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目立ちたい裏ボスは今日も今日とて目立たない~転生陰キャは変わりたい~  作者: 悪魔のケチャップ
一章 学園編 一幕 裏ボスは転生しても影が薄い 
3/15

EP3 裏ボス実習。それでも目立つことを知らず。

入学式から月日は流れ、三か月。春の空気はすっかり夏を孕み、暑い夏が始まった。前世の俺はこんな日(うようよリア充どもが跋扈する日)には引きこもりを実行していたが、今世は違う!夏だから出来ることは全部やろうと思う。あくまでも出来る事だが、俺はこの世界の最初の夏を謳歌するぞ。


「どうしたのですわ。そんな気持ち悪い笑みを浮かべて。お前、とうとう精神までおかしくなりあがったのですわ」


おっと顔に出てたようだ。……イリスも相変わらずのようで何よりだ。


「ていうか。あの夜はユリアだったのに、いつのまにかお前呼びだし……」

「名前が長いから。ですわ」

「同じ三文字だよ!?」


でも、このようなくだらない会話を三か月も続けてきたのだと思うと何か感慨深い物が……。


「あるとは思いませんですわ」

「思考読むのやめてくれ」


3か月も続けたせいで、思考読まれ始めたよ……。まったく。


「そういえば。もう少しで実習ウィークですわね」

「なんじゃそりゃ」


食後の氷菓子を食べながら聞く。因みに付け合わせのドリンクは、俺はコフィ―というまんま発音いいコーヒーでイリスは紅茶と共に味わってる。


「知らないとは思ってましたが本当に知らなかったですわ。こいつ。はあ。実習ウィークとは、調理実習、迷宮実習、舞踏自習という三つの実習のことですわ。夏休み前の生徒の絆を深めるいい機会といわれているらしいですわ」


そーなのかー。って実習!これは目立つチャンス(二回目)!

毎度「主人公補正」という邪魔が入ってきて三か月、まったく目立たなかったが(逆に周囲に疎まれてる)、これは一転攻勢のチャンス。頑張るしかないようだ。


「なんか前もこんなことありました。ですわ。でも実習には成績ポイント10000以上のチームじゃないと参加出来ませんのよ。友達がいないお前が参加できるとでも?」


「成績ポイント」。ゲームにはなかったポイントで成績を表すもの。俺はよく分かっていないが進路が決まるみたいなもんだろう。そしてしれっとディスるのやめろ。


「俺は6000持ってるし、イリスもそれくらい持ってるだろうから一緒にやれば問題ないだろ?」


不思議と俺は先生からの評価は高いんだよな。

「……たしかに私はそれくらい持ってますが、3900点ですわ」


ou・・ギリギリ足りない。


「あとKP加算値もあるからもっと低いですわ」

「そういやKPってなんだ」


鑑定にも出てるけど……・。


「KPとは鑑定装置からわかる信頼を表した数値で、信用が大きいならKPは多く小さい、信じてない、嫌っているならマイナス。これは学校が所持している鑑定装置からわかりますわ。その合計がグループ合計値に加算されるですわ」


ほう。……!


