EP3 裏ボス神託
真っ白な空間。人間はここにいると無性に恐怖を感じる。
しかしこの光景には見覚えがある。そしてもう一つ。
「やあ! 無駄死君。……いや今は臆病者? だったかな」
「お前にまで、その呼ばれ方をされるのは腹が立つな」
目の前の白髪の少年に悪態をつく。
「よお。カーネーション。修羅の道に突き飛ばされた時以来だな」
「そうだね。君が、無駄死した時以来だねぇ」
ふん。神の癖に口が悪いこと悪いこと。……神だからこそ口が悪いのか? 「鑑定」さんもそうなってたし。
「まあ、この話は閑話休題ということで」
「異論ない」
「まあ話は何故無駄死君がここに来たのか、からかな? 話してくれる?」
「そうだな」
俺は何故ここに来たのか、そしてこれまでの経験、無駄死君の呼び方をやめろ……等を話した。
俺の主観、苦労、嫌味を存分に交えてな。
「ふーん、大変だったね。今の話は少々、君の主観が加わり過ぎだけどね」
「バレた……なぜ分かるんだ?」
「だって神だもん」
それもそうか。さて質問の答えを聞かせてもらおうか。
「えーと、なにからはなそうか。まあまず、君の観測外のイベントのこと! 答えは簡単だ。「現実」だからだよ」
「はあ。その通りの答えに俺はがっかりすべきか? それとも分かったことを喜ぶべきか?」
「喜ぶべきだよ。だって「ゲーム」通りじゃ、君と仲いい「イリス」ちゃんが死んじゃうよ?」
「誠に喜ばしい限りですわ、神様」
確かに、イリスに死なれると困る。
なぜなら目立つ為には親密な協力者が必須だからだ。
「本当にそれだけかい? ……まあいいや。」
なんだよ。気になるじゃないか。
「……でも、君が言っている主人公補正ってのは、ちょっとクサいね」
「どういうことだ?」
「セリルって人間、実は神にも底が知れないんだ」
ん? つまり神にも、主人公補正の正体がわからないのか?
「そういうこと。正直、主人公は毛色がちがうんだよ。君と違う感じでね」
「そうか」
主人公補正については、わからないままか。
「……ボスの場所は、変わらないよな?」
「そうだね。高い確率でそうなると思う」
「ならいい」
これで聞くこと聞いたな。
「それは良かった。ではここからは僕のありがたーい忠告だ」
「聞くだけ聞こう」
どんな話かな?
「君の「level」についてさ」
「ほう?」
そういえば、鑑定さんがなんかいってたな。
「確か……「存在の格が上がりました」とかなんとか」
「うん。そこまでわかってるなら話が早い。その「level」は、君の言葉で言うと存在の格が上がるものなんだ」
「それで?」
「それは「だんだん人間じゃ無くなる」ものなんだ」
――言われてみればそうかもしれない。あの熱に浮かされた感覚。そして次の進化の条件。
「ついでにいうけど、「大罪」もそうだよ」
「大罪って……嫉妬とかいうモブ能力?」
「君もいうねぇ。一応、ある「マンガ」では強敵だったけどね」
「そういえば錬金術ってどこで出来るんだ?」
「君は近いうちに巡り合うとおもうよ」
閑話休題。
「まあ、君が君でいたいなら使わないべきだね」
「ああ、できるだけそうする」
「それくらいでいいよ」
本当に要件……話すことはないな。未来なんて自分で変えるものだから、神に頼りたくないしな。
「神頼みなんて言ってる奴に聞かせてやりたいよ」
「そうだな」
「でも、君はもっと聞くべきだよ。自分……いや「ユリアス」のことを」
「今の俺には関係ない」
俺は俺で、ユリアスの過去は関係ない。
「そうも言ってらんないけどね」
「どういうことだ?」
「君は近いうちに「ユリアス」の過去に触れる」
「!」
なんか嫌だな~神がいうことは無駄に説得力がある。
「無駄ってなんだよ。それに今君は危機に瀕しているよ」
「どういうことだ(二回目……いや四回目?)」
「君の連れは方向音痴だよね? どうやって寝たまま帰るの?」
「そうだった! いやでも待機してるかも?」
「方向音痴って無駄に行動力あるよね~」
え? まさか、町に帰ってない? 起きた途端にハードモード?
「君も大変だね~ まあお茶でも飲むかい?」
「こんな重大な時にお前とお茶会なんて御免だね」
「現実の時は立ってないんだけどね。あと僕相手だと嫌なら別の人呼べばいいんじゃない?」
「知らん」
「おーい、イリデュリム~」
「何をしている?」
「呼んだ? カーネーション?」
「誰だよ」
イリデュリムと呼ばれた女性(?)
