The Price of the Table
断続的に銃声が鳴り響く開拓村の西の端。
異世界のイカレ女、そう呼ばれている棗が居を構える空き地にエリオナとグレッグ、侍女のリーナと数人の騎士が向かっていた。
近づくにつれ大きくなる音にエリオナは顔をしかめた。
「随分と大きな音ですね。」
「ええ 側によれば耳鳴りがするほどです。」
近距離での銃声をよく知るグレッグがそう答え、せめてエリオナがいる間銃声を止めてもらえないかと先行しようとするが、その前にグレッグに気が付いた棗が華音達に撃つのを止めさせ、近づいてきた。
「よう、なんだよゾロゾロ連れてきて。それにあれだ、ラスティと言いなんでお前らは飯の前に来るんだ?ひょっとして腹ペコちゃんか?」
「人を食い意地の張っている人物のように言うな。俺はただこのアーデンベルグ領のご領主のご息女でありこの開拓村の責任者であるエリオナ様を案内してきただけだ。」
「ふーん。相変わらず使いっぱしりか。で、その貴族の嬢ちゃんが何用だ? 飯か?まさかマコの絶品料理を一口いただきに来たのか? それともアタシとレズりてぇのか?」
一瞬、空気が凍りついた。
騎士たちの表情が強張り、リーナは言葉を失う。
だが、エリオナは怒りも動揺も見せず、ただその女を静かに見つめていた。
「棗……お前不敬にもほどがあるだろ。というかこっちは真面目に話してるんだ。」
「不敬ねぇ。 まぁ気に食わねぇってんならアタシらは別にこの村を出て他に行くぜ?で、貴族の嬢ちゃんがわざわざ足を運んだんだ一緒に茶でも飲もうってんじゃぁねぇんだろ?
ま、大体の予想はつく。アタシらの異能に目を付けた。銃を手に入れたい。危険人物か確認したい。そんなとこだろ?」
「そういうことだ。」
「初めまして。異世界の雷神の娘、棗様。」
優雅に挨拶をするエリオナを見て棗は、一瞬きょとんとするが笑い始める。
「なんだよ雷神の娘って。アタシはただのトリガーハッピーでガンフリークなレズビアンのバーテンだよ。そうかしこまったり変な異名を着けないでくれ。まぁ立ち話もなんだしアタシらは今からアメリカ南部のソウルフード、ガンボを食うところだ。マコの飯は絶品だぞ?一緒に食うか?」
「異世界の料理ですか……。興味ありますね。」
「棗……。他の貴族だったらやばいことになってるぞ?」
「あん?そんなこと言われてもなぁ他になんていやぁ良いんだよ。アタシはトレーニングをしたばかりで腹が減ってるし、マコの飯が出来上がったところだ。
急に来たんだ。まさか話が終わるまで我慢して冷めた飯を食えなんていわねぇだろ?」
「貴様……。不敬にもほどがあるぞ!」
一人の騎士が剣の柄に手をかけ声をあげた。
「抜くのか? そいつを抜いたらてめぇは死ぬぜ? 飼い犬ならご主人様の命令無しに牙を剥くな。」
棗の声音は軽い、だが、その目には一切の冗談がなかった。
「お、おい まじでやめろって。本当にやばいから。 棗が殺すと言ったら本当に殺す。絶対に剣を抜くな。そいつは敵と断定しない限り攻撃はしないが断定したら最後、確実に殺しにかかる。そういう女だ。」
グレッグの必死の叫びと唇を歪ませニヤつきながらも冷淡な目で見つめてくる棗に身を震わせ柄から手を離した。
「さてと、せっかくのガンボが冷めちまう。ついてきな。」
棗の案内でレンジの前まで行くと食欲を誘うケイジャンスパイスの香りに流石のグレッグもごくりと喉を鳴らす。
「マコ、お客様だ。こいつ等にもマコの絶品料理を振舞ってやんな。 ったく、飯時ばかり来客が多くてたまらんよなぁ。」
そう言い棗は紙皿を能力で購入しマコに手渡した。
「そ、それは良いけど……そうするとなっちゃんの量少なくなる……。たぶん、なっちゃん足りないんじゃ……ないかな?」
「そんときゃ、適当にスナックでもシリアルでも買って食うさ。」
「だ、ダメ。なっちゃんはすぐそうやってジャンクフードに手を出す。 た、足りなかったら作るから。」
「あんがとな。マコ 愛してるぜ。」
マコの額にキスをし棗は折り畳みのテーブルを購入し広げた。
