7 助け
今日は待ちに待った文化祭なのだが、キーマンであり、文化委員の屋久が休みになった。突然の報告で、クラス全員がザワつきだす。
「おいやばいぞ、絶対な司令塔の休みは考えてなかったな」
「屋久がいれば、大丈夫だと思っていたわ」
これはまずい、想定外すぎる。俺も焦りは隠しきれない。
「どうするの君、私と美崎は生徒会で手伝えないよー」
「どうするもこうも、俺が引っ張るしかない、屋久の一番近くにいたのは、紛れもなく俺だ」
長谷川はクラスからの支持は高いが、実はリーダーは全くできない。だから、俺がやるしかない。大変ピンチではあるが、自分ならできる!謎の自信が湧いてくる
「皆聞いてくれ、俺が今から指揮を執る、いいか?」
「えー寺内は信頼できないよ、だって敗北しかないじゃん、告白といい生徒会演説といい」
「そうだよ、寺内は負け運高いじゃん、だからさ、信頼できる長谷川君にしようよ」
クラスの皆は支持してくれない。むしろ、最悪パターンである、長谷川をリーダーにしようとする。
長谷川がリーダーできないことを知るのは、俺だけだ。だから自然とそうなるのは仕方がないが、このままでは、文化祭で一番になることができない。
「皆、寺内君を信頼しようよ!だってあんなにも準備頑張っていたんだよ」
雫だけが味方をしてくれたが、そんなのはお構いなしに、クラスは無理やり長谷川がリーダーとして、動き出した。
「ごめん君、力になれなくて、そろそれ生徒会の仕事があるから、もう行くね」
「あー味方してくれてありがとうな!こっちはどうにかしてみる」
とは言ったものの、俺は広報しかさせてもらえず、ただ時がたつ。結果は予想通り、上手く機能しないまま午前の部が終わり、昼休憩にはいる。
「どうするの長谷川君、このままでは頂点どころか最下位だよ」
「と言われましたが、俺わかんないよ、こんなこと」
「やっぱり屋久か雫がいないから無料かよ」
クラスの中で揉め始めた。このままでは終わりだ。俺が失敗ばかりしたから、このままではあれも使えないし……
「ちょっと皆さん、何してますの!」
このピンチに来たのは__美崎だった。
「今はクラスで揉めている暇はないでしょ。さっさと午後について話し合いなさい!」
「じゃあ、どうすれば……」
「そうね、午後からは寺内君をリーダーにしてやりなさい!これは副会長命令です」
救いの一手だった。美崎の言葉では、さすがの皆も聞かざるおえない。
「これでいいですね寺内君、一番にならないと生徒会に入れませんからね、ここからが正念場ですよ」
「あーありがとう美崎、お前は最高の副会長だ!」
美崎は少し頬を赤らめた気がしたが、すぐにどこかへ行ったので、はっきりとは見えなかった。けれどこれであれを使える。
「皆聞いてくれ、ここから逆転をはかる、そのためには、皆の力が必要だ」
「いいんじゃね、翔希で、あいつならできると思う」
長谷川、最高だ。
制限時間は午後6時まで、残り5時間。屋久の思い背負ってやるぜ!獣を狩るような目になる。
「指示する!広報組は広場を回れ、今から体育館で劇が始まるから、そこで人を集めろ、接客組にはクマのぬいぐるみ着てもらう、そして調理には俺が入る」
俺は、屋久にリーダーについて聞いていた。
屋久の心得1 接客には面白い服装を
屋久の心得2 午前の内に人が集まる所の確認
屋久の心得3 リーダーは行動で引っ張れ
「あそこに面白い服装のお姉ちゃん達がいるよ」
「そうだねー、せっかくだからあれ食べる?」
「食べる!」
子供連れも人たちが集まってくる。そして、広報効果もあり、どんどん人が集まる。
よし、順調だ。俺達は順調に売り上げをあげていく。まだトップには、歴然な差があるが、確実に縮まっていき、クラスも団結力も上がっている。
「すごいな、寺内君」
「本当だよ、屋久さん達に負けない、リーダーシップだ」
団結力も高まったことで、スムーズに店が回る。ここでまた一手打つ。それは美女による宣伝だ。その美女とは、この学校のOBである、俺の姉(寺内早紀)のこと。
「皆さん^ここの生姜焼きはひと味違いますよ、なんだって私の愛が詰まっているから!だからぜひ食べてほしいなー私のお願い聞いてくれたら、あんなことやこんなこともするのにな♡」
さすが元生徒会長。人の集め方を知っている。谷間を見せるのは、色々やばいとは思うけど……
姉ちゃんは知名度は本当に高い。だから男性だけじゃなく、幅広い年代の人が集まる。
3時になる。俺たちの勢いはすごいが、まだ一位と差がある。
2組売り上げすごすぎだろ。あんなに売り上げてもなお、890個の差がある。
「翔希、休憩にはいれ、ラストスパートの時に、お前の力が必要だ」
長谷川が変わってくれるらしい。全く今日はこいつに助けられっぱなしだ。
「そういや、翔希、回る友達もいないだろ、だから屋久の家に行ってやれ、せっかくだから生姜焼きも持っていけ」
痛いところはつかれたが、ナイスアイデアではあった。最初の部分だけでは、殴っているところだけど後者がその感情を打ち消す。
「そうするよ、サンキュー長谷川」
俺はこうして屋久の家に向かう。