「って、もっと低いってお前は俺のこと嫌ってるってことですかぁ?」

「さあ。どうでしょう。ですわ」


なんか怖くなってきた。それでも参加しない訳はない。


「まあ一応……申請してみるか。イリス付き合ってくれ」

「は?なぜ私が?」

「あ〜そうか……。友達と出るんだな?」


ゲームでは、イリスにも取り巻きが何名かいるしそいつらと出るんだろう。


「友達は……いませんですわ」

「取り巻きは?」

「いま……・せんですわ」

「なぜ?」

「それは……ある時、主人公に毒を抜かれたみたいで」


イリス曰く、貴族と気安く話す主人公に警告してあげなさいと命令して……入学イベだな。

入学イベと同じように主人公に絡みにいったが、その裏しかない笑顔(俺にとっては)に魅了され、いまではすっかり主人公の味方らしい。


「彼女らは私のことは嫌々従ってたみたいで……、今はボッチですわ」

「そうか。って俺がいるじゃん」

「あら。すっかり忘れてたですわ」


ヒドい。まあ、他の人にあんな不気味がられてたし嫌々従ってたのも無理はないか。


「なら、なおのほか申請するしかないだろ。いま受け付けてるんだろ。加算値は……まあ、俺はお前をとても信頼してるから大丈夫だろう。KP50はあるぜ」

「ユリア?!KPって信頼じゃなくて好感度といわれ……って手を引っ張るなですわ」


そのまま俺は受付とされている部屋にイリスをひっぱっていった。

 もう少しギリギリかと思った申請、問題なくOKでした。足りたようでなにより。


「……そういや俺はKP70って聞いたから、俺のKPだけじゃ足りんよな。イリス、KPいくつだ?」

「……10……」

「それじゃあ足りんだろ」

「……30……」


怪しいな。そういえば鑑定でもKP出たような?やってみるか。


《イリス・フォン・ノワール HP30/30(30000/30000) KP95》


()が実数値だから、……HPは俺より多いんだな。はあ、俺は魔道師より紙なんだ。まあでも防御で……、分からないか。そうだKPは……ミナヵッタコト二ㇱョゥ。そんだけ信頼してくれてると思うとうれしいけどな。


「まあ。……いけるなら良しとしよう?俺も今んとこ信頼出来てんのイリスくらいだからそれくらい信じてくれてうれしいよ」


《KP100》


あら100行った。


「そうですわね。ふ・・ふふ。そんなに嬉しいならワタクシの……取り巻き……になってもいいですわよ?」

「はいよろこんで」

「え?」

「ん?なにか?俺はイリスの取り巻きでもなんら問題ないが?なにか」


あれ俺ら、テンションおかしくなってきたかな?まあイリスのせいだ?そうなのか?ん。


「おう。イリスじゃねぇか。その横にいるのは……ゲッ」

「どうしたアレク?ああ。あの黒髪と臆病者か」

「こんにちは!」


げげげ。黒狼メインキャラ2人+主人公じゃないか。


「ストーカーと王子失格と下民。なんのようですわ?」


煽るのやめようか。イリスちゃん。


「くくく。王子失格とは、手厳しいね。婚約破棄のことまだ根に持ってるのかい?」

「いえ。まったく。親の話で毎回出てきてうんざりしてるだけですわ。「黒髪ってだけで婚約破棄とは……。王子失格だ」って父上がうるさくてしょうがないことしょうがないこと」


へえ王子……もといアリウス王子殿下が元婚約者なんだ。なんかドロドロしてきたな。元婚約者とその彼女。自分の事を狙う王子の友と、影の薄い(イケメン?)の取り巻き(仮)。イリスも大変ですな。


「君のお父上には魔族の件でお世話になっているよ。それで、そちらの彼は?」

「ユリア……ユリアス・フォン・オルバンですわ」


俺はひざまずく。


「ほう。あの義賊の家の……。楽にしていいよ。で?君の心はそいつに盗まれたのかい」

「御冗談を。オルバンといっても今はただの子爵ですわ。まあそこのストーカーから盗まれないようにしてくださって感謝はしていますが」


オルバン家は、300年前の第四王子と義賊の妻が起こした家だ。

王城の富を貧民に分け与えようと忍び込み、裏庭に忍び込んだ捨て猫に餌をやっていたところ第四王子に見つかってしまう。しかし動物が大好きな王子は、動物にも富を与える女義賊に心を奪われ、貧民区に富や食料をもって行き、逃げた義賊を探したという。

数年後、貧民外の治安が荒れ、富を狙う怪しい連中に捕まった王子は女義賊に助け出され、そこで思いを伝え、結ばれ、オルバン家が起きた。彼らは貧民街の支援を行い、治安改善に大きく貢献したために子爵位が与えられ、そして今に至るロマンチックな家だ。