その髪はイリスと同じような黒。神の威圧としか言い表せない覇気が、絶世の美女というしかない美貌をさらに神々しくさせている。
「紹介しよう無駄死君」
「ああ?」
「――こいつはイリデュリム。暗黒神さ」
暗黒神って、ああ! 加護をもらってる神の一人(?)か。
「どうもこんにちは。ご紹介預かったイリデュリムよ」
「どうも。ユリアスです」
「そして僕はカーネーション!」
「「聞いてねえよ」」
シンクロした。結構気が合うかもな。
―――その後俺たちは、時が止まってるのをいいことに、雑談を楽しんだ。
さすが神というべきで、この世界についての知識をたくさん学べた。
「そういえば、カーネーション。この方に、守護獣をつけました?」
「……」
「つけてないのね……まったく、この世界に来た方々には守護獣をつけるのが決まりなのに……」
「……だってみんな目立ちたくないとかいうし」
「だから忘れたって? この方は目立ちたい方でしょう。つけてやりなさい。私も協力するわ」
そんなのあるんだ。早く言ってほしかったね。
因みに俺みたいな異世界人は他にもいるらしい。でも目立ちたくないとかぬかす奴がほとんどらしい。
解せぬ。
そういうやつが巻き込まれて、はたまた首を突っ込んで行くんだろう。
でもおれは下手に首突っ込んでも、邪魔されるだけだしな。忌々しいセリルに!
「そうねぇ。神獣をつけましょう。って顔が怖いわね」
「わるい。腹が立ってな」
やっぱ目立たない星の元なのかも。
*
「さて、お開きにしますか」
「ええ。たのしかったわ」
「こちらもな。また会おう」
たぶんこの世で、この生で、一番気を抜いたかもしれん。
いや……一番じゃないな。
あの膝の感覚を思い出して、真っ白になる世界のなかで眠りについた。
*
「知ってる天井……自室か?」
まあいきなり知らない天井が見えるのも怖いけどな。
『目覚めたか』
聞き覚えのある声が聞こえた。でもそいつは、違うところにいるはず……
ゆっくりと身体をおこし、声の主に驚愕する。
「なんでお前がいるんだよ」
『神託でな。お主についていけと言われた。......いや? ……お主じゃなく主殿といったほうがいいのか?』
「しらねえよ」
そこにいたのは、ご存じ黒狼。
神が言ってた守護獣って、こいつなのか?
『まあ、というわけで我はお主の従魔になった。よろしくな! 大将』
従魔か。異世界あるあるだな。……強い従魔をもっていたら目立つんじゃないか!
『正式な契約は名前をつけないと成立しない。だからいいのを頼むぞ」
これもあるあるだな。名前か……黒狼……黒?
「クロとかどうだ?」
『……もう少しネーミングセンスがほしいな』
「なんか言った?」
『なんでもない。まあいいだろう。クロで」
で? なにが変わったのかな?
『ステータスに我の力の五割が乗ったはずだ。確認してみろ』
え? 五割もステータスに乗るの?
俺……バケモンになったり?
《個体名ユリアル・フォン・オルバン( level2)
LV1 EXP0
種族 人間(level2)
所属 黒狼の学級(?)
称号 影の者 大罪者
加護 暗黒神の加護+ 魂神の加護+ 水神の加護 天空神の加護 技巧神の加護
ステータス
HP160000 ST 10000 MP infinity+ STR 10000 VIT 10000 INT 80000 RES 80000 DEX 200000
AGI 200000
状態異常 悪魔化LV1
スキル
神魔剣術LV5 攻盾術LVMax スターキットLV5 ボス耐性 持久力強化 食いしばり+ 神耐性 真理
禁忌LV1 超回避LV2 未来攻撃予測LV3
アーツ 痛恨の一撃 スターレールシリーズ 風刀 威圧 影移動
大罪 嫉妬
従魔 黒狼『クロ』
その他 最も関わりが深い人物 1イリス 2エルセリア 3クロ
評価 ☆10(上位)》
……なんだよこのステータス……
これがクロのステータスとlevel UPの恩恵か?
いや~人外に近づいてるな。……状態異常 悪魔化? これマジで人外になっちゃうじゃん。
それよりも注目すべきは、LV1ということだ。
ついに、……やっとレベリングが出来る! 最高の気分だ!
