第8話 覚悟の雷脈
スクナヒコナの雷撃に晒され、過敏な神経を灼か第7話 雷脈に選ばれし者れるタケヒコ。
意識が遠のく刹那、彼の脳裏に——一年前の士官候補生試験の記憶がよみがえる。
“副官”という立場は、決して偶然ではなかった。
雷光が走る。
スクナヒコナの掌から放たれた紫電は、空気を裂き、タケヒコの神経を直接かき乱すように襲いかかった。
「ぐっ……!」
膝が折れかける。耳鳴り、視界の白濁、体内の雷脈が暴走しかけていた。
(……これが……俺の弱さ……!)
——意識が闇に沈みかけた瞬間、記憶がよみがえる。
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回想(一年前、鹿島・雷脈兵団訓練場)
雷脈兵団・士官候補生試験。
候補生たちが次々と制御に失敗し、痙攣しながら倒れていく。
その中でただ一人、タケヒコは槍を握りしめたまま立っていた。
「タケヒコ、前へ」
審査官の声。ざわめきが広がる。
「過敏症のくせに、持つのか?」
「すぐ潰れるだろう」
タケヒコは深く息を吸い、槍を構えた。
次の瞬間——場を満たす雷脈の奔流が、一点に収束する。
槍先に刻まれた術式が淡く光り、乱れる波長が整然と舞い始めた。
——ざわめきが、静寂に変わる。
審査官が目を見開いた。
「……あれほどの過敏を、逆に“精度”に転じている……」
その場にいたタケミカヅチ大将は、険しい顔のまま一言を告げた。
「副官に任ずる」
タケヒコは驚きに息を呑み、そして槍を胸に当てて深く頭を垂れた。
「……命を賭して応えます」
それが——彼の覚悟が形づくられた瞬間だった。
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現在(戦闘)
「……そうだ。俺は、あの日誓ったんだ」
スクナヒコナの雷撃が再び奔る。
タケヒコは槍を横薙ぎに構え、全身の雷脈を絞り上げた。
耳鳴りは消えない。痛みも消えない。
だが、その過敏さゆえに、敵の波長の“揺らぎ”すらも感じ取れる。
「……見えた!」
槍先に青白い閃光が凝縮される。
雷脈過敏症——それは呪いであり、同時に誰よりも精緻な制御を可能とする武器だった。
紫電と蒼光が衝突し、夜空を白に塗り潰す。
港の波が爆ぜ、鹿島の夜に轟音が響く。
スクナヒコナは嗤いながらも、確かに目を細めた。
「やはり……器は“本物”か」
二人の戦いは、なおも続こうとしていた。
今回は「タケヒコが副官となった理由」と「現在の戦い」が交錯しました。
弱点である過敏症を制御力に転じ、逆境の中で輝く姿が鮮明になったと思います。
次回は、この戦いが決着へと進み、スクナヒコナと星の民の真意が垣間見える回となります。