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EP1 裏ボスと転校生

「そろそろ目立ちたい!」

「突然何を言いだすんですわ」


食堂で料理をつまみつつ、本音をぶちまけるがあっさりと流される。

冷たい……


「あ! ユリアさん!」

「ユリアス! 元気そうでなによりだ」


お! エルとアリウスじゃないか。

ん? アリウス。


「チッ」


イリスが舌打ちする。アリウスは苦い表情になる。

修羅場だな。俺が嫌いな空気だ。


「え〜と? 彼女(黒髪美少女)この方(金髪イケメン)は誰ですか?」


エルは全くこの空気を気にしていない……気づいていないようだ。


「私はイリス・フォン・ノワールですわ」

「私はアリウス・ウル・フォン・レストピアだ。貴女の名前は?」

「私はエルセリアです。長いのでエルでいいですよ~」

「そして俺は……いやなんでもない」


あの神と同じことをいうところだった。

……一人称「わたし」と「わたくし

漢字の比率が偏ってるな。


「まあ、座れよ」


アリウスはイリスの横に座る。しかし、イリスは俺の横に移動してきた。

王子の横が嫌だったんだろう。エルセリアは空いた席に座る。

四角テーブルの正しい使い方だ。


「……まあ、よろしくお願いします。ですわ」

「ああ……よろしく」

「あんたに言ってないですわ」


手酷いですね。

その王子は君の事を想ってるんだけどね。

まあ、嫌われる振り方をしたのがいけないよアリウス君……


「はい。こちらこそ~」


相変わらずエルはマイペースですね。


「この中じゃ一番、俺がクールだな」

「そうは思えない。ですわ」


相変わらず冷たい。


「はは……お茶とってくるよ」

「紅茶のアルグレスをよろしくお願いします~」

「俺はコフィーでイリスは」

「ブラックローズだろう?」

「ああ」


……マジで想ってたんだな。


「あいかわらず気持ち悪いですわ」

「まあまあ、そういわずにな」

「甘いですわ! お前、王子は嫌いじゃなかったの? ですわ」


結構嫌ってるんだな。


「別に毛嫌いしてるわけじゃない。どっちかといえば好印象だ。あくまで俺はセリルが嫌いなだけだ」

「まあ、愚民と一緒じゃないだけマシですわ。ねえエル」

「? セリルって誰です?」

「あんま関わらないほうがいい。あ、別に差別ってわけじゃない。不気味なだけだ」


エルセリアは少し真面目な顔になる。


「不気味ってどういう感じで?」

「そうだな。初対面は毛嫌いされてたのにいつの間にかみんな信者になってるみたいな?」

「……ふむ……その人って魅了体質……特殊体質だったりします?」

「体質?」

「体質っていうのは……」

「はあ……はい。お茶だ」

「あ! ありがとうございます~」


アリウスが茶を持ってきた。

香りを感じながら優雅にコフィーを一飲み。

ほっと一息つけた。


「ずいぶん疲れていますのね。ですわ」

「いや……セリル達と会ってね」

「肝が冷えたか?」

「ああ」


王子はすっかりこちら側ですな。

まあ、向こうから見たらこっちがイカれてんだろうな。

世間一般はあっち側だ。


「……えーとなんの話をしていたんでしたっけ? 忘れちゃいました」

「………はあ。また今度な」

「はい……」


まあ、話の流れ的にそうだと思ったよ。

忘れたもんはしょうがない。


「そういえば今日、留学生……転校生と言うべきか? 来るらしいね」

「……そうなの?」

「へ~! どのクラスに来るんですか?」

「黒狼の学級ですわ」


初耳学だ。この世界に留学なんて概念あるんだな


「イリスは知ってたんだな」

「当然ですわ」

「あいかわらず情報通だね」

「貴方は黙って」


アリウスは心なしか涙目になる。


「そういえば、ほとんどが黒狼の学級ですね!」

「そうだな。早い人が多いのが黒狼らしい」

「む。スピードでは負けませんよ」

「詳しいところは知らん」


いや、まあ、プレイヤー風情だったので詳しいことは知りまへん。

そもそも、転校生なんてゲームで来てねぇよ。

どこかで俺が歴史を変えた可能性がありますねぇ。

ここまでして目立たないのは、何でですかぇ?


「まあ、転校生が来たところで関係ないな」


そう呟くと全員が呆れたような目を向ける。


「まあ、そうだろうな」

「お前は相変わらず普通の学生ではありませんですわ」

「そんな考えでは目立たないと思いますよ~」


ごもっともです。



「さて、この夏休み、いかに過ごしたかな? 今日は他校から移ってきた……

いわば”転校生”が来ます。拍手!」


教師の指示通り教室のいたる所から拍手が湧き上がる。

しかし、隣のイリスは拍手などせず窓を眺める。

それに対してアリウスは真面目に拍手をしている。

長机の窓際は、教師の目には止まらない。

ちなみにいつもは俺が端でその隣にイリスがその横というのがテンプレだが、

イリスの横にアリウスが座ろうとしたせいで、席をチェンジせざる終えなかった。

……温度差がすごい。

俺は興味深そうに教壇を眺める。


入ってきたのは黒髪の少女。片目を髪で隠し、隠れてないほうの目には隈がくっきりと浮かんでいる。

肌は雪のような純白。声のトーンは妙に裏返っている。


「よ……よろしくお願いします」


うん。典型的な ”陰キャ” だな。

仲間意識が出てきた。

まあ? 今の俺は? 陽キャですか?


