Live Fire
男は大型連休の真っ只中、遊ぶ相手もおらず、六畳ほどのワンルームの自室で暇を持て余していた。
ゲームしかしないというのに無駄に高性能なパソコンの電源を入れ、惰性で動画サイトを眺める。
普段よく見るのは、熱中しているFPSゲームの実況動画だ。
とはいえ、プロゲーマーの動画ではない。
腕前は微妙、だが声と見た目だけは良い――そんな女性配信者の動画ばかりを好んで再生していた。
その日は大型連休ということもあり、多くの女性配信者がFPSのライブ配信を行っていた。
そんな中、彼の目に留まったのは、少し毛色の違うチャンネルだった。
サバイバルゲーム、エアガン、ガスガン。
時折、海外のシューティングレンジで実射を行う動画を投稿している、容姿の整った三人組の女性配信者。
そのチャンネルが、珍しくライブ配信を行っていたのだ。
「ん? 異世界サバイバル一日目? なんだそれ……」
半信半疑のままサムネイルをクリックする。
画面には、いつものように口が悪く目付きの悪い美女が映っていた。
隣には“嫁”と称する、いかにもお嬢様然とした美女。
二人はカメラに向かって談笑している。
そして、カメラが横に振られた。
その先にいたのは――
小柄で、矮躯で、醜い、生き物。
「……え?」
思わず声が漏れる。
「マジで異世界? いや、そんな訳ないよな。でも……CGには見えないぞ?」
次の瞬間、画面越しに銃声が響いた。
画面の向こうで引き金が引かれ、弾丸が、その矮躯のモンスターを撃ち倒す。
「実銃かよ……。マジで異世界なのか?」
コメント欄が、勢いを増して流れていく。
: 異世界って本当にあるのか?
: ゴブリンもCGには見えなかったが
: 異世界なのにネット繋がるん? CGだろ
: ネットっていうか配信できるチートスキルらしい
: 古参だけど、あの三人そういう技術持ってないぞ
: いつも行き当たりばったりだから逆にガチっぽい
: てか全員美人だな
: 棗はタトゥーまみれだから好み分かれる
: でも性格も口も悪いぞ
: お前は性格も口も顔も悪いだろ
: マコちゃん胸でかっ……撃つたびに揺れてる
加速するコメントを横目に、男はもう一つウィンドウを開き、棗が口にしていた銃の名称を検索する。
細かい違いはよく分からない。
似たようなハンドガンはエアガンとして販売されている。
だが、華音とマコが手にしているそれは、どう見てもエアガンやモデルガンではなかった。
: え? 華音ちゃんって久瀬グループ会長の孫なの?
: さっきそう言ってた
: 今から山梨行ったら異世界転移できる?
: 言うほど異世界行きたいか?
: 俺は行きたい。エルフの奴隷ほしい
: じゃあ俺は獣人嫁
: ケモ度高いやつで頼む
: 俺はサキュバスと爛れた生活したい
: 華音ちゃんあんな可愛い顔でワキガなのか
: ワキガ系美人、字面が強すぎる
: この三人レズビアンだよな
: 古参はみんな知ってる
: 棗のチャンネル、完全にバズってない?
: スパチャ飛びすぎ
: 新規コメ痛すぎて草
: 銃メインのチャンネルだったのにな
: 棗は路線変えねぇだろ
: あいつトリガーハッピーだぞ
: 華音もマコも大概
: ubeltiってアンティーク復刻メーカーだよな
: キャップ&ボール売ってるの渋い
: 棗ミリガバ好きだよな
: サバゲーでもミリガバ使ってたし
: テキサスの養父、これ知ったらどう思うんだろ
: 自称ドルフ・ラングレンのおっさんか
: 退役軍人集めて可愛がってたよな
男は画面から目を離せなくなっていた。
異世界。
モンスター。
実銃。
ライブ配信。
荒唐無稽な要素のはずなのに、どれもが妙に現実味を帯びている。
気付けば男は、どうすれば自分も異世界へ行けるのか、本気で考え始めていた。
そして――
棗の動画が爆発的に拡散されたことで、日本、いや世界中で「異世界転移ブーム」が巻き起こることになる。
カクヨム版には存在しないエピソードです。
livefire 実弾 と live配信でfire(撃つ)のダブルミーニングというネタを思いついたので書いたエピソード 恐らくコレ以降日本視点は無いと思います
キャップ&ボール
コルトネイビーなどの前装式の銃の呼び名
シリンダー後部に雷管を取り付け、シリンダーへ直接黒色火薬を詰め込んだり、ワックスペーパーで包んだ火薬を入れ その後に鉛の球状の弾を押し込みます。
不便ですが何気にいまだに人気のある銃でウベルティのレプリカでも糞高いです。
前装式の銃の火薬もマーケットに出回る数が少なく入荷されるとすぐに品切れになるほどです。




