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誰を信じれば

 事件は無事解決した。

 優作の遺体は牧村がどこかへ運んだ後、牧村が舞香の部屋へ入ったところを見れば、部屋についた血は片付けられたのだろう、と考えた。

 これでいつも通りに戻る――いや、何も解決していない。


 今朝、優作と舞香の宿している部屋で殺人が起きた。

 死亡したのは北原優作。舞香の婚約者だ。

 死因は、背中と胸を刺された出血多量で死亡。と思われる。

 

 部屋の前に集まった招待客とアベル。

 アベルは優作の死因のみ私達に伝えて、部屋に集まる招待客を解散させた。


 そして今、私達は食堂に集まった。

 理由は、館のルールの一つにある、食事は生きている全員ですること。

 優作が死亡し、席はひとつ空席となった。現在はアベルを含む十二人で食堂のテーブルを囲んでいる。

 

 テーブルに並べられた食事をお皿に取り分ける。

 ロールパンにマーガリンといちごジャム、ふわふわのスクランブルエッグとカリカリに焼かれたベーコン。

 そして私はコーンスープを啜った。


 人が死んだ――。

 だからといってご飯が喉を通らない、なんてことはなく、ホテルのバイキングのような朝食を美味しく頂いた。

 

 それは、舞香もそうだった。他の招待客も同じで、優作が死んだからといって、目の前にある食事に手をつけないという訳ではなかった。

 パンにマーガリンをつけて、それをコーンスープで流し込むように食べていた。


 人が死んでも、お腹は空く。

 人が死んでも、当たり前のように食事をし、美味しいと感じてしまう私達は異常なのだろうか?


「皆さん! 今日は自由にお過ごしください! 昨日は肉体労働でしたし、今日は朝から精神的に疲れたでしょう? 部屋で過ごしたり、ゆっくり入浴したり、館のフロアの左にはたくさんの本が並ぶ広い部屋もありますので、勝手に使ってください!」

 

 たくさんの本が並ぶ部屋、それは興味深い。

 そんな部屋があったとは知らなかった。

 後で行ってみようか、なんだか誘導されている気もするが、たくさんの本が並ぶというのは魅力的だ。


「あ、でも僕の部屋には入らないようにしてくださいね!」


 アベルはそれを言い残して食堂を後にした。

 私も食事を終えて、一度部屋へ戻りベッドに浅く座った。

 入るなと言われると、寧ろ入りたくなってしまうのが人の性だ。が、それよりも今は、少し一人で考える時間が必要だった。あんなことが起こった最中、食堂で瑠夏とも葵とも言葉を交わしづらい雰囲気だった。


 仕方のないことだ。昨日まで生きていた人が突然帰らぬ人となったのだから。それも、他殺で。

 何の目的で、誰が犯人なのか、それがわからない以上、心を開いて話すことは危険だ。


 館にいる全員が敵に見える。

 誰も信用できない。


 けれど、このまま何もしないのは性に合わない。私にできることをする。

 そして一人は弱い、ここで孤立するのは得策ではない。

 味方を作らねば、自分に不幸が降りてきたときに守ってくれる相手。それ相応に信用できる相手を作る。

 ここで生き延びるには、そうするのが正しいだろう。

 

 浅く座ったベッドから立ち、朝食の席でアベルが話していたたくさんの本が並ぶ部屋へ向おう。


 本の並ぶ部屋へ行けば誰かいる気がした。

 誰かにいて欲しい。願わくば瑠夏と葵にいてほしい、と思った。いや、居るはずだ。

 何故なら、これまでの言動と行動を見るに、瑠夏も葵も他人に目を向けがちで、自分から首を突っ込むタイプの人間だからだ。


 理由はもうひとつ。

 暇だからだ。


館の見取り図、投稿しようと思って忘れてました。明後日あたりに投稿します。

割り込みにするかもです


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