要するにこの世界の王族っておかしいから出来た家だ。それでも今の国に大きく貢献した一家だとおもう。

でも義賊が餌やりっておかしくね?絶対違うだろ。


「ああ?さっきからストーカーストーカーうるさいな。あとセリルを下民って言うんじゃねえ」

「それは私も気になったことだ。ここは身分差はないんだよ。イリス」

「殿をつけてくださいます?それをいうならユリア……ユリアスを臆病者と言うのもどうなんでしょうね。ですわ」

「こいつは俺とセリルの手柄を奪ったんだよ」

「アレクさん落ち着いて。私は気にしてませんから」


おいおい。セリルさんよぉ。その言い方だと……。


「平民。その言い方だと、臆病者ということ自体は否定しないということでよろしいですわ?」


さっすがイリス。俺の言いたい事を言ってくれる。


「だから平民っていうんじゃ……」


そろそろ舵をきるか。相手が喧嘩を売り、イリスが買ってお釣りをだす。千日手だ。


「おい。アレク」

「なんだ臆病者。その口調……やんのか?」

「やってもいいぞ。まあ……」

『もう一度潰すだけだ。』


ちょっと怒りを込めて言い放つ。メンチっていうのかな?知らんけど。

……言い返してこないな。はあ、臆病者はどちらですかね。


「次やるときは今度は手加減できないかもな。いくぞイリス」

「……!はいですわ」


《ユリアスは威圧を獲得》


おろ。なんか獲得したな。威圧……今の感じでいいのかな。威圧ってボスらしい特技だ。

ユリアス・フォン・オルバン。

第一印象は……影が薄く覇気がない。顔はいいからモテることはモテるだろうが……。まあしかし性格は聞くところではいまいちだ。イリスはこんな男が臆病なイケメンがタイプなのか、まあ腫物どうしだから、仲良くなったのか……。そう思っていた。

しかしあの時の怒気……まるでいつでも殺せると言ってるようだった。アレクがかなわなかったのも納得させられた。それに身分を気にしない度胸。彼は私ですら殴れるだろういや殺せる。イリスはそんなとこに引かれたのか。あの呼び方だから完全にそうだろう。


「ちっ。見くびってたみたいだ」


となりでアレクが頭を掻く。


「そうだね。彼は底知れないね。この国にあんな奴がいるなんて、驚きだ。……評価を改める必要がありそうだ」

「そうだな。奴は強い。俺以上に……」


彼はセリルに好印象をもっていなさそうだし、殺すならセリルが一番最初に殺すだろう。

いざというときは守らなければならない。


「強くならなければね」


王子達は彼らの知らぬところで、正しい推測をし、決意した。

ただ一人を除いて。

「ふぃー肩凝った。イリス〜ああいうとき無視するのがいいと思うぞ。……イリス?」

「お前。いやユリア。私と友達になりませんか?」

「え?いままで何だったの?」

「取り巻きですわ」

「ソウナンダ……・。まあ、俺は喜んでなるぞ」

「よろしいのです?私は気味が悪いと……」


イリスは足を止め、うつむく。言いたいことは分かる。


「黒髪黒目のことだろ。はあ」

「なんですか!その目は……私は真剣に……」

「そんなこと気にするんならそんな友達になりたいとかいうな。言わなきゃ自然に友達だぜ。それに、俺は黒髪黒目……後ついでに闇魔法。そんなこと気にしない。イリスはイリスだ。第一それが魅力だろ」

「魅力……?」

「そうだ。イリスは黒髪美少女だ。セリルとは天地がひっくり返っても比べ物にならない。太陽と寄生虫だ」

「太陽と寄生虫って。それに黒髪美少女!遂に頭おかしくなりやがりましたですわ」


口調。戻ったな。


「それでいいんだ。それが俺の信頼するイリスだぜ。KP」

「だからそれは好感……。まあいいですわ。というわけで今日から友達……いや右腕ですわ」

「おい友達と右腕どっちが上なんだ?」

「自分で考えてください?ですわ」


また騒がしくなったがそれでこそいいんだろう。俺は心底絶望した。黒髪なだけでこんな子がここまで気にしなくてはならないのか。魔王どんだけのことをしたんだよ。そういやメインストーリーボスは魔王の後継者だが、赤髪だぞ。だったらエンヴァの方が気味悪いだろ。不思議だな。……KP100で友達か……。

日は流れ、夏はドンドン深まる。そんな暑い日に多くの生徒がキッチンが並べられるグラウンド。食中毒は心配だが、ここでやるらしい。予想通り行われるのは……。


「これから調理実習を始める。これは来たる3日後のダンジョン攻略実習の予行演習だ。ルールは簡単。材料を野生動物がいる森から取ってきて、それを調理してくれ。それを我々が評価する。ちなみに毒性生物はいないので安心してくれ。ちなみに調味料も隠されているぞ。探して見てくれルールは以上。では始めてくれ」

「危なくなったら助けるが無理はするなよ」


簡単な説明の後、「準備はいいか」「質問はないか」をすっ飛ばしてさっそく始まった。生徒達は作戦を立てるもの、そのまま突っ込むもの。ゆっくりと談話を楽しむもの。様々なグループが行動を始めている。こういうくだり前にもあったような?


