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A Line in the Sand

 : 撃つ価値もないかぁ 棗カッコイイな。

 : 覚悟決めてった割にはアッサリと終わったな。

 : てか既にアイツラ特定されて炎上しててワロタ。

 : 誰か実家に凸ったやつも居るみたいだぜ?


 そんなコメントが次々と流れる中、棗は不快感を顕にした。


 「おい、アタシの古くからのリスナーにはそんな馬鹿な真似する奴は居ねぇだろうがアイツラの家族に迷惑をかけるんじゃぁねぇ。

アイツラの行いの責任はアイツラだけのもんだ。家族が負うべきもんじゃぁねぇよ。 行いの責任はソイツが取るべきだ。 匿名を良いことに祭り上げる、無関係な家族を矢面にだそうとするそういう行いは卑怯モンのやることだぜ? アタシのドクトリンからしたらそんな真似するやつは敵だ。」


 そう言いながら棗は左腕の袖をめくり上げ、茨のタトゥーが絡まる腕をカメラに向けた。

 腕の茨に隠れたsemper fiの文字が大きく画面に映る。


 「アタシのチャンネルのリスナーならこのsemper fi に誓え。相手を間違えねぇってな。」


 「あー なっちゃん本気で怒ってるからね?semper fi なっちゃんにとって大事な言葉だから。古参リスナーさんはわかってるよね?」


 華音は棗がモラルもないクズで、口が悪くとも棗は棗の定める正義とドクトリンを大事にしていることを知っている。

 だからこそ華音はここまで棗に惹かれるのだ。


 棗には普段、自慢げに見せつけるタトゥーの他に隠されたタトゥーが存在した。その一つが左腕の茨に隠されたsemper fiだ。

 そして残り2つは華音とマコ以外誰も知らないタトゥー。

 あのボブですら知らないタトゥーが足の裏に存在していた。

 右の足の裏には蛇のシルエット、そこには《Be a good girl》の文字、左の足の裏には王冠のシルエットとOBEYの文字が刻まれていた。


 :俺達古参リスナーはそんな真似しないぞ。俺はsemper fiとジョン・ブローニングに誓ってそんな真似はしない。

 :俺も誓うよ。愛用のM9とsemper fiに誓う。


 次々と各々大事なものとsemper fiに誓うコメントが流れていく。


 「はぁ。アタシも少し熱くなりすぎた。 テメェらがそんな真似するなんて思わねぇよ。 

 やるとしたらバズから来ただけの新参だろうな。さてと、早く汐路のもとに戻ってやらねぇとな。今頃一人で寂しく泣いてるか⋯⋯。

 それともアタシらが居ねぇことを良いことにオナってるかのどちらかだ。」


 :棗じゃあるまいししねぇだろ。

 :コイツまじで落差激しくね?マトモなんかイカれてんのかわからん。




 汐路は一人、棗という主の居ない作りかけのレンジと、マコと言う管理者の居ないグリルの前で棗達三人の頼もしさを痛感していた。

 風に揺れる枝の音でビクリと背筋を震わせ、未だ銃声が聞こえて来ないことに不安を感じていた。

 自然と、腰のホルスターに右腕が伸び練習用のCO2ガスガンを手に近づけるが触れずに手を元の位置に戻した。

 汐路は本能で今ここでおもちゃと言えど銃に縋り手を伸ばしたら後戻りできなくなる事を理解していた。

 身を守るための道具で不安を紛らわせるものでは無い。

 もし、今コレを手にしたら棗達と同じ側に立ってしまう。

 そうしたら最後、棗のロジックとドクトリンを共有し、あの三人と共に銃を手放せなくなる。

 汐路が恐ろしく思っているのは棗が銃を持っているからではない、感情を切り離しロジックとドクトリンで行動するその思考だった。


 汐路にとって一分が非常に長く感じ、何度もガスガンに手を伸ばしかける。


 「汐路アタシらがいねぇ間にオナったかー?」


 不意に聞こえた棗の下品で軽薄な言葉に汐路は突っ込みの叫びをあげた。


 「そんなわけないでしょ!? あんた頭の中どうなってんの!って……棗!?」


 「おう、今戻ったぜ。」


 「戻ったって……銃声も聞こえなかったけど……。」


 「ああ、あいつらは撃つ価値すらない3流だったからな。

5対3の不利な状況で戦闘にならない為の仕込みが撃つ価値のない雑魚との戦闘回避に役に立った。ぎりぎりまで配信をするつもりだったのが役に立ったぜ。」


 「良かった……。だれも殺さなかったんだ。」


 汐路の口から「無事だった」より先に「殺さなかった」が先に出たことに棗は汐路らしいと笑みを浮かべた。


 「あいつらは殺す価値もねぇよ。ほっときゃ勝手に自滅する。アタシの銃口は敵にしか向かねぇんだよ。

もちろんあいつ等が拾った命を無駄にするようにアタシらに手を出してくりゃぁ話は別だがな。さて、せっかくだまだ時間もある新装備のお披露目シューティングでもやるとすっかねぇ。」


 「戻ってきて早々それ? ホントあんたらしいわ。」


 「だろ?アタシはガンフリークだしあいつらから言わせたらイカレ女らしいからな。汐路も護身くらいはできるようにならねぇとな。」


 その言葉に汐路は身を震わせる。

 確かに身を守るために銃は必須かもしれない。既に一度エアガンでトレーニングもしている。

 だが今、銃を手にしていいのだろうか?

 銃を手にし身を守るために銃を扱う……それは棗のロジックとドクトリンの共有ではないか?

 汐路は言いようのない恐ろしさに身を震わせるが棗はそんな汐路に軽い口調で声をかける。


 「こえぇか? アタシの側に立ち もどれなくなるんじゃぁねぇっかってな?」


 「棗……。あんたなんで……。」


 「なんでわかるかって?そんなの汐路がこっち側にこねぇ人間だからだな。

考えてみろ。アメリカ人がみんなアタシみてぇな人間か? 違うだろ? 銃を手にしたからって全員が全員こうなるわけじゃぁねぇ。

特に汐路は自分からアタシらみたいになろうとしてもなれねぇタイプだよ。銃を手にして多少の訓練をしたところでな。」


 :むしろ棗みたいなるやつの方が少なくね?

 :だなぁ。古参のリスナーたちもレンジで撃ったことあるらしいがコメント見る限り普通だもんな。

 :むしろマコちゃんや華音ちゃんが棗側なのが驚きなくらいだ。


 「な?わかったろ? アタシはアメリカ育ちで元軍人に育て上げられてるからって前提がある。華音は『久瀬』に生まれ幼いころから色々見てきたって前提がある。もちろんマコにも事情はある。だから踏み越えてきた。それがねぇ汐路はどう足掻いてもこれねぇしアタシらを理解はできねぇよ。だから安心しろ。」


 そういい棗は汐路の頭に手を置いた。


棗のタトゥー

semper fi 常に忠誠を を意味する海兵隊のモットー


蛇は誘惑、原罪の象徴 be a good girl 良い子でいなさい

王冠 権威・支配・父性・国家・法・秩序の象徴 OBEY 命令系 従いなさい

それを足の裏に入れ常に踏みつけている棗って……。


あと2,3話でみんな大好きガンアクションかな。

一応この作品はアクションものではなくヒューマンドラマです。

主人公頭おかしいけど

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