「ちなみに今日のガンボはシーフードガンボだ。アタシは肉が好きだがガンボは断然シーフード派だぜ。玉ねぎとセロリ、ピーマンの聖なる三位一体にメキシコ湾でとれた魚介これこそ南部のソウルフードってやつだ。」
「はぁ……。なっちゃん、南部のソウルフードが多すぎなんだって。たいていの南部料理だすとすぐソウルフードっていうんだもん。あと、このエビもカニもメキシコ産じゃなくって東南アジア産だよ・・・。」
華音が呆れながら棗に突っ込みをいれる。
「そ…そうなのか? まぁいいどこでとれようが南部料理は南部料理だ。南部のソウルフードなんだよ。」
どこか人間味のある会話にエリオナは安心するが、それと同時にこの状況下で自分たちを蚊帳の外に置き、かと思えば急に距離感を縮め話してくる棗に戸惑っていた。
「ま、取引だのなんだのって話は飯を食いながらするもんじゃぁねぇ。飯ってのは心から楽しみ味合わなきゃなんねぇ。まずは食おうぜ。」
そう棗に言われ、席についたエリオナ達だったが、紙皿という見たこともない器に盛られたガンボに目が釘付けになった。
「ほら 冷めねぇうちに食おうぜ。」
エリオナは促され、スープを掬い口に運ぶ。
「おいしい。」
「だろ? 世界中のどいつもこいつも日本の飯はうまい 日本の飯はうますぎるっていうが南部の料理だって決して劣っちゃぁいねぇ。」
「なっちゃん、この世界の人にそんなこと言ってもわかんないよ……。で、なっちゃんこの人たち何?グレッグさんはわかるんだけど……。」
「おう、紹介してなかったな。この辺のボスらしい。」
棗の説明に華音はため息を吐く。
「そのこの辺のシマを牛耳るなんたらファミリーのボスみたいな言い方じゃわからないって言いたいけど、わかっちゃうのが私達なんだよねぇ……。
でも、随分と若い領主さん。それとも次期が付くのかな?」
言葉足らずの棗の説明におおよその検討をつけ華音がエリオナに問いかけた。
「いえ。私はアーデンベルグの末の娘 エリオナ・アーデンベルグと言います。ここから東に1日ほど行ったところの水の都『サレナ』を管理してますわ。」
「へぇ、ってことは他の兄弟もそのアーデンベルグのどこかの街に?」
「はい。お姉様は南西に。お兄様は北と東に。」
「4人兄弟?」
「いえ 一番上の兄は領都で父の補佐を。」
棗と違い会話がスムーズに行える女性をエリオナは報告書にあった華音だと考え、では先ほどから会話に交じってこない黙々と食事をする女性が汐路だとあたりをつけた。
「華音、どうやらアタシが話すより華音が話した方が良いみてぇだな。ま、アタシらは便宜上あたしがリーダーみたいなもんだが誰がリーダーって訳でもねぇ。
こういった場面で華音が判断するならアタシやマコはそれに従う。華音はアタシらのブレインだからな。こいつが判断するならアタシやマコに異論はねぇ。」
「そうですか……。では単刀直入に言います。今回この地に足を運んだのはあなた方 異世界人をこの目で見て確認したかったからです。
もちろん他にも目的はありますがまずはあなた方の人となりを確かめたかったからです。そして棗さんの異能 異世界の道具 を取引したいと考えてました。
魔石を欲していることも知っています。」
「銃が欲しいのか?」
そう口にした棗の目が細まる。
「あなた方の武器の名前でしたね? はじめはそう考えていましたが……。グレッグさんの話を聞き諦めました。
貴女は絶対にそれを良しとしないでしょう?そんなことを言えばおそらく交渉も取引も叶わなくなる。私はそう思ってます。」
エリオナの言葉を聞き棗はニヤリと唇を歪ませた。
ガンボ 南部のソウルフード 南部でもテキサスではなくルイジアナ州のソウルフード
玉ねぎとセロリ、ピーマンの聖なる三位一体 南部ではガンボの具材の三種類をそう呼びます
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回から投稿時間を19時10分にします 一分単位で設定出来たら1911にしたかった……。
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