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ポンニチ怪談 その93  多様性なき世界

作者: 天城冴

大国のトップが多様性を否定し、属国ともいえるニホン国でももろ手を挙げて賛成する与党ジコウ党議員たちだったが…

北半球では次第に日照時間が長くなり、だんだんと春にちかづいている…はずだが、あちこちで異常気象、あたたかな日差しが続いたかと思うと急激な気温の低下に見舞われる今日この頃。凍えるような寒さの中も灯油代、電気代など光熱費ほか、食料品等の値上げに苦しむ人々をよそに、豪勢な部屋でぬくぬくと会話する初老の男性たちがいた。

「ああ、ほんと、ドランプ大統領がついてくれてよかったなあ、これでわがジコウ党も安泰だ」

「そうですとも、総理、なんだかよくわからないLGBナントカとか、多様性とか、のたまう、奴らが一掃されますよ。我々の大切な伝統的家族観、ニホン国のあるべき姿を…」

と、話す中年男性議員の言葉にうなずく、男たち。洗い物をしたこともない、重いものをもったこともないようなきれいな手で、グラスを傾けて満足げに中の酒を飲み干そうとしたとき、

“あ、ホントにいらないんですね、多様性”

と声が響いた。

「な、なんだ?」

「こ、こどもが?いや若い女か?」

「こ、この部屋にはそんなのは」

ざわつく男たちを気にも留めず、声は続けた。

“あの、だからホントに多様性がいらないんですね”

酒を飲もうとしたのを邪魔された議員の一人が立ち上がり、声に答えた。

「は?そんなことか。そうとも、訳の分からん、奴らのいいがかりなど…」

“あ、そ”

シュ

鋭い音がした。

ゴロン

議員の頭がきれいに切られて、床に落ちた。

手に持ったグラスがゆっくりと落ちる。

ガシャーン

「ギャアアアア」

「な、なんで」

悲鳴と怒号が部屋に響き渡る。

“あー、ホント、ニホン国のオッサン、特にジコウ党の議員さんとかその周辺っておバカだねえ。なんで、男ってものが、性別ってものがあるのか、わかんないの?多様性のためなんだよ。自分たちと全くおんなじだと何かあったとき全滅しちゃう、それを防ぐための生存戦略、多様性がないとダメなんだよ”

“しょうがないよ。おべんきょうしたつもりでも、本質はまるで理解してない。作業で仕事を効率よく、正確にやってるだけの奴らが重用されるところだから。肝心なところがわかってないから、少子化がこまるーとかいいながら、ヤルベキコトやってないで、今頃あたふたしてるんだよ”

「な、なんだ、一体どういう。多様性が要らないと、なんで儂らが、こ、殺され」

“だーかーら、オッサンなんていらないの。多様性を生み出すために男性って性別があるんだから。あ、べつにゾウリムシとかは性別四つあるけどね。まあ、哺乳類はおおよそ二つだから、ホントはきっちり分けられてるわけでもないんだけどねえ”

“こいつらに行ってもダメだよ、途中で性別変わるのもあるってのに、人類でもそんな感じなのいるし。厳格に区別できないってのに、自分らの都合のいい妄想にひたってるんだから。要するに自分らが理解できない、不利になりそうなことは全部オカシイ、聞きたくない、間違ってても直す気ないです、むしろ正す奴らなんてイジメる、排除したい、だから”

“あー、それなら排除だわ、排除。ニホンジンの発展どころか、人類の発展にも邪魔だわ。まー、自分らの存在意義否定してるんだからしょうがないか。もう、多様性要らないってんなら、人類は他のやり方でやってくしかないねえ。最も繁栄した蟻族のまねでもしますか”

“蟻族でもオスはいるけどね。まあ、いくつか優れたメスをのこせばいいんじゃない?ニホン国でも。例のアメリカでもそうしたし。あるいは多様性要らないっていうような、身の程もしらないバカオスを全滅させればいいんじゃない?”

震える男たちをよそに声は楽しそうに続ける。そのすきに出口に近づいた中年議員が、ドアノブに手をかけた途端

シュ、シュ 

一瞬で体がバラバラになり、血まみれの肉片が飛び散った

「ひいいいいいい」

「た、助けてええええ」

“ああ、ホント、多様性ないねえ。この人たち。いつも言ってることも、死にかけでいってることも、あのドランプとかとその連中とおんなじだよ。本当に違う国も人間だったのかなあ。まったく変わり映えもしない。個性もなんもないようなのは価値無いよ、一個でいいわ。いや、こんなどーしよーもないの一個もいらないよ”

“そうねえ、おんなじすぎるわねえ。じゃあ、ニホン国のこういう連中が皆いなくなったっていいわねえ、他のも少しマシなのを一つ残すか、やっぱりいらないわね。こういうのや、こういうのとかかわるメスなんて必要ないわね、同じようで、停滞してて、進歩もなさそうだし”

“そうそう、こんな連中滅ぼそう。お望み通り多様性をなくしちゃおう”

“マシなメスを残して単為生殖させるやり方ね。でも、そのうち行き詰るかもよ?”

“そうしたら、また、今よりもっとましなオスというか性別のをつくればいいんだよ。YじゃなくてOで、性別とか作るやり方にする?もっといいのが出来そうだよ”

“そうね、その前に邪魔で無駄な奴らを始末しましょうかあ”

その会話を聞いて、ジコウ党議員たちは恐怖に震え…る間もなく息絶えた。そして、ニホン国中、いや、世界のあちこちで、新たな、多様性のない、男性のいない世界が誕生した


マー、生物学とか習ってる方なら常識かもしれませんけど、進化って多様性を生むことでもあるような感じで。だいたい多様性の必要なけりゃホントにオスはいらんらしいですよ、オスをつくる必要なくなっちゃうからねえ

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