「暑い……。こんな中でやるのかよ」

「野営の実習ですわ。外でやらなきゃ意味ないでしょう?ですわ」

「そうだけどさあ。はあ。二人だけのグループは俺らだけだな」

「それはそうでしょう。ポイントをまともに取れてる人達は友達が多いですし、多い人は頼られますから、6000ポ

イント台で誰にも声をかけられないのは貴方くらいですわ」

「かなしいな」


影が薄い。臆病者。卑怯者。散々なものだよまったく。


「まあ材料取りにいきましょう?時間がもったいないですわ」

「そうだな。俺が行こう。……イリスも行く?」

「当然」


ですよねー。二人なんだから。肉を手に入れたいから、野生動物も狩る。そのため遠距離は必須だ。まあでもどんなもんが取れるかはわからんし考えるより行動だ。ゲームで、最高評価と言われる料理の材料は、宝箱にある香辛料と肉、オニオン、コウライ(人参)だ。そのため急がなければいけない。


「んじゃ。ほい」

「かがんでどうしたのですか?ですわ」

「何って背負って走るんだよ」

「はあ?!何を言ってるのですか!?」

「だって二人だと移動遅いだろ」

「でも……おんぶなんて……」


ああ。貴族の誇りか……。


「んじゃこれでいいだろ」


俺は目にも止まらぬ速度でイリスを抱えた。お姫様だっこってやつだ。


「ユリアなにをやってぇ。//」

「痛くないか?んじゃいくぞ」

「え?んちょ。待ちなさい。待って。止まりなさいですわ~~~~~~~」


イリスを抱えたまま全力疾走。森を突っ切っていった。まあその時のイリスの顔と来れば傑作だったけどな。

「ついたぞ。イリス。……おーい大丈夫か?」


だいぶ速度を出したから酔ったかな。まあ俺も悪路に揺られながら抱えられて走るのは御免だしな。絶対酔う。吐く自信がある。


「はあはあ。死ぬかと思いましたですわ。いろいろな意味で心臓に悪いですわ」


まあいいだろう。着いたんだから。


「ていうか。どこなんです?ここ。ですわ」

「ここは香辛料の宝箱がある洞窟だ」

「なぜそれを知ってるか疑問に思うですわ」


それはゲームで……って言えないよな。


「勘だ。ああ、魔物が出るぞ。問題ないな?」

「当然。ですわ」

「いくか」


暗い暗い。洞窟を進む。まあ暗いといっても光ゴケがあるお陰で見えない程じゃない。夏なのにひんやりして気持ちがいい。


「みてください。滝があるですわ」


なるほどこれのお陰か。


「絶景だな」

「そうですわね」


いい景色だ。光ゴケが水を発光させてるようで幻想的だ。……この世界だと、こんな景色が多いな。地球と比べてこう思うことが増えた。いい傾向だろうか?まあ。いつか慣れるだろう。……おっといつの間にかボスのようだ。おおねずみだ。魔物の中では最弱クラスだが、魔物は魔物。野生動物と違って好戦的だ。このイベントの隠しボスである。


「出会がったですわ」

「やるか。支援頼む」


俺は地を蹴り、駆ける。このネズミなら痛恨で一撃だが、イリスの魔法も観てみたい。だから地を切り裂き土煙をあげる。敵の視界を奪ってそのまま後ろに回り、蹴り飛ばす。イリスの方へ勢いよく飛んで行ったネズミをイリスは闇魔法を放ち撃ち落とす。そのまま絶命した。


「あっけないですわね」

「こんなもんだろ。さて宝箱だ」


丁寧に奥に置いてあった。まあこれは罠で警報が鳴り、更に魔物が来て動物が逃げる。本当の宝は……。


「ここだ」


石を投げると宝箱が見えるようになった。その鍵をピッキングツールで開けると、まあいつも通り香辛料が入っていた。


「よし。これで調味料を手に入れたな。材料の一つゲット」

「いろいろと疑問に思うことはありますが、ひとまず良かったですわ」


その後俺たちは森を探索し、オニオン、コウライ、獣肉(イノシシと鳥)を手に入れ調理場に戻った。探索中警報がなった。どうやらあれにかかった奴がいるみたいだけどしらんしらん。