「お前ってすごいんだな……っておい! 図体がでかいからしっぽぶん回すな。ってか邪魔だな」
『小さくなれば問題あるまい』
そういうと、みるみる小さくなっていき……
普通にかわいい。
「こうしてみると犬だな」
『我を犬っころと同じにするでない!』
「悪い。悪い」
別に悪気があったわけじゃない。そうだよ。うん。
『まあ、よい。……大将の目標を聞かせてもらった。大それた夢だな』
「どんなに大それた事でもやり遂げる。絶対にな」
『覚悟は分かっている。で? 今の目下の問題は?』
話が早くて助かる。
俺は、今起こってることを話し始めた。
『なるほどな。この現象は、そういう事だったか』
「やっぱ、この現象はみんな理解してるのか」
『まあ一般人は夢を見ていたとしか思ってなさそうだがな』
「……怖いもんだな」
『……我にはその感想は分からん。人間の感情なんてな』
そりゃ、神獣に分かってもなんだってことだ。
それに……
「分かんなくていいさ。俺は……忘れそうだ」
levelが上がってから、気を抜くと、自分ではない何かが出てくる。
どうなってるんだ。
「悪い。というわけである洞窟に向かいたい。行くか」
『うむ……確かこういう時は、「善は急げ」というのであろう?』
「間違ってはいない」
俺は、町を出てある洞窟を目指す。
「青夏の洞窟」
夏の日その洞窟は青く光る。その光景が人気のスポットだが……
まあオカルト話もちらちらある。夏だしな。
「さてダンジョン攻略……」
「少年! 身分証は?」
衛兵がダンジョン前にいた。
「学生です」
「だから冒険者ギルドの身分は? このダンジョンはAランクダンジョンだぞ」
冒険者ギルド。
ゲームでは、主人公の強さを分かりやすくするための物だった。
しかし、現実。
主人公補正があったからこそこのイベントの攻略の土俵に立つことができただけあり、俺はそんなものももってやいない。もちろんランクもない。冒険者登録はしていない。
「クロ。帰るぞ」
『いいのか? 実力行使したら余裕だぞ?』
「俺は目立ちたいと言っても、白い目で見られたくはないの!」
それは、俺の中のルールだ。……法は守る。
『……冒険者にでもなるのか?』
「正解だ。いくぞ」
俺はクロに乗って町の冒険者ギルドに向かっていった。
因みにクロは移動手段に最適だった。めっちゃ早い。
まあ俺も影移動みたいなの仕えるけど、景色もいいからクロに乗ってる
*
冒険者ギルド正門。
「なあクロ。ちょっと聞いてもいいか?」
『なんだ? 答えられることなら出来るだけ答えよう』
俺を乗せた大きさから小さくなったクロに問う。
「これってなめられないように堂々と開けるべきか? それともしおらしく入るのがいいのか?」
『知らん。……まあなめられないようにしたほうがいいんじゃないか?』
だよな。俺もそう思う。
じゃあ、威圧を起動! そして扉を蹴飛ばして開ける。
「あれ? 壊れちゃった。まあいいや。クロ! 小さくなって」
『ああ』
扉は、ぶっ飛びエントランスの受付嬢の少し上に突き刺さった。
「……ッ! はい本日は何用で……」
警戒されてるな。まあ扉が顔面に当たりかけたもんな。
悪いとは思ってるよ。
「冒険者登録に来た。出来れば早急に上を目指したい」
「そうですか。ならこちらの紙に基本情報を記入してください。……本来ならこの作業だけで十分ですが、上を目指すならテストを受けるといいでしょう」
「ありがとう。……悪いな、扉を壊して。――よし! これで登録してくれ」
「はい! ……ッ!」
「どうした?」
受付の反応が妙だった。
「冒険者の経験は?」
「ない」
「スタードライブに聞き覚えは?」
「なんだそれは?」
突然、受付嬢から質問が飛び出した。
スタードライブ? なんだそれは?
「そうですか……奥へどうぞ」
そういって奥に連れてこられた。
「まず、ステータスです。この水晶に手を置いてください」
おお! テンプレアイテムだ……!
