Dancing on the Edge
その日の晩。
夕食を終えた四人は、セーフハウスのリビングにある大きなテレビを囲んでいた。
棗はつまらなそうに欠伸をしながらも、決して画面から目を離さない。
マコは嬉しそうに微笑み、身体を小刻みに揺らしている。
華音は腕を組み、どこか冷めた目。
そして汐路は──三人がソファーに座る後ろで、普段からは想像もつかない奇声を上げていた。
ハチマキを巻き、ピンクのハッピ姿でペンライトを振り回している。
「汐路がアニメやゲーム詳しいのは知ってたが……ここまでヤベェ奴だったとはな。マコですらこんな風にはなんねぇぞ」
「し……汐路ちゃんも、このアニメ……好きなの……うれしい」
オープニングやエンディングが流れるたびに、汐路は歌い踊り狂う。
棗は、いい加減見飽きたそれを、汐路ごと早送りしたい衝動に駆られていた。
「しかし……わかんねぇな。このアニメみてぇな魔法がこの世界にあるとは思えねぇ。
山一つ吹き飛ばす魔法があるなら、アタシらの銃なんざオモチャ同然だろ。
だが逆に、エリートがあんな魔法使えるならドラゴンもそう増えねぇはずだ。
それと、魔族ってのは悪魔のことじゃねぇのか? どう見ても肌の色が変な人間だが」
「それはね──」
身を乗り出した汐路が、普段銃を語る棗のような勢いで饒舌に解説を始める。
棗はやれやれと華音に視線を向けるが、華音は「なっちゃんも同類」とでも言いたげな仕草をした。
「し、汐路ちゃん。つ、次はちょっと古いけど、これ見よ。名作」
「マコちゃん通だねっ。魔法を科学的に説明してるところがいいんだよねぇ。
それに負けヒロインちゃんが可愛いんだよ。やっぱ緑髪は負けヒロインになる運命なんだよねぇ」
「わからねぇ……。なんでヒロインが負けなんだ? ヒロインって主役級だろ?
てか、アニメでファンタジーを学ぼうとしたのが間違いだったかもしれねぇ。スケールがでかすぎる。」
棗は「もういい」と言わんばかりに立ち上がり、冷蔵庫を開ける。
「あれ? 珍しいね。テキーラじゃなくてビール?」
「汐路が歌い踊り狂う騒がしさには、テキーラよりビールだな」
「それにしても、汐路ちゃんとマコちゃんの趣味が合うなんてねぇ。
どうする? 汐路ちゃんにマコちゃん、寝取られちゃうかもよ?」
「ああ? いくら汐路でも、そいつぁ許せねぇな。
人の女に手ぇ出す泥棒猫にゃ、アタシは容赦しねぇ」
二人のやり取りに、マコと汐路は慌てて首を横に振る。
「ちょっと、棗。私はノーマルだって。
まこちゃんは可愛いし趣味も合うけど、そういう目で見たことないから」
「な、なっちゃん。わ、私は……なっちゃんが……好きだよ。」
慌てて駆け寄り抱きつき始めるマコに棗は頬を緩ませる。
「アタシもマコが好きだぞ。ところでマコ、身体は平気か?
実はアタシは結構キてる。華音も平然としてるがさっきからピクリともしねぇ。恐らくは筋肉痛だ。」
「あっ。バレた? 実はこの体勢から動けないくらい。」
「わ、私も……身体痛い……。」
「だよなぁ。久しぶりに本格的なトレーニングをしたからな。そろそろアニメ鑑賞はお開きにするか。
汐路はどうする? アタシらはもう寝ちまうが気にしねぇでアニメ見てても良いし、なんならアタシの買ったレズ物ポルノを見てオナってでもいいぜ?」
相変わらず下品な発言に汐路は深くため息を吐く。
「あんたらじゃないんだからそんなに性欲強くないわよ。あ、でももうすこしアニメ見てていい?」
「ああ、別に構わねぇよ。アタシらは寝るときゃすんなり寝れる。多少、汐路が奇声あげて踊り狂おうが気にしねぇよ。」
「そ、そう? よかったぁ。これ第二クールのオープニング曲まじ神なんだよね。」
「そうか……。あんまり夜中まではしゃぎすぎんなよ?明日もトレーニングすっからよ。特に汐路はアタシらン中じゃ一番死にやすいんだからよ。」
死にやすいそう言われ汐路はビクっと肩を震わせる。
「そうビビんなよ。アタシら3人も別にタフネスに関しては汐路と変わらねぇ。一撃食らえば死ぬ。
別にアタシらもマーベルやDCのヒーローじゃぁねぇんだ。ただ、アタシらは汐路と違って銃を持つことも撃つことも躊躇わねぇ。
すこし体力や筋力は勝ってるが、オークからみたらそう変わらねぇだろうしな。
別に何もアタシら見てぇに撃てるようになれとは言わねぇ。せめていざって時にビビって動けなくなるなんてことがないようになれ。」
「そうそう、まぁあとは逃げる時の脚力があればもっといいけどね。」
華音がそう言いながらソファに手を付きフラフラと立ち上がり棗の元へと向かう。
「んーじゃ、そういうわけだ。ちなみに一応言っておくと右から三番目のポルノはめっちゃ良いぞ。」
棗達が寝室に入っていくと汐路は、ディスクを取り出しアニメを見始めるが棗に言われた言葉が頭を過り先ほどまでのように楽しめなかった。
死にやすい……、死という言葉にこの世界の残酷な現実を突きつけられた汐路は膝を抱え込む。
目の前では日本で楽しんでいたアニメが流れ軽快なポップ調のアニソンが流れているが、まぎれもなくここは異世界でありモンスターのいる世界だ。
──でも。
それでも、あの三人の後ろにいれば、きっと大丈夫だと思ってしまう汐路が居た。
仕事がしばらく忙しいので更新頻度が下がります。
作中のアニメは架空の物です。私はアニメを見ませんので。
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