「というわけで調理の時間ですわ。こうみえても私料理に自信がありましてよ」

「そうなのか。じゃ頼む。カレーな」

「手伝ってはください?!」


エプロンを着たイリス。ナイスです。そしてイリスの手料理!楽しみだ。あの食材でできるカレーはこの実習では最高級。度肝を抜く料理が作れて、一躍有名!ぐふふ、色々楽しみですなぁ。


「じゃあまず。出汁を取りますわ」

「ほう」

「鍋に骨とネズミの毛と野草を入れて」

「ほう?」

「調味料を全部……」

「スト―――――プ!ストップストップ」


殺す気か。まさか料理下手……なのか。


「なんでですわ?」

「いや普通入れるか?骨はまだしもネズミとか草とか」

「え?入れないんですわ?」


だめだこいつ。料理の「り」の文字も分かってない。……・手料理はお預けか。トホホ。


「もういい俺がやる。協力はエプロンだけで十分だ」

「え?いや。お手伝い……」

「断じて駄目だ」


心を鬼にして、後ろ髪引かれながら、断腸いや切腹の思いで言う。まあ俺は料理はまあ得意な方だ。カレーくらい余裕で作れる料理男子だ。……手料理……。


「わかり……ました……わ」

「まあ。そんなに手伝いたいならもっと腕を上げてくれ。練習したいなら付き合う」

「なら是非とも!ですわ」


ふっ。いつかは食べてやる。まあいい。始めようか。

オニオンは縦半分に切り、芯などを取り除き、放射線状のくし切りにする。

ジャガは……ないか。毒があるといえばある。適切な処理を出来ない貴族もいるし。

それで、コウライは縦半分に切り、3cmくらいの大きさの乱切りにする。

油をひいた厚手の鍋に野菜と肉を入れ、アクを取りながら煮込む。いい感じの目安はコウライはくしが通るくらいだ。

一旦火を消し、ルウ……じゃなくて香辛料を入れる。赤い缶のイメージだ。トロミは……そういや小麦粉は貰えるんだっけ。


「イリス。小麦粉もらって来てくれ」

「はい。ですわ」


イリスが持ってきてくれた小麦粉を水で溶き、少しずつ加える。……いい感じだな。よし完成!って俺は料理人じゃ無いんだがな……。ちょうど時間のようだ。教官の分を少し取り分けて……よし。


「これから。試食会を始める。自信のあるやつ、余ってるやつは俺達にくれ。評価するぞ」


教官用に取り分けた皿を渡し、そして……。


「「いただきます」」


カレーを口に運ぶ。……やっぱカレーは旨いな。まあ自分が作ったってのもあるが……はあ、イリスの手料理カレーが良かったな。


「おいしいですわ。・・お前料理も得意でしたのね……」

「まあ。ほどほどに」

「私が食べた中では一番おいしかったですわよ?」

「そりゃ、茶菓子ばっか食ってるからな」


まあでも嬉しいもんだ。前世では人に手料理を振舞う機会なんて無かったから……。いつ振りだろうな。料理を褒められたのは。


「どうしたですわ?悲しそうな顔をして」

「いやな。久しぶりだと思ってな」


流石にばれるか。嬉しいんだぞ。……そうだ。他の人の反応は……。


「いやーおいしいな」

「ええそうね。この料理奥が深いわぁ」

「普通に絶品」


そうだろうそうだろ……。


「セリルちゃんの料理絶品だぁ」

「ええ。どこでならったの?教えてほしいわぁ」

「ありがとうございます。私、習い事したことないので独学で……」

「なら。こんど一緒に行きましょう。新たな発見があるわよ」

「はい。是非!」

「それに比べてあのチーム。二人だけで参加か。そしてカレー。出所の知れない香辛料。不気味だなぁ」

「ええ。黒髪女と臆病者。口に入れたくない」


解せぬ。なんでや!大体なんで最高評価料理じゃないのに。主人公補正、恐るべき。ていうか罠に掛ったのお前ら主人公だろ。……香辛料がなくてシチューか。


「まったく。貴族が平民の料理を食べて大丈夫かしら」

「そうだな。まったくだよ。はあ、無駄になったな」

「作り過ぎたですわね」

「ああ」


まあインベントリにいれて食うとするか。夜食ゲットと思えば……良かったかな?


