Once Upon a Time in Texas
「さてと、少し小腹がすいたな。ラスティ、ミア一緒に飯でもどうだ?」
既に棗から一度トルティーヤを貰い食べたことのあるラスティは目を輝かせ食いついた。
「え?食べる食べる。ミアもごちそうになろう。 すごくおいしいんだよ?」
ラスティやグレッグから何度もこの世の物とは思えないほどおいしいかったと聞いていたミアもごくりと喉を鳴らす。
「だ、だが。良いのか?話によれば香辛料がふんだんに使われていたと聞いたぞ。」
「ああ この世界じゃ香辛料は高価かもしれねぇがアタシらの世界じゃそこまで高価なもんじゃぁねぇ。
その程度の出費で美人なエルフのねーちゃんが同席ってんならプラスの方がでけぇよ。 な?てめぇらもお望みのエルフが飯食ってるのみてぇだろ?」
棗はくるりとマコの浮かべる眼球に振り向く。
「なぁ……。本当はさっきから気になっていたが気にしないようにしてたそれは何だ?」
ミアが恐る恐るマコの異能で浮かべていたカメラを指さす。
「あー こいつか?コイツはマコの異能のアタシらの元の世界に映像を送るための能力だ。この目玉みたいなので見てる景色がアタシらの世界でも見れている。」
: エルフ!!
: ガチエルフが見れる日が来るなんて。
: でもハーフエルフって棗言ってたよな。
: ハーフでも良いじゃないか エルフだぞエルフ。
「ほら、てめぇらのスパチャでエルフに餌付けだ。ま、飯を作るのはアタシじゃなくマコだがな。」
: こいつはホンマにおわっとるな。
: 家庭的な要素0だもんなぁ棗。
: その分ソルジャー適正高いけどな。
スパチャと共にコメントが滝のように流れていく。
「マコ、作り置きじゃ足りなそうだな。なんかエルフが腰ぬかしそうな一品を追加で作ってくれ。」
「う、うん。アメリカンタコスとワカモレサラダをお昼のために用意してあるから南米系の何かを足す?」
マコが棗に提案すると棗はにまりと笑った。
棗の育ったアメリカ南部のテキサスは食文化的にはメキシコ等南米の影響をかなり受けている。そもそも南米からの移民が多い土地だ。
その為棗は日本食よりも南米料理の方が故郷の味といえる。
「いいね。チリ・レイェノやカルネ・コン・パパスにポヨ・コン・ヒトマテ。アタシは好きだぜ。」
南米料理を全く知らない汐路は首をかしげるが先日のことを思い出し、念のため声をかけた。
「先に聞くけど……また変な材料混じってないよね? プレーリーオイスターみたいな。」
「ないな。南米はスペイン調理ベースだ。」
: 棗、ペイザンヌを知らない割には南米の料理はすらすらいえるのな……。
: え?プレーリーオイスター食ったの?
: 何それ?
: この前食ってたな。牛と豚のタマタマ。
: オゥフ
: ワカモレ以外分からねぇ……。こいつガチで頭ん中テキサスだよなぁ。高校入学から21までの日本に居たときどうしてたんだよ……。
: そら周囲の人間ドン引きだったな。 高校時代から配信してたが……JKが紙袋にリンゴとバケット突っ込んで昼飯だぞ?アメリカン過ぎるだろ。
: 母親は弁当作ってくれなかったん?親は日本人なんだろ?
: あー これは俺らが言って良いのかわからんな。複雑な事情があったんだよ。
「あん? アタシは気にしてねぇぞ? アタシは高校時代から一人暮らしだ。 テキサスに居た頃母親はワーカーホリックで家に滅多に帰ってこねぇ、親父はそれをいいことにアタシを放置して浮気三昧だった。だからあたしはボブに拾われ育てられたんだ。 アタシはてっきり母親公認の浮気かと思ってたが違ったみてぇですっかりテキサスに染まったアタシを見て母親が驚いてたぜ?
そんでアタシは今更母親面すんなって言って浮気発覚からの離婚&日本帰国って感じだな。で、日本で今更母親面してうぜぇから一人で暮らしてた。
ま、マコや華音と同じ高校だったし飯には困らなかったけどな。」
: ってことはマコちゃんと華音ちゃんは高校の頃からの付き合いか。
「おう。もう6年目だ。そろそろ二人と結婚しても良いくらい付き合ってんだぜ?」
: 何気に壮絶な人生送ってるな。いや離婚とか毒親とかはよくある話なんだがそこに軍人に育て上げられて銃の扱いを学ぶって入ると急にハリウッド的になるわ。
「ははっ ハリウッドだったら異世界にこないでシカリオだのイリーガルエージェントになるだろうがな。
ちなみにアタシはゴールドコイン貰って人を殺したりホテルに泊まったりもしねぇし、一人で麻薬組織を壊滅もしねぇぞ。」
: ゴールドコイン?