俺は喜び勇んで手を置くと……開示する情報を選択と頭の中に声が響いた。
奇妙な感覚だ。
「ステータス評価は……なんか、カクついてますね」
「……それはパソコンか何かか?」
「ぱそこん? あ! 出ました。……え?」
受付につられて水晶を覗く。
《ユリアス・オルバン(フォンは隠している)
ステータス評価
HPS+ ST S+ MP S+ STR S+ VIT S+ INT S+ RES S+ DEX S+
AGI S+
総合評価 S+
推奨ランク A》
our……圧巻ですな。
「ではユリアスさん。試験は終わりです。貴方はAランク相当の実力、そのためランクはBランクです」
「いきなりだな」
「ええ。冒険者は実力主義です。Bランクなのは経験の有無ですね。10個くらい依頼を受けたらAランクになっても問題はありません」
そんな早くなれるのか。
「じゃあ。いい感じの討伐依頼を10個くらい頼む」
「え? あ、はい。……無理はしないでください?」
「善処する」
「あとAランクは、少し特殊な依頼も受けなきゃ駄目です。一個入れときますね」
お任せします。
*
さーて、依頼消化の時間だ。
「まずは……街道周辺に現れた、ブラッドバッファローの群れの討伐か」
移動はクロ! 街道を高速で移動してもらい、短時間で到着! そしてその後は……
「まさに文字通りだな」
蹂躙。
モンスターの悲鳴。血の海。ブラッドバッファローだな。
遺体は、インベントリに即格納。
次行こう。
マーダーアントの巣の駆除→根こそぎ死滅。
ワイバーンの撃退→血祭り。ライドはやめとこう。
街道周辺に出てきたドラゴウルフの討伐→縄張りごと駆除。クロの作戦ないす。
野党の掃討→一人残らず。因みにとらわれてた人間は、町に返したよ。
仲間殺しの指名手配冒険者→惨殺してみた。levelは上がらなかった。やっぱLVMaxじゃないとだめか。それとも犯罪者は駄目なのか? ……おっといけない。上げるのはだめだ。
レッドサーペントの討伐→普通に討伐。
諸々。
「さて。最後の依頼だ。たしか特殊な依頼だった気がする。えーと? 村に住み始めた友好的な人型魔物の調査……? 討伐じゃないのか。そういうところが特殊か」
『……大将の脳は、殺すことに支配されているのか?』
そんなことありませんよ。
「……あ〜? 村にアラクネが住みついたらしいな。しかし魔物は敵対的ではない。むしろその逆で、身を挺して村の子供と村長の息子を庇ったらしい」
『なかなかロマンチックじゃないか』
「俺より情緒豊かだな」
まあアラクネって半分人だしな。友好的でもありえなくない……か?
今、確定してるのは長期戦になることだな。
しかし困ったことになった。
俺には時間がないのだ。二か月のアメリカン夏休みが終わるまで、僅か一か月。
こんな長期依頼は死活問題だ。最悪の場合、振り出しに戻るぞ。
「まあ、とりあえず、依頼を達成してくるか」
『帰るのか?』
「ああ。頼む」
クロに颯爽と乗り、出発する。
……本当に頼りになるな。やっぱ異世界で持つべきものは従魔だな!
少し疑問をぶつけてみよう。
「そういえば、俺のステータスって十倍になったんだよな」
『それが? よかったではないか』
「でもなんか十倍も上がった気がしないんだよな。もちろん前より強くなったけどな」
戦いの最中に気づいた違和感だ。教えて! クロ先生!
『気のせいでないか?』
「……時間と期待を返してくれ」
やっぱ期待し過ぎたよ……
『まあ、他に考えられるとすれば、経験不足だな』
「経験不足?」
『ああ。正確に言うと能力の引き出し具合だな』
「ほう!」
《実数値鑑定法を理解しました。潜在値鑑定と置き換えます》
《個体名ユリアル・フォン・オルバン( level2)
LV1 EXP0
種族 人間(level2)
所属 黒狼の学級(?)
称号 影の者 大罪者
加護 暗黒神の加護+ 魂神の加護+ 水神の加護 天空神の加護 技巧神の加護
ステータス
HP160000 ST 4000 MP 1000 STR 7500 VIT 4242 INT 10 RES 5000 DEX 8000
AGI 8500
状態異常 悪魔化LV1
スキル
神魔剣術LV5 攻盾術LVMax スターキットLV5 ボス耐性 持久力強化 食いしばり+ 神耐性 真理
禁忌LV1 超回避LV2 未来攻撃予測LV3
アーツ 痛恨の一撃 スターレールシリーズ 風刀 威圧 影移動
大罪 嫉妬
従魔 黒狼『クロ』
その他 最も関わりが深い人物 1イリス 2エルセリア 3クロ
評価 ☆10(上位)》
低い。だいぶ低いな。やっぱ俺が強いのは幻想だったんだな。
『因みに9999が生物としての限界だ』
「イマナンテ?」
『因みに9999が生物としての限界だ』
まじすか。なんか見覚えのある数だな。
……ゲームのカンスト数値? ありえるな。
それなら結構高いほうだな。ドーピング強化0の主人公よりは高い。
……|防御(VIT)と|魔法攻撃(INT)以外はな。
因みにゲームでは、カンスト化は廃人のすることである。
当然だ。LVMAXでも、最終値は6000ちょっとだ。残り3999を上げるための、ドーピングアイテムの収集は超の五乗くらい大変である。
しかもカンストしても隠しボスはいないしな。
『しかし世の中には、生物の限界を一時的に超える技があるらしい。詳しいことはしらん』
世の中、広いんだな。
その後、俺は一旦ギルドに行き、依頼を達成してきた。
受付の人、驚いてたな。爽快だぜ。
……チンピラ冒険者に絡まれるテンプレは無かったがな。
やっぱ目立たないのか……!