「あの。オルバン君」

「ああはい。何でしょう?」


先生が話しかけてきた。まさか先生も気に食わなかったとか……。


「こういうのは教師失格だが……。おかわり貰えないか?」

「え?……ああはい。好きなだけ」

「すまないね。私は食が細いんだが、この食欲をそそる匂いがどーもね。カレーは好物なんだ」

「わかります。カレーはにおいだけで最高ですよね」

「いやあ。カレーを作ってくれて感謝だよ」

「あ。そうだ」


カレーを深皿に盛って、そしてさっき作った・・じゃーんうどん。粉物はだいぶそろってたから作ってみたぜ。


「これをどうぞ」

「これは、パスタじゃないな。異国の麺かい?」

「そうです。どうぞいただいてください」


パスタみたいに巻きつけて食べる教官。この世界に箸の知識は無い。東方にはあるのかな?


「うまい」

「でしょう!」


その後、片付けをし、調理実習を終えた。飯テロが多いけど楽しかったな。

……やはり主人公補正をどうにかしなければな……。ダンジョン実習、大丈夫だろうか?


「というわけでお疲れさまでした~」

「おつかれー」

「セリルちゃーんこれ食べる?」

「よーし、いただきまーす」


この実習に参加した生徒たちは打ち上げをしている。……なあ、三日後ダンジョンでその後舞踏会だよ!浮かれすぎだよ。まったく大丈夫かねぇ。まあ心から心配してないけど。そういう考えが目立たない要因かもな。まあ仕方ないだろう。


「まったく浮かれすぎじゃないかですわ。騒がしくて落ち着いて食べれません」


そうだよな。イリスもそう思ってるし、もうちょいテンション下げてくれよー。


「チッ。何で黒髪がここに」

「せっかくだし、追い出そうぜ」


聞こえてますよー。ノリで追い出そうって……。ってマジで水もって寄ってきた。それを傾けて……。おっと。


「うちはおさわり禁止だ。水をかけるのもなおのことだ」


なんてね。一度は言ってみたいセリフである。俺は華麗にコップを奪って見せた。因みに言ってみたいセリフはあと100個ある(そうだった気がする)。


「あら。ありがとう。ユリア。で何の用ですわ」

「チッ、覚えてろよ」


何を覚えればいいんですかね。はあ、本当にどうしようもないな、黒髪差別は。

……でもそれは俺が言えた話でもない。地球では無意識下の差別があった。そして自分も差別をしてない訳じゃないだろう。そんな奴が、自分が……自分に親しい人が差別されただけで、差別するな、やめろ、と手のひらひっくり返して言えるはずじゃないと思う。人間は差別される側の気持ちがわかっても、差別をやめられない。人は無意識下でも上下をつけたがる。それに甘えたくはないが、少なくとも他人に考えを押し付けるほどの資格はないだろう。


「イリス。いくぞ」

「はい。ご馳走様ですわ」


俺は夜風に当たりに行く。心地よい風だ。夏でも変わらない涼しい風は、さっきまでの熱を冷ましてくれる。しかしその風は春のあのころと比べ、虫の音や草木の揺れる音が加わり華やかになっている。


「五月蠅い夜ですわ」

「せっかく感傷に浸ってたのに邪魔しないでくれるかな?」

「ふっ。黄昏る痛い人を現実に戻しただけですわ」


……まあそうかもな。確かに感傷に浸る場合じゃない。外国人には虫の音は雑音に聞こえるんだっけ。


「よし。三日後のダンジョン攻略頑張るか」

「ええ頑張りましょう」


暗い穴倉。そこには闇が満ちている。ダンジョン。それは生き物と言われていて、財宝を使って侵入者を釣り、養分として成長する。まあこのダンジョンはとても簡単なダンジョンで農民でもクリアできるとされ、生徒でも余裕でクリアできる。だからこういう実習があるのだろう。まあ10000以上のグループなら余裕で生きて帰れるだろう。


「これからダンジョン実習を始める。一応言っておくがこれは訓練でもなければ遊びでもない。いいか、命が危うくなったら逃げろ。実力を見誤るな。体力に余裕をもって、警戒を怠るな。質問があるなら遠慮なく来い。そして質問をせず無謀な突撃をするなら死ね!」

