第6話 星の影、忍び寄る囁き
鹿島に戻ったタケヒコ。
しかし彼を待っていたのは安堵ではなく、不気味な静けさだった。
星の民と出雲の密使は密かに糸を手繰り寄せ、狙うはただ一人——雷脈に選ばれし副官タケヒコ。
鹿島の夜。
高天院の議場を出たタケヒコは、冷えた風に額を撫でられながら歩いていた。
港の防衛は戻った艦隊が固めている。それでも胸の奥に重いざわめきが残っていた。
(なぜ俺が狙われる……ただの副官にすぎないはずなのに)
「副官殿、顔色が悪いですね」
声をかけてきたのはミオリだった。
戦後の証言者として鹿島に呼ばれ、いまも臨時で滞在している。
「昨日の戦いで分かった。あなたは……誰よりも雷脈を感じ取っていた」
彼女の言葉にタケヒコは曖昧に笑う。否定はできなかった。
そこへサクヤが歩み寄る。瞳は夜気よりも鋭く光っていた。
「タケヒコ。あなたはただの副官じゃない。
雷脈への同調が異常に強い。敵から見れば——最初に消すべき存在なの」
アマユキも口を挟む。
「つまり、出雲も星の民も、あんたを“器”だと思ってるってことさ。……厄介な話だ」
皮肉まじりの声の奥に、焦りが滲んでいた。
タケヒコは拳を握る。
望んだわけではない。だが生まれ持った力が、彼を戦場の中心へと押し出していく。
そのとき——。
遠く港の方角で、ごく微かな“雷脈のざわめき”が震えた。
普通の兵なら気づかない揺らぎ。しかし、タケヒコの神経だけは鋭くそれを捉えてしまう。
(……誰かが、俺を見ている)
——同じ刻。鹿島の裏通り。
スクナヒコナが星の民と対峙していた。
小柄な影が嗤い、囁く。
「雷脈に選ばれた若造……潰すには惜しい。だが、生かせば脅威となる」
星の民の一人が夜空を仰ぐ。
「ならば試す。彼が真に“器”かどうかを」
二つの影が交わし合った密約は、やがて一人の青年を揺さぶる“試練”へと繋がっていく。
今回は「なぜタケヒコが狙われるのか」を言葉として描きました。
彼は血筋ではなく、生まれ持った雷脈適性ゆえに標的となっていきます。
そして最後に忍び寄る不穏な揺らぎ。
次回、ついにスクナヒコナがタケヒコの前に姿を現し、“試練”の戦いが始まります。