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16 翔希の過去

今回は姉ちゃん視点です。

 翔希が倒れた。

 そんな悲報が届いたのは買い出しの時。

 ちょっと前に言い過ぎたと思い、今日は豪華なご飯にしようと意気込んでいた。

 

 病院に着くと、前に翔希と遊んでいた女の子に雫達が座っている。

 皆、顔を曇らせていた。

 

 「すいません。お姉さま……」

 

 「いえ、美崎は悪くないわ。悪いのは私」

 

 無理を言ってしまった。

 後悔だけがただ残る。

 

 「私からも謝らさせてください。私がずっとそばにいながらも何もできずに……本当にすいません」

 

 「もうやめて。私が急がしたからこうなっちゃたの……」

 

 雫のことで手がいっぱいだった。それは言い訳にすぎず、一番そばに居る家族をおろそかにしてしまった。

 大切なものは失って初めて気づくとはこのことだろう。

 

 「翔希は大丈夫なの?」

 

 「はい、命に別状はありませんでしたが、栄養失調だそうです」

 

 家族としてやってはいけないことをした。

 料理するのは私なのに……

 

 「あの、栄養失調も気になりますが、寺内君は絶望を味わった顔をしていました。関係ないかもしれませんが……」

 

 はっ!と思い出す。

 過去にもそんな顔をしていた。

 たしかお母さん達が亡くなった時、全てのことに絶望し何のために頑張るのか、そう言ってひきこもっていたことを。

 

 翔希はその時も栄養失調寸前で、なんとか私が無理矢理栄養を与えていた。

 多分また、なんで生きているのか分からなくなったのだろう……

 心がやられていくうちに……

 

 そして皆に話さなければいけないことがある。

 これは雫たちにはショックだろうが言わないと!

 

 「ここにいる皆さん。翔希のことを教えます。

 まず翔希は記憶喪失です。しっかりと言えば、お母さん達が亡くなる前の記憶がありません。

 他にも、あの子は自分で考える力が著しく低下しています。なぜなら、これもお母さんが亡くなったからです。

 亡くなった直後の翔希は、見たくもないぐらい弱っていました。

 何事にも無気力状態になり、こもっている日々を救うため私が説得し、生き方に指示をするように。それからはなんとか元気を取り戻していきましたが、ロボットみたいな人になってしまい、私のために生きるようになってしまった。

 けど最近はいろんな人たちと交流することで今までの生き方に疑問を持つようになった。

 だから自分がしたいことや生きる意味が再び分からなくなり、絶望しているのだと!」

 

 言い切った後の皆は深刻そうだった。

 それもそうだ。元々重かった雰囲気に重い話をぶち込んだから。

 

 「じゃあ……私が無理に生徒会に入れたからなの……」

 

 雫の言葉に否定ができない。

 なぜなら一度も翔希が生徒会に入りたいなんて聞いたことがないからだ。

 本当のことなんて私にはわからない。

 

 「雫、確かに生徒会には、ほぼ強制的にされさせましたがあの人は後悔なんてしてはいないと思います」

 

 「そうですよ!雫さん!寺内君は絶対入ったことに後悔はしてないですよ」

 

 美崎達のナイス励ましだった。

 

 「ねぇ美崎。翔希が昔のことを思い出していないのはショックじゃないの?」

 

 寺内家と竹浦家は昔から交流がある。

 そこで同い年だった翔希と美崎達は仲がとても良かった。

 生徒会について教えているときも、何度も翔希のことを聞かれたことか。

 それだけ仲が良かった人に忘れられるのは、だいぶショックのことだろうと思っていた。

 

 「ショックと言えばショックですが、もうどうにもなりません。また思い出させればいいだけだから」

 

 なんて強い女なの!

 私、惚れちゃいそう。

 美崎はいつもより輝いて見える。

 

 「そうと決まれば、まずは翔希の生きる意味を教えてあげないとね」

 

 「そうですね!頑張りましょう美崎さん!」

 

 「私だけじゃないですよ。ね!雫!」

 

 「そうだね。私もいつまでこんな状態でいるのもダメだし、翔希が私のために頑張ってくれていたんだから今度はお礼をしないとね」

 

 なんとあれだけ慰めても立ち直らなかった雫が美崎の一言で蘇った。

 全く不思議だ。

 

 それでも皆が翔希のことをここまで思ってくれるなんて思わなかった。

 今まで一人で抱えてきたのがバカみたい!

 

 「皆本当にありがとうね。それにそこの女の子。あなたをずっと翔希の邪魔者だと思っていたけど、違う見たいわね。ごめんなさい」

 

 「そんなこと思われてたんだ……それはそれで傷つくけど……」

 

 「それは本当にごめんなさい」

 

 「もう謝らなくていいですよお姉さん。それに私は桃と言います。これから一緒に頑張りましょう!」

 

 「そうだね!桃!」


 本当に最高の仲間だね!

 良い友達を持ったな愛しの弟よ!

 

 

 

 

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