*
『もうすぐ着くぞ』
俺達……正確には、俺と一匹だな。
まあいい。
「ここが例の村……言っちゃ悪いけど、ド田舎だな」
『辺境だからこそ、アラクネという強力な魔物が出るのだろう? もちろん我の相手にはならんがな』
逆に相手になったら怖いよ。
門番に依頼を受けてきたといい、村に入る。
……あまり、いい目はされなかった。まあ後で村を案内してくれるらしい。
「ようこそおいでなさいました、冒険者様」
人の好さそうな老人村長だ。
「ああ。短い間、よろしく頼む」
「ええ! ええ!」
少し安心しているようだ。まともな人で良かったと思ってるんだろう。
ていうか俺、結構読心術うまくね?
前世は、読まれやすいことで有名だったけど、いい変化だ!
村長の話は長かった。村の歴史や風習。いろいろな。
「では、積もる話はここまでにして本題に入ろう。村長殿」
「え? あ、はい」
やっぱ問題を先延ばしにしてたか。
村長の話は依頼書に書かれていたことを多少脚色したものだ。
「そうか。話を簡単にいうと、「アラクネは友好的だから、殺さないで」ということか?」
「村の意見です」
「そうか。そうだとしたら田舎の悪いところがでている」
「といいますと?」
「立体的な話ができない所だな。冒険者はそのような意見は求めていない。重要なのは、悪い面を交えた話だ」
まったく。これだからこういうのは面倒くさいんだ。
確かにこういう話はロマンチックだ。
だが、ガキじゃあるまいしあり得ないことを知ってるはずだ。
血に飢えた肉食動物と弱った草食動物が共存できるとでも?
俺はおもわず溜息をついてしまった。
……それと同時に扉が「バンッ」と思い切り開かれ息が詰まる。
「冒険者! やっぱお前らは臆病で残酷で愚かだ。こんなにいい魔物がいるんだ。それと分かり合えるチャンスを無くして、何が面白い! なにがお前らの得になる?」
「息子よ! なぜここに! はぁ」
「冒険者さんは正しいです。私は危ないですから」
「そんなことはない! 俺たちとは簡単に分かり合えただろう? 心配するな」
例の魔物か。
……人外の美というやつだな。人間にはない魅力がある。人間の胴に蜘蛛の脚。
並みの人間はその美に魅せられ守りたくなることだろう。俺は違うが。
……魅せられる人外と言うとシンセ(人外疑惑)が思いつくんだが、やっぱシンセの方がゾクゾクした。
…………きもいな。俺。
やっぱこういうのは殺意が調味料だと思うぜ。
……きもすぎる。
まあ、両方イリスと比べれば型なしだ。うん。
「聞いているのか! 冒険者!」
「聞いている。それと魔物と分かり合う? 寝言は寝て言え」
「どういうことだ? お前も魔物を連れているだろう! 人のこと言えないはずだ」
『我を魔物風情と一緒にするな』
「おいちょ!」
肩に乗るサイズになってついてきたクロが答える。
まあ言葉を発してもいいけど、話がややこしくなるのはやめてほしい。
『我は神より作られし……』
「だまろうか。クロちゃん。話が脱線する」
『むう』
まったく。神獣ってのも大変ですな。
「俺が言いたいのは、人間と同じ……いや、それ以上の知性を持つ魔物と共存できるかという話だ」
「何が言いたい」
『人とは醜いものだ。自分と違うものは排斥する。そういう戦争を見てきた。何度もな』
「まあ。そのうちわかるさ」
俺の場合、ラノベあるあるで知ってるだけなのだけどね。
人を中心にした異世界系はこういう展開がお決まりだ。
「村には数週間滞在させてもらう。じゃあな」
そうして調査が始まった。
久しぶりのやーつ。
なんか文章がつまらなくなってきた。
でもまあ、努力微力 a びゅーてぃほーすたー