「まあ簡単なダンジョンです。警戒を怠らず、頑張ってください」

「では始める」


生徒達は階段を降りたり質問をしたりしてる。まあ俺たちは……。


「さて。頑張ります。ってちょっといきなり何を。ってまさか。また?」


森でやったようにイリスを抱え……。


「ちょっと~」


穴倉いや、ダンジョンを駆ける!一気に先頭を追い越しそのまま加速を続ける。


「俺の首をつかんで、腕に座ってくれ。って痛い痛い。もうちょい優しく。肩を組む感じで……」

「変なとこ触らないでくださいね。ですわ」


そうすることで片腕が空き……。道を阻む魔物を走りながら切り捨てた。


「ちょ。素材は……」

「回収してる」


こんなときのインベントリ。いやー便利ですな〜。

って・・よいしょ。いや〜柔らかいなぁ。ばっさばっさ斬れる。


「イリス魔法は使えそうか?」

「的が大きい敵ならいけますわ」

「そうか。ならいい」


駆け抜けると大きな部屋に出た。……ボス戦だ。


「でかいゴブリンですわ。毎年こいつでお嫁にいけない方々がいたとか」

「え?」

「冗談ですわ」


笑えないなあ。まあいい。


「魔法で隙を作れ。隙が出来れば切り捨てる。魔力は温存しとけ。飛び道具はお前だけだ」

「はあ。人を道具みたいに……。まあいいですわ」


俺はでかいゴブリンの攻撃を走って避ける。イリスは詠唱を終え魔法を放ち攻撃する。的がでかいから余裕で当たった。ってすごい威力だ。ワンパンかよ。


「あらお前は必要なかったですわね」

「ふん。先を急ぐぞ」


今回の実習の最終層は五階。さっさと行くぞ。

……このダンジョンには、裏ダンジョンがある。99階の始まりの迷宮だ。世界で一番大きい迷宮であり超高難易度、LV500もなければまともに攻略できない。クリア後要素だが、俺には一握の不安がある。レベル外アーツが使える奴がいるということは始まりの迷宮も行けてしまうのではないかという問題だ。

俺は行ける可能性が高いと思う。なぜなら竜砕拳、ライトニングブレード、……あの王子が使うのは閃光槍か。まあその三つを当てまくれば一階の相手には勝てるのだ。

つまり俺が考えたこれからのシナリオ予想はこうだ。始まりの迷宮の敵が5階層が出てきて生徒大ピンチ。それを主人公が助けてモテモテ。そんなことが起こるだろう。と思ったが……。


「杞憂だったな」


現在5階層。ボス倒し余裕。さて、さっさと帰りますか。


「もう実習は終わりですか。早いですわね。三日間の予定でしたのに。ですわ」

「そんなこともあるさ。さあ帰って休もうぜ。休日だ」

「なんか腑に落ちませんわ」


いやぁ。そりゃあ裏ボス二人じゃ30分で終わるでしょう。案外余裕だな。

これで俺も目立つこと間違いなし……。


「あぶない!後ろ!」


ゴリラのようなモンスターがイリスを背後から殴ろうとしている。いつの間に。

俺は、神速ともいえる速さで肩に剣を刺し、攻撃を止める。


『ゴォォォ。ガァァァァァァ』


ゴリラの咆哮に思わず耳を塞いだが、悪手だったようだ。ゴリラの裏拳が飛んでくる。それを剣で防ぐが……。


「がはっ」


高い膂力と重さを持つゴリラに押し負け、イリスを巻き込んで吹き飛ばされる。まずいイリスが壁に!意識は……クソッ。失っている。まあ、後衛職根性だから仕方ない。俺は空中でイリスを抱き寄せ、回る。イリスが壁と俺にに挟まれるのは回避したが引き換えに俺の紙装甲HPは大きく削られた。……それだけじゃ無かった。なんと壁が崩れたのだ。まじかよ。こんなこと。暗闇が満ちる所へ落ちてしまう。ああ最悪だよもう。フラグ回収早すぎ。

せめてイリスだけは守ろうと抱きしめ、そのまま虚空に落ちていった。


ありがとうございます。

今回は読みやすいよう工夫をしてみました。ほかの人から学ぶって大事ですね。

次回予告ですw

ダンジョンに落ちた。ユリアとイリス。しかし色々あって死にません。でもそこは超高難易度ダンジョンの深き場所で・・・。

次回もよろしくお願いします。ポイントやブックマークを付けてくださると励みになります。

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