って、先に廊下へと進んでいってしまう。


「危険だ!」


「何がだよ?」


田中君は、何も分かっていない。


もしもその手紙が剃刀レターであれば、先程の不用意な扱いは、指先に切り傷を作るという、大きな災害を齎す可能性があったという事に……


幸いにも怪我は無かった様だし、田中君が手紙を奪う前に、剃刀らしきトラップの存在が無い事は、ほぼ確認が終わっていたので、今回に限ってはあまり心配してはいなかったが、あまりにも無謀な真似は、一人の友人として、もう少し謹んでもらいたいと思う。


「今回は良いが……次は無い!」


俺は田中君の友人として、肩を掴み廊下の真ん中に立ち止まり、その場でしっかりと安全についての注意を促す。


「……相変わらずだな。岸本は」


俺の友を気遣う忠告に対して、田中君は小さな溜息を零した。


少し説教臭くなってしまったかも知れないが、これも田中君の安全を思っての事である。


多少疎まれる結果となったとしても、それで田中君が考えを改めてくれるのであれば、俺は何度だって説教をしようじゃないか。


「嫌ね……喧嘩かしら?」


「朝から怖いわ」


廊下で立ち止まって二人で話していると、俺達の横をすれ違った二人の女子が、何かを言っていた。


小さい声な上に、やけに足早に通り過ぎて行ったので、殆ど聞き取れなかったが、喧嘩がどうとか言っていた様な気がする。


「こんな朝早くから喧嘩だなんて、怖い話だな……」


「そ、そうだな……取り敢えず俺達もさっさと教室に行こうぜ」


田中君も俺と同じ意見な様で、苦笑いで頷きながら、教室に向かって歩き出した。


確かに何処で誰が喧嘩なんてしているのか知らないが、廊下に居れば遭遇する可能性が高くなるかも知れない。


そう考えれば、こうして田中君が教室に行くのを急かすのは、当然と言えるだろう。


それにしてもこの手紙の正体が気になる……

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