: コンチネンタルホテルのアレのことだろ。麻薬組織はまぁハリウッドじゃあり過ぎてどの作品かわからんが。
「な、なっちゃん。こ、これ追加の材料……。す、すぐ作るから……。」
棗にメモを渡すと調理の準備を始めようとマコが動き始める。
「じゃぁ私はマコちゃんの手伝いするから、汐路ちゃんは引き続きトレーニング楽しんで。」
そういうと華音はマコのもとに向かう。
焚き火の上で、脂の乗った肉が熱せられ、滴る滴が爆ぜるような音を立てている。マコが手際よく刻んだ香草と、どこか鼻を突くような刺激的なスパイスの香りが混ざり合い、開拓村の冷涼な空気を一変させていった。
「……信じられない。この香りの強さ、そして食欲を直接揺さぶるような……。」
ミアが陶酔したように目を細める横で、マコが丁寧に焼き上げた肉をトルティーヤで包み、皿に並べていく。
「ど…どうぞ。すっ少し……辛いかもしれないけど……。」
ミアは待ちきれないとばかりに、熱々の包みを手に取った。一口頬張った瞬間、瞳が大きく見開かれる。スパイスの複雑な刺激と肉の旨みが口の中で弾け、その衝撃に体温が一段階上がるのを感じていた。
「うまっ!? ラスティもグレッグもこんなうまい物食べてたの?」
ミアがずるいとばかりにラスティに顔を向けた。
「食べてたっていっても私もグレッグも一回だけだよ? でも、またご馳走してくれるとは思わなかった。」
「あん? アタシは施しはしねぇが普通に隣人との付き合いはするぞ? 飯を一緒に食うぐらい普通だろ?
そりゃ毎日タダで餌付けするなんてことはしねぇし毎日飯時にフラフラ来られたら叩き返すがな。」
「あ、うん。でもホント棗達の食事を食べると普段の食事が物足りなくなっちゃう。」
「開拓村の奴らは普段何くってんだ? アタシが哲平に支払った分の食料やエリオナとの魔石の取引の分は保管してあるんだろ?」
棗は哲平がシューティングレンジを作るのを手伝った報酬として1日あたり三万円、合計9万円分の食料とエリオナが持ってきた魔石に15万という値をつけていた。
魔石に関しては鉄製の鍬や鎌、鋤など殆どが農具に替えられてはいるがそれでもいくらかのトウモロコシの粉や米、小麦粉、日本では安価な砂糖や塩、などといった調味料に替えられている。
冷蔵庫といったものが無いため、傷みやすいもの常温保存の効かないものを棗は取り引きの対象にはしていなかったが。
「ああ。そりゃ棗のお陰で毎日キチンと塩パンや酢漬け野菜、あとは近隣の森で狩った鹿などの獣肉や湖で取れた魚などを食べれてるさ。だが、味付けとなるとな……。棗から購入した香辛料や砂糖などは普段から食べるものには使用していない。慣れたら棗に食生活が棗依存になってしまうからな。あの香辛料や砂糖は祭や祝い事、あとは10日に一度の贅沢品となってる。」
「ふーん。まぁ来年か再来年にはマシになるだろ。哲平に頼まれて種付け用のサトウキビやビーツや赤唐辛子の種などもも渡したからな。アタシはサトウキビやビーツから砂糖を作る方法なんかしらねぇが煮込んで水分飛ばしたら出来るんじゃね?」
Once Upon a Time in Texas
タナー・ビアードが監督・脚本を手がけた西部劇映画の名前 続・夕日のガンマンの英題The Good, The Bad and The uglyをオマージュしたThe Good, The Bad and The Hungryと迷いましたがこちらにしました。
アメリカンタコス
メキシコとアメリカのタコスの主な違い
トルティーヤ(皮):
メキシコ: コーントルティーヤ(トウモロコシ粉)が主流。小ぶりで柔らかい。
アメリカ: ハードシェル(揚げたコーン)またはフラワートルティーヤ(小麦粉)が多い。
具材:
メキシコ: 肉の様々な部位を使用。具材はシンプル。
アメリカ: ひき肉、細切りのレタス、チェダーチーズ、サワークリームが定番。
味付け・野菜:
メキシコ: パクチー(コリアンダー)と生の玉ねぎ、辛いサルサが基本。
アメリカ: チリパウダーを使った味付けや、レタス・トマトなどの生野菜が多め。
ワカモレ
すりつぶしたアボカドに唐辛子、トマト、玉ねぎ、レモン、チレセラーノなどを加えて作られるメキシコ料理のサルサ。最近だと日本でも見かけますね。
チリ・レイェノ
ローストして皮をむいた唐辛子にチーズを詰め、卵の衣をつけて揚げたメキシコの伝統的な料理です。スペイン語で「詰め物をした唐辛子」
カルネ・コン・パパス
牛肉(Carne)とジャガイモ(Papas)を煮込んだ、スペインやラテンアメリカ諸国、特にメキシコなどで親しまれている家庭的な料理。ちなみにコンは~~と という意味なので牛肉とジャガイモ そのままの料理です
ポヨ・コン・ヒトマテ
鶏肉をトマトで煮込んだメキシコの家庭料理 カルネコンパパスとおなじで鶏肉とトマトって意味です。
アメリカンナイズドされたアメリカ南部の南米料理はテクス・メクスと言われてます
新大久保駅付近に私のお気に入りのお店があります。




