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2 初めての告白

 「あの人がもしかして噂の寺内君?」

 

 「そうそう、あの告白宣言した人」

 

 「正直言って痛いよね」

 

 周りの生徒が、まるでゴミを見るかのように俺を見てくる。そして両端に逃げる。俺は王様気分を味わいながらこう思う。通学ってこんなにも冷たい視線を感じながらするものだっけ。まさか校内に、もうこんなに広がっていたとは……今日から進級というのに最悪の始まりだ。


 「おはよう翔希、2年生そうそう注目の的だな!」


 「悪い意味だけどな」


この男は、長谷川。俺の唯一の友達だ。高校1年生からの友達で、俺がクラスの端で一人いるところを話しかけてきた。長谷川は、高身長イケメンでクラスの中心、そして彼女持ちだ。俺からしたら嫉妬の塊でしかない。それにしても、なんで俺なんかに話しかけて来るのか未だに分からない。

 

 「なー2年生はどんなクラスになるだろな」

 

 「知らん、俺からしたらどんなクラスでも地獄だ」


 「そんなこと言うなよ、お前にとうとう彼女ができるチャンスだろ。今だから言うけどさ、正直言ってお前から行動しないと、彼女はできないと思っていたから行動してくれて嬉しいよ」

 

 さて皆様はイケメンからこんなセリフを言われたらどうなるだろう___そう答えは殴りたくなる。

 

 拳銃を撃ったような音がした。俺は、ありったけの力で、長谷川の腹に会心の一撃を浴びさせた。

 やがて俺の視界から長谷川は消えていく。それと同時に周りの生徒も恐れて消えていく。


 「なにするんだよ」

 長谷川はうずくまりながら俺を見る。


「いや腹が立ったから」

  

「それにしてもやりすぎじゃない」


「えっ……そう」

 

俺は、ニヤニヤしながら見下した。これで気が済んだし、こいつを学校まで運びますか。


「あの大丈夫ですか?」

 

俺が長谷川を運ぼうとした瞬間、後ろから誰かが声をかけてきた。振り返るとそこには3人の女性がおり、しかもその3人は太村戯たむらぎ美女ランキング上位3名、竹浦美崎、竹浦雫、木戸彩音だった。太村戯美少女ランキングとは、我が高校、太村戯南高校の男子が決める、美女ランキングのこと。

 

 「あー大丈夫です。では失礼します」

 

 俺は、彼女たちの目が直視できず、そのまま逃げて行った。やっとの思いで着いた学校には悲鳴と歓声が上がっていた。俺は、クラス表が貼ってある掲示板を見上げる。5組か。うわ!?長谷川と同じクラスかよ。しかもあの美少女3人組まで。告白したくねー、でもこいつにゲーム機奢るぐらいならましか。

 長谷川はかすかな声でしゃべりだす。

 

 「今年も同じクラスだね、よろしく」


 「あーよろしく」

 

素っ気なく返す。とうとう俺は覚悟決め、長谷川を保健室においてから、教室へ向かう。

教室の前に立ち尽くし、運命のドアを開ける。俺よ行くぞ!美女3人組だけはやめてくれ。はち切れそうな心臓に手を置き、ゆっくりと席に向かう。来い!俺の人生のパートナー!





 「寺内、これから夜露死苦!」

 

 微笑みながらこちらを見るその生徒は___太村戯激怖ランキング堂々1位、霜崎京子。見た目、性格すべてが怖く、先生すら近づくことができないやつだ。ランキングについては美女と一緒の決め方だ。だがそんなことはどうでもいい、俺はこんな奴に告白するのか……噓だと言ってくれ。これなら美女3人組が良かった。でも今は挨拶を返すそう。膝をかくかくさせながら……


 「よろしくお願いいたします。」

 

 周りの生徒が笑いだす。

 

 「あいつ、運悪すぎだろ」


 「霜崎に告るのかよ、高校生活終わったな」


 あーもういいや。さっさと告白して、楽になろう。

  

 「あのー僕と付き合ってくれませんかね?」


 心細い声で初めての告白した。

 

 「無理だけど」

 

 しかし、あっさりと返された。いくら無理だと分かっていても、やっぱり悲しかった。あって砕けろ精神で失敗する人の気持ちってこんなんなんだ。

 クラスの声はヒートアップしていく。

 

 「振られやがった。これじゃ本間にただの黒歴史じゃん」

 

 「お前にしてはよく頑張ったよ」

 

 なかには、慰めの言葉もあったが、そのあとの記憶がない。きずいた時には学校が終わり、教室で1人になっていた。

 

 「あの大丈夫ですか?」

 

 天使のような声が聞こえる。あれ俺は、知らないうちに天国まで行ってたのか……そうかショック死したのかな。

 

 「あの大丈夫ですか?」

 

 不意に現実に戻された。その視界には、竹浦美崎がうつっていた。


 「なななんでこんなところに?」

 

 「それはこっちのセリフですよ。私は忘れ物を取りに来ただけです」

  

 「そうですか、俺はきずいたらここにいました」

 

 「朝から告白して振られてましたもんね」

 

 心の傷が深まった気がした。この子、もしかしてプライバシーないのかしら。振られてたことをこうもハッキリというなんて。少し会話をしていると、もう1人誰か来た。その人物は___竹浦雫。竹浦美崎の双子の姉だ。この2人はいわば完璧双子である。容姿端麗で、スポーツ万能、勉強もいつもこの2人で全教科1位2位争いをしている実力の持ち主。


 「美崎遅いよ、あれ誰かまだいるじゃん」

 

 俺の存在に気づき、目が合う。するとじっと見つめ来て、口を開ける。

 

 「君、今日家に来て」

 

 突然のことだった。俺は、状況が理解できないまま呆然。もちろん妹の美崎も呆然。

 どちらも呆然としてる中、美崎が我に返る。

 

 「ちょっと急になに言ってるんですか」

 

 「いやーそうだなーそうそう慰めだよ慰め!」

 

 「何で私達が?」

 

 2人の会話が続く。


 「誰も慰めてくれる人いないじゃん、だからだよ」

 

 「でも……」


 しかし、急に会話が遮断され、雫は美崎と俺の手を掴み走り出した。

 再び気づいた時には、もう竹浦家の前だった。



 

 

 


 

 

 

 

  

 

 

 








 

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