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第3話 戦の余韻、雷脈の鼓動

港を襲った出雲の奇襲は退けられた。

しかし雷脈が残した“余韻”は、戦場の空気だけでなく、人の心にも熱を残していた。

桟橋には、焦げた木の匂いと、まだ青白く漂う雷脈の残光が揺れていた。

タケヒコは槍を下げ、深く息を吐く。

腕輪コアからは、微かに“彼女”の共鳴の温もりがまだ残っている。


「副官、無事ですか?」

大剣を背負ったアマユキが駆け寄る。

その声には安堵と、少しだけ甘さが混じっていた。

「かすり傷もないよ。そっちは?」

「……無傷です。……副官が、守ってくれたから」

アマユキは一瞬だけ視線をそらし、耳まで赤く染める。


港の端では、救助された商家の娘たちが、ひそひそと囁き合っていた。

「雷槍を振るう副官様、まるで英雄様みたい……」

「さっき矢が飛んできた時、私の前に立ってくれたのよ」

……どうやら、その場面はしっかり目撃されていたらしい。


そんな中、サクヤがゆっくりと歩み寄る。

舞の余韻を残す外衣がまだ微かに帯電している。

「……あの複合術式、悪くなかったわ」

「お互い、初めてにしては上出来だろ」

タケヒコが笑うと、サクヤは目を細めて彼を見上げ、

「——でも、あの同調、悪くなかった。呼吸も……心も」

その言葉は波の音に紛れるほど小さかったが、確かに届いた。


背後でアマユキが不満げに眉をひそめる。

「副官、私ともちゃんと呼吸合わせられますよね?」

「もちろんだ」

タケヒコが笑って返すと、アマユキはふっと唇を尖らせた。


——一方その頃、港の外れ。

逃れた出雲の小舟で、海将アシタツが呟く。

「日高見の雷脈……特にあの若い副官。

 同調の精度が異常だ。……厄介な相手になるぞ」


港に戻り、タケヒコは槍を納める。

腕輪コアからふっと共鳴が消え、胸の奥にぽっかりとした空白が残った。

……その空白に、なぜか三人分の視線が重なる。

サクヤは意味ありげな笑みを、アマユキはわずかな嫉妬を、港娘たちは憧れを——。


(……やれやれ。これじゃ戦より手強い)

タケヒコは心の中でため息をついた。


今回は戦闘直後の“余韻”に加え、タケヒコへの恋愛フラグを三方向から仕込みました。

サクヤとの同調、アマユキの照れ、そして港娘たちの憧れが重なり、

今後の人間関係に微妙な火種を残しています。

次回は高天院での政治的駆け引きと、出雲の次の一手を描きます。

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