「ルキナ・フォル・オーメンです」


……教室の空気が冷える。

クラスメイトは冷たい視線を彼女に送っている。

”フォル” たしか隣国の貴族名だな。

問題はそれじゃない。”黒髪” であることが大問題だ。

魔王の影響で、黒髪は恐れられ差別されている。

横にいる美少女もその被害者だ。


「あ〜なんだ。みんな転校生の実力が知りたいだろう? 訓練場に行くぞ。静かにな」


教官が気まずそうにそう提案する。

……なんかどうあがいてもロクな結果にならなそうだけど。


「では、魔法を打ち込んでくれ」

「は、はい!」


彼女は手に魔力を集中する。

……強力な魔術が打てるようだな。

これならイリスと同じ流れになる。十中八九……ッ!

恐怖。自分から何かを奪われたような感覚。

本能がそれを恐れ、威圧を発する。


「ッ! あ」


魔法はファンブルした。

……思わず胸を撫でおろす。

お? こっちを見ている。心なしか睨んでいる?

まさか……嫌われた? 印象最悪だなぁ。どうしよ。


「ふっ。ファンブルしたよあの子」

「まさか劣等生ってやつ?」

「だから転校してきたんだろ」

「そうに違いない」


あー俺のせい? やっぱ、存在してるだけで違うのが格ってもんよ。

なのに目立たないなんてなぁ。おかしいだろ。


「次は剣術だ。相手したい奴いるか?」

「では、最強の私が」

「テレン・フォン・イプリキ。前に出ろ」


またあなたですか。

懐かしいですね。


「始め!」

「百裂突き!」


剣を適当に突く、芸のない技。

しかし、後衛っぽい彼女は避けられない。

いや、焦りによって避けられなかった?


「ぐっ」

「そこまで!」

「ははは。劣等生! 残念だったな」

「劣等生……?」

「口を開くな」


テレンさんは虚を疲れた彼女の顔面に蹴りを食らわす。

酷いねえ。

もちろん俺は動かない。ユリアス・フォン・オルバンは動かない。

そりゃ、まあ、負けたほうが悪いしょ。

死体撃ちする無邪気な子供のような彼を見つめる。

彼女は蹲り、耐えている。慣れたような感じで震えている。教師は目を瞑っている。


「見苦しい!」


突然、大声が飛び出す。イリスだ。


「何が劣等生? あなた達は黒髪が気に入らないだけでしょう? 人をあなた方の小さな知識で分別しないで下さる?」

「なんだと?」

「黒髪の魔女。魔王のなり変わりが……」

「黙れ。雑魚が」


珍しくガチギレだな。


「お前もですわ。ルキナとやら」

「ッ!」

「どうして蹲る。どうして立ち止まる! 立て。私の”黒” を汚すな」


あらら。委縮してる。

でも、その目に映る光はまばゆい。


「それと、テレンとやら……その程度で最強を語るな。ユリア! わからせろ」

「え? 俺?」

「お前以外の最強を見たことありません。ですわ」


ほう。やる気にさせてくれるじゃあないか。

まあ、目立ってやるよ。目立つチャンスだ。

逃す俺はどうかしてたぜ。


「はあ。まあこの世界は負けたほうが悪い。それは分かってるよな?」

「ええ。ですわ」

「だが、思うんだ。この世は決して弱肉強食じゃない」


威圧を込めて、睨む。

俺を信じる集団は目を輝かせて、俺を嫌う集団は恐怖を浮かべる。


「油断、慢心、勘違い。そんな奴が食われる。そこに、弱者も強者も関係ない。へし折ってやるよお前の最強を」

「くっ。黙れぇぇぇぇぇぇ」

「図星で暴れ出すのはださいし傲慢だぜ?」

「百裂突きぃ!」


ランダムな軌道を簡単に避ける。

ステータスが半減しても、勘は冴えわたっている。


「スターレール」


手抜きで放った、星の軌道。

テレンさんの剣はボキボキに折れ、胴体に数十発入り気絶した。

影から出てきたクロさんに感謝を告げる。


『おい。我の出番……』

「ご希望には添えたか?」

「ええ。ですわ」


俺は彼女の前に膝をついて問う(クロは無視)。

彼女は満面の笑みで肯定する。


「あ~いろいろあったが教室に戻ろう」


先生が適当に、そして気まずそうに告げる。

教師がそんなんでいいんか。

その後、場の空気は最悪だったが王子のリーダーシップで何とかなった。

後始末上手すぎるだろ。さすがアリウスさんでげす。

はい。5連続投稿最後です。

今回から書き方を変えて、よくある投稿方法にします。

見やすいしね。

木曜更新じゃなくて、出来次第投稿となります。

大体、「木曜・土曜・日曜」のどれかにしたいとは思いますが


ポイントやブックマーク登録をしてもらえると、ケチャップは爆ぜます。

モチベも爆発しますので是非よろしくお願いします!

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